表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
42/85

守るから

「咲希様、良かった、ご無事だったのですねっ」

 距離の問題もあって、咲希は日良の城に寄っていた。

 報告を受けた日良は喜びから、城門まで迎えに走る。

 そして瞳に涙まで溜めて、招き入れ自ら咲希を案内したのであった。

 それも連れて行ったのは、あろうことか、日良の自分の部屋なのである。

 君主として対応するつもりも、相手を客人とするつもりもない。そういうことかといわれれば、そうではない。

 動揺があまりに大きかった、ということだろう。

「私ね、咲希様がいなくなって、すごく、寂しかったのです。見苦しい姿を、お見せして、……ごめんなさい。咲希様のご無事がわかって、安心したのですが、他の方々はどうしたのでしょう……?」

 目元を細い指で拭って、不安そうにして日良は尋ねる。

 その様子に戸惑いながらも、咲希は問いに答える。

「深雪は少なくとも無事だった。逃がしてくれた後に、また豚の城に忍び込んで行ったから、今どうなっているかは……。だが、深雪なら大丈夫だと思う。私が従うことにより、和輝の無事が約束されたらしいから、そちらの方が心配かな。それ以外については、私にもさっぱり」

「直接、私は見に行くことも許されませんが、信じることこそ私のするべきことなのでしょう。けれどここにいる咲希様のことは、私が守ってみせますから、だからせめて迎えがくるまでは大人しくここにいて下さい」

 心配に震えている、悲しそうな声で、日良は咲希に願った。

「あぁ、今回ので、なんか……さ。ちょっと懲りたよ。日良のところは安心するから、ことが収集するまでは本当に、頼むな」

 素直に咲希が頼ってくれて、日良の心は喜びに満たされた。

 困ったようで幸せそうで悲しそうで嬉しそうな、複雑な表情を浮かべて、日良はほっと大きく一息を吐いた。

 囚われていた自己嫌悪から抜け出すように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ