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魔女と出会った日  作者: 鮫島 陸
Buddenbrooks ブッデンブローク家の人々
18/25

Buddenbrooks 3

私は遠慮させてください。ハクアの回答は、とても容易に想像できるものだった。男、ヨハン・マンはそうですかと声を漏らしたが、その表情には余裕というか、半ば予想通りだというような心情が表れていた。

「じゃあ私、ヴェーラと一緒にいるから」

「ああ。調子、治しといで」

ここはリューベック。彼女達の記憶にとって、非常に重要な場所だ。何か思い出せることがあるかもしれない。目を離すのは少し危険が伴うが、それはきっと、彼女らにとって大事なことだ。そう思い、私は彼女を送り出すことにした。

「集合はどうしようか」

懐中時計を取り出して確認する。現在時刻、四時を少し回ったところ。

「六時頃でいいんじゃないかしら」

「わかった。場所は」

「ホルステン門、なんてどうでしょう」

ヨハンがそう提案する。

「かなり目立ちますからね。そうしましょうか」

午後六時にホルステン門で。

「それじゃあ、失礼します」

そうして、ハクアは一足先にここを出た。

「では私も業務に戻ろうかな。とは言ったって、基本は椅子に座って、書類に判子を押すだけだけどね」

セオドル・カルティウス市長はそう言ってネクタイ代わりのスカーフを調節し、市庁舎へと足を進めた。

「ヨハン君に何かあったら、私に言ってくだされ。市庁舎の椅子に張り付いているでしょうから」

彼は思い出したように冗談を言って、それからやはり、市庁舎へと向かった。

沈黙して少し待ってみたが、もう思い出す事はないようだった。

「何と言うか、温かい職場ですね」

「普通は、立場逆なんですけどね」

私は、共に残ったヨハン・マンと笑い合った。

「行きましょうか」

「ええ。でもどこに」

彼は、何度か瞬きをした。

「…どこへ行きましょうか」

どうやら、なかなか能天気な人らしい。

「考えてなかったんですか」

「いえ、そんな訳ではないんですよ。そんな訳では」

どうだろう。自分の憶測は、疑問視されるべきものであるように思えてきた。本当にこのような人が、何か企むのだろうか。

「まあ、とりあえず出ましょうか」

どちらにせよ、三年前までこの街で行われていたことを知る必要はある。機密にあたりそうなものだから、難易度の高さは察せて余りあるが、やむをやまい。

ええと私は答えて、足を踏み出した。

ただ一つ、疑問がある。私が仮に三年前の真実を全て暴けたとして、私はそれをハクアとヴェーラに伝えるべきなのだろうか。その答えは、まだ出ない。

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