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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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地下の声


 全て壊してしまおうか。

 そうとすら思っていたけれど、どうやら咲希様は早くも助けられたようだ。

 とりあえず無事ではあるようだから許すとしよう。


 それなら私の仕えている国も心配いらなくなったようだ。

 ……とも、いっていないのかな。

 いつも咲希様の傍にいる人たちが、咲希様を守っている人たちが、咲希様のために奔走しているらしかった。

 咲希様がもう救い出されたのだということを、知らないらしい。


 せめて伝えるだけ伝えに行こうか。

 それくらいは、咲希様に仕える身として、私もしなければならないことだろう。

 救い出すところに何も貢献出来ず、この力を発揮するところはなかったのだから、せめて、それくらいはしたいと思うもの。

 早く探し出そう。


 まずは詳しい咲希様の状況を知ることが先決だ。

 しかし念には念をとしているうちに、咲希様は既に救い出されており、役に立つところはなくなってしまった。

 遅れてしまっては、何が起こるか知れたものでもない世界なのだ。

 手遅れになってしまってはどうにもならない。


 確実ではない情報を伝えてしまって、それが誤情報であったとき、それが結果として悲劇を生んでしまったとき、私に責任を取れるだろうか。

 咲希様に迷惑となるようなことは、間違ってもしたくない。

 あまり時間を掛けると役に立てないけれど、あまりに手を抜いてでも時間を削減すれば、場を混乱へと運ぶことになる。

 何を私は選ぶものか。


 どこまでが知られていることであるのか定かでない。

 どこへ向かうべきであるのかさえ。

 呼び出しの音が鳴りでもすれば、そこへと駆け付けて、すぐに私は動き出すことが出来るのだけれど。

 私のことは忘れてしまっているのか、困っている状況であろうに、呼び出す声はどこからも掛からない。

 少し寂しいところのある事実である。


 咲希様のご命令がなければ、自らの判断で、するべきことを決めることが私には難しい。

 所詮は発明家であり科学者でしかないのだから、政治やら軍略やらについては丸っきり初心者で、指示があれば努力はするが、なければ行動が出来なかった。

 優柔不断な性格も災いして、やはり指示待ち妖怪へとなり果てる他ない。


 その愛らしい声でご命令を下されば、すぐにでも、彼女の無理難題をクリアして、喜びを彼女へと与えるために戦うというものであるのに。

 目的もなく、何をどう努力しろというのだ。

 今も咲希様の中には完璧な計略が浮かんでいて、遂行されていて、手助けのつもりでの私の行いが邪魔へと変わってしまうかもしれない。

 咲希様。私にも役割をお与えください、咲希様。


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