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第1部ー2

 エドマンド義兄さまとのやり取りの後、私は、ヘレナ母さまに呼ばれた。


「本当に、いい加減にしなさい。フローレンス。エドマンドを困らせないの。婚約者のアーサー皇太子殿下の何が不満だというの」

(何もかもよ)

 母さまの叱責に対して、私は、口に出して、そう言いたくなった。

 確かに、今でさえ、私の歳まで考えた贈り物を折に触れてする等、アーサー皇太子殿下は、事実上の婚約者として、私を大事にしてくれている。

 だが、将来、結婚後に引き起こされる事態を想うと、私は虫酸がはしる思いがする。


 結婚後、1年ほどは皇太子妃として、アーサーに私は大事にされるが、子どもができないことを理由に、夫婦間に隙間風が吹くようになる。

 確かに、子どもができない皇后は問題かもしれないが、限度と言うものがある。

 そして、皇妃と言う名の公然たる愛人を4人も作り、他にも宮中女官とも関係を持つ始末。

 だが、それでも子どもが出来ないので、陰で私が、自分に子どもができないように呪詛しているのではないかと言いだすのだ。

 確かに、漫画の中の描写を思い起こすと、私の嫉妬も大概だったとは思う。

 しかし、皇太子妃から皇后に成れたのは、お前が最初の妻で、従妹だからだけだ、と公然と言われて、かちんとこない妻がいるだろうか。


 ともかく、半公然と離婚状態に私とアーサーはなってしまい、アーサーは子どもが欲しいと手当たり次第に宮中女官等に手を出して、女色に耽るようになる。

 私は私で、勝手にすれば、とアーサーを事実上、見捨ててしまう。

 そして、アーサーは体を壊して若死にしてしまうのだ。


 そんな結婚生活が待っているだけの男と結婚なんて、お断りだ。

 私は声を大にして言いたい。


「ともかく、もう少し身を慎みなさい。幾ら隠そうとしても限度があるのだから」

 ヘレナ母さまのお小言は続いていたが、私は聞き流した。

 はっきり言って、ヘレナ母さまが言っても説得力0だ。


 私の実父、ネヴィル父さまは、私が7歳の時に流行り病で亡くなった。

 ネヴィル父さまが病で倒れた後、ネヴィル父さまの弟でもある私の養父、ドミニクは兄の見舞いにかこつけて、ヘレナ母様を訪ねるようになった。

 ネヴィル父さまが亡くなった後は、ヘレナ義姉さまが寂しい思いをされているだろうし、いろいろと身内として面倒を見なければ、とドミニクは言って、ヘレナ母さまのところに入り浸るようになり、私が気が付いた時には、ヘレナ母さまは、ネヴィル父さまが亡くなって1月も経たない内に、ドミニクと男女の仲になっていた。


 さすがに、このことは帝国上流貴族界で大醜聞となった。

 夫が亡くなって1月も経たない内に、夫の弟の愛人となるとは何事、と周囲から叩かれ、私からすれば伯父、ネヴィル父さまやドミニクからすれば兄にあたるウォルター皇帝陛下が乗り出す事態になったのだ。

 最終的にウォルター皇帝陛下の取り成しで、ヘレナ母さまはドミニクの第二夫人として再婚するという形で収まったが、その後、エドマンドの実母でドミニクの第一夫人、リンダが亡くなってすぐに、ドミニクがヘレナ母さまを第一夫人にしたことは、醜聞をまたも広めることになった。

 おかげで、ドミニクは皇帝の弟として公爵に叙爵はされているものの、宰相を辞職する羽目になった。


 もっとも、これはこれでいいのかもね。

 と私は冷めた想いで、ヘレナ母さまを眺めた。

 宰相を辞めた後のドミニクは、ヘレナ母さまと大抵一緒にいる仲睦まじい夫婦だ。

 皇族として考えるならば、政治的野心が無く家庭生活に勤しんでいる皇族というのは、皇帝にとって理想の皇族だろう。


「全く今夜もエドマンドは外泊すると言ってきたわ。困ったものね」

 ヘレナ母さまは私にこぼした。

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