Очи чёрные 7
「よく選んだね。大丈夫?」
冗談めかして言うと、ハクアもそうした。
「だって、スバルが守ってくれるでしょ?」
「守るよ。もちろん」
でも、助けられるかはわからない。そうは言えなかった。
「うん。ありがと」
それからは少し、さっきのことを思い出にして語った。
黒い瞳の持ち主は、しばらくしてからやってきた。ごめんなさい、と彼女は部屋に入るなり言った。
「ごめんなさい。私、自分のことしか考えられなかった。本当はあなたのこと、もっと知りたいのに」
そう聞いて私達は、笑ってしまった。嬉しくなったのだ。
「ほら、やっぱり」
「当然じゃない。なんて言ったって、私の友達だもん」
「へ…な、なに?」
ハクアの友達が目を白黒させてる中、スバル達はプロイセン陸軍に倣った敬礼を見せる。
「ヴェーラ。我々は貴方の同行を承諾し、それを歓迎します」
そしてそれを崩して、ハクアは言った。
「ヴェーラ。一緒に行こ」
「もう何それホント損した!」
そう言ってジョッキを仰ぐ歌姫の姿は、残念ながら優雅とは形容しがたい。
「私あの後ずうっと悩んでたのに、なんかこんな、こんなあっさりしてぇ…」
思わずハクアと顔を見合わせる。お互い浮かんだのは苦笑だけだった。次いで丸机に置かれたジョッキに視線を落とした。そのジョッキはヴェーラの手に握られ持ち上げられ、机に叩きつけられる。
「こんなんじゃぁ足りないわ〜、ウォッカ持ってきなさいよウォッカ!」
「だーめ。何杯飲んだと思ってんの?」
「え〜?」
するとヴェーラは、机の上にあるジョッキの数を数え始める。
「えーとね〜三杯〜」
確かに、机の上のはそうだ。それは正しい。ただ、当然ながら、既に持って行かれたジョッキがさらに三杯分ある。
「残念ながらハズレ! なので追加はございません」
「えっ、やだやだお酒飲む〜」
クールな容貌に反して、ヴェーラは子供のように駄々をこねる。ちなみに今私達は広場で、すなわち公共の場所で食事中なのだが、今のヴェーラがそれを気に留めることはない。
「ねぇ、だめ〜?」
その問いは沈黙を生んだ。そしてその問いは、解答を与えた。
「…わかった。でもジョッキで一杯だけな?」
「わぁーいありがとぉー」
なんとも伸びた語調で喜びを噛み締めるヴェーラ。しかしスバルは、その幻想を打ち砕くべく、一手を打った。
ウェイターを呼び、チップの中に包んだメモを手渡す。
「ジョッキを。最後に一杯だけ」
平たく言えば、並々と水が注がれたジョッキが運ばれてきた。ヴェーラはそれに口をつけ、ごくごくと喉を鳴らした。
「くわぁーっ。やっぱこれよね、これ…」
やはり、人間には水が一番いいのだ。
程なくして、母なる水は、ヴェーラに深い眠りをもたらした。
「よし、戻ろうか」
「でもヴェーラ…」
「抱えるか」
そういった経緯から、スバルはヴェーラに、いわゆるお姫様抱っこを試みた。初めは様になっていた。ただ。
「その、さ」
「なに?」
「情けない話なんだけど…おぶるわ」
ヴェーラが重いとは決して言わない。しかし、意識の無い人間がこれ程までだとは、正直想定していなかった。
「そ、そうだね。その方が良いよ」
という訳でハクアにも手伝ってもらい、体勢を変えた。こんな悠長なことができたのは、昼間の連中の気配を感じなかったからだった。食事のために外に出てから、一度もである。理由をあれこれ考えてみたが、気づかされるのはただ一つ、情報量の少なさだけだった。残念ながら、ここで思考を巡らせても、答えは出てこない。諦めて、ヴェーラを背負う。
「ヴェーラ。行くよ」
「うん…兄さん」
彼女はおぼつかない口調でそう言った。ただ夢を見ているだけだろうと思った。
それでも、肺の中の空気が途端に冷たくなった気がした。
現行ドイツ法では
飲酒は16歳、その中でもアルコール度数の高いものは18歳からだそうです




