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第1部ー1

 また、夢で見てしまった。


「義母上」

 義兄エドマンドが、(表面上は)私に対して微笑みながら、頭を下げて言う。

 私も、(表面上は)微笑みながら、エドマンドとその横にいるイザベラに対して言葉を返す。

「本当に仲の良い夫婦。この幸せがいつまでも続くといいわね」

 だが、内心はお互いに違う。

 お互いに、本当は私とエドマンドが寄り添えていればよかったのに、と後悔しているのだ。

 どうして、早く内心のこの想いに気づかなかったのか、そして、行動しなかったのか、と思っている。


 そう、前世でコミックで読んで以来、ええ、どうして行動しなかったの、確かに味わい深い結末かもしれないけど、と私は思ってきた。

 だから、この世界では、私は強引とは思ったが、行動することにしたのだ。


 また、始まった。

 私は、しょっちゅう義兄のエドマンドと、実姉のフローレンスが起こしている痴話(?)喧嘩に呆れかえる思いを、9歳ながらしていた。

 何で、あんなに一生懸命、エドマンド義兄さまに婚約破棄させようと、フローレンス姉さまは必死になっているのだろうか。


「お義兄さま。お願いですから、イザベラ様と婚約破棄してください」

「何で、そんなに一生懸命になっているのだい?」

「イザベラ様と結婚されることが、お義兄さまの幸せになるとは思えないからです」

「確かに正式には婚約を交わしていないとはいえ、事実上、婚約を交わしていて、今更、婚約破棄は出来ないよ。皇帝陛下のお言葉まで賜っているのだよ」

「だからといって、お義兄さまが不幸になるのを見過ごせません。私も婚約破棄しますから、私と結婚してください」

「ませたことを言わないでおくれ」


 義兄と姉は、こんな口げんかを最近は、しょっちゅう交わしている。

 最近、義兄は家に帰るのを避けるようになったような気がする。

 家に帰ったら、フローレンス姉さまに、婚約破棄を迫られるからだ。

 全く、夫婦喧嘩は犬も食わないと言うが、兄妹喧嘩も同様だ。

 私は一歩、どころか数歩引いた態度を、義兄と姉の喧嘩について取っていた。


 どうしてもうまく行かない。

 私の何がいけないのだろう。

 私の血筋は決して悪くない、義兄の正妻、第1夫人になるのにふさわしい皇子の長女なのだ。

 私の父は、私たち姉妹を遺して早死にしてしまった。

 そして、伯父の現皇帝は、自分の息子の皇太子の婚約者に、私をしようと勝手に決めてしまった。

 だが、この婚約が将来の不幸を招くのだ。


 私と皇太子は結婚し、私からすれば伯父、夫からすれば父の現皇帝が崩御したことから、私は皇后に冊立されるが、子宝に恵まれない。

 夫は、跡取りを希望して、4人も皇妃を娶るが、それでも子どもができない。

 そして、女色に耽って、夫はやつれ果ててしまい、私は子どもが出来ないことも相まって苦悩する。


 義兄エドマンドは、婚約者のイザベラと予定通りに結婚するが、妻の頭の弱さに困り果て、温かい家庭生活など営めない。


 そして、夫は急死して、遺言で次期皇帝に、義兄エドマンドを指名する。

 かくして、義兄エドマンドは皇帝に即位し、私は皇太后として(名義上)エドマンドの義母になる。

 そして、漫画の結末で、お互いの本当の内心に気が付くのだ。


 かつて、お互いに兄妹では無く、恋人として相手を見ていたことに。

 だが、今更、全ては取り返しのつかない事だった。

 私は義母として、かつての義兄は義子として、今後は疑似家族として暮らしていかねばならない。

 昔に帰れるのなら、昔に帰って結婚したい。

 お互いに決して口に出せない想いをしながら、挨拶を交わす。


 名シーンの結末なのかもしれないが、当時の若かった私には何とも納得のいかない結末だった。

 世間体等、無視して突っ走ればよかったのだ。

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