幕間ーエドマンド2
私の介入で、父の遺した邸宅に住み続けられることになったローラは、大変私に感謝した。
教会から出ると、ローラから私に申し入れがあった。
「私の邸宅に寄っていただけませんか。お礼として、心ばかりのお食事も差し上げたいですし」
私は、ローラの好意に甘えることにした。
本来から言ったら、あまりよくない事だった。
ローラは未婚の女性だ。
帝国の貴族界で、肉親や婚約者でない男性と未婚の女性が会うというのは、基本的に許されないことだ。
教会でさえ、その点に配慮して、貴族の未婚の女性の為に、隔離された特別の礼拝室を設けるくらいだ。
もし、ローラと私が一緒にいるのを誰かに見られたら、ローラは私の愛人と見られても仕方ない。
しかし、女性の好意に応えないのもよくない、私なりに自分に言い訳をして、私はローラと共に、ローラの邸宅に向かった。
若いローラの美貌に、私が好感を持ったのも一因だった。
おそらく、食事の前からローラなりに考えていたのだろう。
食事を済ませた後、すぐにローラは言った。
「エドマンド様、私を愛人にしていただけませんか」
「私は、そんなつもりはない」
私は、それとなく拒んだが、ローラは更に言った。
「将来のことを考えるとつらいんです。父も兄もいない私は、おそらく誰とも結婚できないでしょうし。かといって、宮中女官として勤めるのにも伝手がなくて」
「伯父や叔母、従兄弟とかを頼られては」
「父が下手に伯爵になったのが悪かったんです。父が生きていた間は良かったのですが、父が亡くなった後は、皆、疎遠になってしまいました」
よくある話だった。
貴族社会の嫉視は強い。
下手に出世したら、出世したで、周囲から袋叩きにされる。
ローラの身内は、皆、下級貴族とされる子爵や男爵ばかりだ。
娘を皇妃にしたい、等とローラの父は公言してしまったので、身内からは猛反感を買っていたのだ。
貴族社会で結婚するとなると、お互いに家がバックにあるのが当然だ。
ローラには、家のバックが無い以上、結婚なんて夢のまた夢だ。
かといって、兄を追って、15歳の身空で修道尼になるのは、ローラにとって気が進まないのだろう。
それならば、皇帝の甥の愛人になった方が遥かにマシという、ローラなりの打算もあるのかもしれない。
ローラは更に言った。
「ここで、エドマンド様と知り合えたのも、何かの縁だと思うのです。どうか、お願いします」
「分かったよ」
私は、ローラを抱きしめた。
ローラは涙を流しながら、私を抱き返した。
義妹フローレンスと違い、何てけなげなのだろう。
ローラに私は一遍に好感を抱いた。
ローラを愛人にしてから、私は時々、ローラの邸宅に泊まるようになった。
家に帰ると、フローレンスにしょっちゅう結婚を迫られるからだ。
ローラを愛人どころか、第二夫人にしたいと思うようになった。
私くらいの立場なら、別に家がバックに無かろうと気にすることは無い。
だが、正式になってはいないが、皇女イザベラという婚約者が、私には、いるのが問題だった。
幾ら何でも、イザベラと結婚する前に、ローラと結婚するわけには行かない。
そうはいっても、しばらくこのままでいればいい、と私は思っていた。
ローラ自身も言っていた。
「私は、エドマンド様の通いの愛人で良いですから」
ローラが私の愛人になってから、3月後、ローラは懐妊した。
私とローラは、慌てふためいた。
まさか、ローラが懐妊するなんて。
教会との約束で、ローラはこれまで住み慣れた邸宅から出ざるを得ない。
でも、どこにローラは、引っ越せばよいのだろう。
私が両親と同居している邸宅に、ローラが来る。
義妹フローレンスが、ローラを苛め抜くのが、目に見えている。
私は途方に暮れた。
次から本編に戻ります。




