守るから
「咲希様、良かった、ご無事だったのですねっ」
距離の問題もあって、咲希は日良の城に寄っていた。
報告を受けた日良は喜びから、城門まで迎えに走る。
そして瞳に涙まで溜めて、招き入れ自ら咲希を案内したのであった。
それも連れて行ったのは、あろうことか、日良の自分の部屋なのである。
君主として対応するつもりも、相手を客人とするつもりもない。そういうことかといわれれば、そうではない。
動揺があまりに大きかった、ということだろう。
「私ね、咲希様がいなくなって、すごく、寂しかったのです。見苦しい姿を、お見せして、……ごめんなさい。咲希様のご無事がわかって、安心したのですが、他の方々はどうしたのでしょう……?」
目元を細い指で拭って、不安そうにして日良は尋ねる。
その様子に戸惑いながらも、咲希は問いに答える。
「深雪は少なくとも無事だった。逃がしてくれた後に、また豚の城に忍び込んで行ったから、今どうなっているかは……。だが、深雪なら大丈夫だと思う。私が従うことにより、和輝の無事が約束されたらしいから、そちらの方が心配かな。それ以外については、私にもさっぱり」
「直接、私は見に行くことも許されませんが、信じることこそ私のするべきことなのでしょう。けれどここにいる咲希様のことは、私が守ってみせますから、だからせめて迎えがくるまでは大人しくここにいて下さい」
心配に震えている、悲しそうな声で、日良は咲希に願った。
「あぁ、今回ので、なんか……さ。ちょっと懲りたよ。日良のところは安心するから、ことが収集するまでは本当に、頼むな」
素直に咲希が頼ってくれて、日良の心は喜びに満たされた。
困ったようで幸せそうで悲しそうで嬉しそうな、複雑な表情を浮かべて、日良はほっと大きく一息を吐いた。
囚われていた自己嫌悪から抜け出すように。




