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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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現状


 咲希が帰ってから、四日が過ぎていた。

 当初の目的はもう果たせているはずなのに、だから全て終わっていても良いはずなのに、今度は別の問題が立ちはだかっている。咲希を連れ戻すために向かわせた野乃花と海人から、連絡の一つだってないのだ。

 日良は悩んだ。どのように助け出すものかと、考え込んだ。二人を信じて待つこと、あるいは深雪が助け出してくれるだろうことを望むこと。彼にはどんな力もなかったから、悩み考え込んで、凹んでいるばかりだった。

 小競り合いは収まらないにしても、大きな戦争は起こっていなかった。戦況が変化しつつあって、休戦中の国どころか、同盟国までが争いを始めてしまいそうな不穏な空気を感じている。小さな国から眺める世界は、大国の些細な動きでまで大きく揺れ動いて、願いながらただ待っていた。


 玲奈の軍を借りて、小細工を繰り返して不戦の領主は声を上げる。自分には何も関係のないことだったはずなのに、恩義と忠義で初めてその実力を魅せる。

 今目指している場所に主はもういないのだと知り、本来の目的はもう果たされているのだということを知った。知った後ではあるけれども、もう動き出しており止まれないのだということもあり、和輝を救うために動くのだと理由を変えた。和輝一人に対しての動き方ではないようだったけれど、不思議と認識を変えた後でも大して一葉の中では変わらなかった。

 咲希には恩がある。咲希の役に立ちたい。その一心で雄大も一葉も動くのだった。見ている世界も目指している場所も、二人は全く違っていたけれど、軍を率いる瞬間だけは同じ景色を見ていた。


 一連の事件を引き起こしたのは、林太の嫉妬心と興味が生んだたった一言だった。彼は咲希、和輝、深雪の三人が、欲しいと思った。欲しいと思ったから欲しいと言い、それに従って楓雅が実行をした。

 結局、深い意味があったわけではないから何が徹底されていたでもなく、深雪はすぐに逃げ出した。数日はそこにいたけれど、咲希も簡単に逃がされてしまった。和輝に対しても普通の客にするような対応で、捕らえているというような様子ではなかった。

 逃げられたとしても、残念だったと笑える程度だったのだろう。それどころか、逃がしてくれと頼んだならば、逃がす程度のものだったのだろう。それでもそうは思われず、どんどん大事へとなっていく。

 強者のつもりだった林太は、何も変わらないと考えたし、何も変えられることはないと思っていた。だから遊び気分で他国の姫を誘拐するようなことをしたし、平然とその逃亡も許したのだ。さすがに戦争は避けたいのか、何者かを殺すというような多大な危害を加えるようなことはしない。


 戦争を望んだ人がいるわけではないのだ。それなのに、歯車は尚も動いていく。勝手に、意図しない方向へと動いて行ってしまう。最初に回した人もどうなるかは知らないで、止める手段も持っていないで、そうして回り回って行ってしまう。

 川上家という、まだ見ぬ大国までを巻き込んでいく。


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