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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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予想外の旗印

 雄大の城に到着した咲希は、驚愕で言葉を失った。それは、知っている姿は、全く異なるものであった。気が動転しそうになるのを彼女は必死に抑えて、堪えて堪えて、けれど落ち着いてその情景を分析することは今の彼女には出来なかった。

 感情的のようでありながら、いざというときには冷酷とまで言われるほどの冷静さで采配を揮う咲希。笑顔のないときの、冷静な彼女のままで、こうもまで動揺をすることは滅多にない。また、恐れられるほど温厚で、感情的になる姿が見られない日良までも、思わず考えなしな行動を起こしてしまいそうなほどの姿であった。

 小森の旗が掲げられていたのだ。

 目的は咲希を攫い、屈辱的な言葉を引き出し雪辱を遂げる、ただそれだけのことではなかったのだ。それだけの為に誘拐をしただなんて、そんなはずがなかったのだ。彼女がいなくなって、残された雄大が、林太の脅しに立ち向かおうか?

 雄大の性格を知っていた彼女は、この僅かな期間で城一つ落とすことも楓雅であれば可能だろうが、そもそも戦いに発展することはなかったのだろうと考えた。これまで、何度も雄大は、攻め込まれそうになる度に、降伏しことなる君主に仕えることを繰り返してきた。

 その降伏という行為を、彼は裏切りとも思っていない様子だった。彼が刃を向けることは絶対と言って良いほどにないのだから、また別の国が雄大の城を狙うまでの期間だけでも、そう、期間限定の食糧庫のつもりで各国は雄大を攻めた。

 簡単に降伏して、簡単に君主を替えてしまうことは、これまでだってそうだったのだから驚くことではない。けれど今、林太に占領されたということは、ここにいた一葉の身が危ないということに直結する。守ると言いながら、守れなかったのは咲希だけれど、あと少し待っていてくれたらと憎んだ。

「見つかる前に戻りますか?」

 剣を抜いて、城に突入しようとも日良はしたが、持ち前の自制心で彼は微笑む。不安でならない咲希の心を察し、放つ言葉はあまりに優しかった。

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