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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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更なる考え

 動くことを決めたからには、徹底的にやりきるつもりらしい。争いを避ける雄大の頑なさが、また別の目的へと向いたというようだった。

「川上楓雅様、警戒すべきは間違えなく彼ですね? 彼は川上家の人間に好かれておらず、それを見た小森林太様が拾っていかれたというように聞いております。その話が事実かどうかはわかりませんが、川上家の人間が別の国の人間の下に就いていることは異常です。あまり関係がよろしくないというのは、信用に値する情報だとは考えられませんか?」

 協力をしてくれることが決まっただけで十分なことで、ここまで雄大が意見をして来るだとは一葉には考えも及ばないことであった。雄大の政策や言動を知る他の人々と同じように、彼女は雄大が臆病な人間なのだと勘違いをしていたのだ。

 そんな彼女の理解が追い付くことを待つようなことはせず、更に雄大は話を進めて行った。欲望が渦巻き戦乱に包まれた世界で、不戦と自国民の安全保障という、小心者のようで立派なことをやり遂げる度量のある人であるという隠れた事実を、今ここで見せつけるようだった。

「ですから、本物を連れてくるということも、方法を工夫すれば出来ると思うのですよ」

「え、えっと、つまりはどういうことですか。あの、えっと、え?」

 一葉に構わず雄大が話を進めて行ってしまいそうになるので、未だに理解が出来ていなかった一葉は、やむなくその場で止めた。プライドを抱えた一葉ではあるが、彼女が持っているプライドというのは、わからないことをそうと言えないほどに無駄で恥ずべきプライドではなかった。

「川上軍がどのように動くかはわかりません。さすがに思い通りに動かせるものとは考えられませんから、彼らには少し名前を借りたいのです。恐らく小森家に私怨を持っているでしょうし、あの軍は大軍ですから影が見えるだけでも怯えるものだと思うのです。いっそのこと、思った以上に動いてくれなくとも、旗さえ借りれたらそれで構いませんでしょう。ここまでは納得して頂けましたか?」

 川上家は、大きな領地を持っている有利を生かし、小国を降伏させては少しずつ更にその領地を広げてきた。今となっては正面から戦ってこれに勝利するものはなく、抗う国を小さい方から潰していき、戦争に時間を掛けないことで少ない食糧や物資で国を広げてきた。

 その川上の軍を動かせたら動かそうと、動かせなければ旗を立てて欺こうと、雄大は考えているらしかった。基本的には小国や、容易に潰せるだろうと国内で判断された国から、自然災害と呼べるほどにまで消されていく。しかし例外があって、急に標的にされることもまたあったので、川上の旗をどこの国の人々も恐れた。

 いくら林太ほどの男でも、その例外ではないだろうと雄大は考えたのであった。そして楓雅を取れ行きずっと傍に置いておくような人間ならば、まして林太のこれまでの行動を考えてみても、降伏をするようなことはありえない。対策を取らないということもありえない。そう考えたのであった。

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