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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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想う姫へと

「咲希のことは嫌いだけど、今回のことは気に入らないわ。あの豚、本気で気に入らないわね。だからしょうがなく、不本意で堪らないんだけど、協力してあげなくもないわ」

 嫌だと言うわりに、玲奈の瞳は楽しそうに輝いていた。悪気というのは全くない人なのだし、それをわかっていて、仕えている人々は彼女のことを愛していた。皆が彼女を好いていた。だからこそ、平和に退屈をし、戦争を求めて楽しもうとするような彼女でも着いて行くのであった。

 そういうわけで、彼女は楽しそうにしていたのだ。多くの人が傷付くことであるし、慎重にことを運ぶべきことであるのに、楽しそうだからだなんて理由で彼女はこの作戦に同意しているところもあった。

 自分への嫌がらせのための行動でなかったことが知れたなら、彼女はもうそのことに興味はなかった。不機嫌になる必要もないのだから、自分とは関係のないこと、即ち協力する必要もないこと。なのだけれど、彼女は協力をするのだ。

 それは楽しそうだから。それは面白そうだから。笑顔であることに、多少は眉を顰めたものの、玲奈の力が多大であることは確かであるのだから、どうにか抑えて一葉は微笑む。

「ありがとうございます。玲奈殿のお力を頂ければ、あの林太殿に抵抗することも可能でしょう。……雄大殿、玲奈殿の性格はご存知でしょう? 良い気にさせておいて、気分を変えさせてしまうようなことは、言わないで下さいね」

「了解です。それくらいはわかっておりますよ。失敗させたくはありませんから、絶対に助けたいと思いますから、ですから、足を引っ張るようなことは致しません。助けて下さった、感謝はしているのです」

 念を押すように小声で囁く一葉に、瞳に強い意志を宿して、雄大は力強く答える。もちろん、玲奈には聞こえないように、玲奈には悟られないようにだ。

「ありがとうございます。雄大殿にも、本当に感謝していますよ」

 どこまでも只管に臆病だった雄大が、そうして動いてくれる嬉しさに、一葉は頬を綻ばせていた。我が儘で咲希のことを毛嫌いする玲奈が、動いてくれるということにもだ。

 作られた微笑みも消して、心から零れた微笑みも消えて、一葉の表情に残っていたのは、咲希を想う姿のみであった。彼女にとって咲希は家族であり主人であり友人であり、とにかく全てだった。全てだった。

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