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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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望みは遠く

 咲希様は本当に勝手なお方です。

 どうして私が咲希様に降伏までしたのか、理解して下さらないのですか? 私はただ、信じて欲しかっただけなのですよ。

 私ならば、咲希様をお守り出来たかもしれない。

 それなのになぜ、高橋雄大でしたか? そんな男のところへ行ってしまわれたのでしょう。


 しかし、海人には悪いことをしてしまいました。

 私としたことが、あそこまで取り戻してしまうなんて思いませんでした。八つ当たりなんかして、嫌われてしまわなければ良いのですが……。

 当分日良のところには行かない、ですか。どうして、どうしてなのでしょう。


 小森林太様の率いる軍は、私の持つ軍よりも強い。私だって仲間を誇ってはいますが、彼に仕える川上楓雅殿にはとても敵わないでしょう。

 実際に彼の戦ぶりを見た訳ではありませんが、伝説とさえ言われているお方です。

 ならば私は、それを相手にどうすれば良いのですか?

 咲希様が奪われてしまったことを、ただ悔しがっているしか道はないのでしょうか。

 この国には、私を信頼してくれる人が沢山います。その人たちを巻き込んで、勝ち目のない戦を挑むことなど出来ないでしょう。

 もっと権力ちからがあったなら、咲希様を助けられるかもしれませんのに。

 もっと権力がなかったなら、咲希様を助けに行けるかもしれませんのに。


 海人が行った時点では、確かに咲希様は雄大様のところにいたようです。そうでなければ、私だってあんなに悲しみませんでしたもの。

 それでしたら、そんな短い間に雄大様は咲希様の居場所をばらし、そのまま攫わせてしまったということでしょうか。

 まさか、彼は咲希様を売ったのでは?

 林太様に脅されたなら、平気でそのような行動を取りそうなお方です。

 許せません。そんな男よりも咲希様に信頼されなかった、何よりもそんな私が許せません。

 咲希様は私のどこが信用ならないのでしょうか。悲しくなるばかりです。


 そういえば、和輝様はどうなさったのでしょう。

 彼も一緒に攫われてしまったのでしょうか。

 梓は咲希様が攫われたという情報しか聞かせてくれませんでしたが、一緒に和輝様も、林太様に攫われてしまっているのかもしれませんね。

 では、深雪様はどうなるのですか?

 彼女がいるのに咲希様が攫われる、と言うのも変な話ですね。何せあの優秀な忍者なのですから。

 計略に嵌りどこか別のところへと分離されてしまっていたのでしょうか。

 それとも、深雪様がいるところで咲希様を? 深雪様も一緒に攫ったとか……。

 いいや、彼女に限ってそんなことはありませんよね。

 いかに深雪様が優秀であるかは、私だってこの目で十分見せて貰いましたもの。


 謎があまりに多過ぎます。

 でもこの謎が全て解明されるのを待っていては、きっともう手遅れなのでしょう。

 そうしてまた私は、咲希様からの信頼を失ってしまうのですね。

 どうすれば、咲希様に信じて貰えるのでしょう。どうすれば、咲希様に戻って来て貰えるのでしょう。

 このまま林太様のところへいるのと、私のところに連れて来るのと。咲希様はどちらを望むのでしょう。

 私は何もかも不安に思えて、布団に包まり一人で頭を抱えた。

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