表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
40/85

焦り

 普段の様子からしたら、忘れがちではあるけれど、深雪は忍びである。それも、超がつくほどに、優秀な忍びだ。少しの手掛かりもない状態から、咲希を救出したように、城に忍び込んでそこから一人二人連れ出すくらいは、彼女に掛かれば余裕なのである。

 そのはずなのに、そんな彼女が、困っていた。どこを探しても、和輝が見つからないのだ。

 城内にいるのだという情報を、なんとか得はしたものの、それ以上の情報を全く得られなかった。深雪ともなれば、どのようなことも容易くやってのけるので、何も掴めないというのは初めての経験である。焦りというものも、生まれ始めていた。

 何においても、楓雅は人並み外れた才能を発揮する。まさに天才というべき人物であったが、忍術においてだけを言えば、エキスパートである深雪の方が明らかに上である。比べるまでもなく、実力に大きな差があるのだ。

 しかしどこを探しても、和輝に関する情報を得られないし、彼の居場所などわからない。何が起こっているのかと、深雪は首を傾げる。かっこつけたからには、和輝を連れて出なければ帰れないし、何より和輝を置いてなど行けない。

 失態を見せた悔しさもあってか、深雪には火が点いてしまっていて、完全に本気になっているのであった。それでも変わらない状況に、彼女の中の焦りは、本人の知らないうちにどんどん大きくなっていく。

 忍者って悪戯し放題じゃん! そんなふざけた理由で、忍者ごっこをしていたことが、彼女が忍者になったきっかけである。その後も楽しんでいるという様子が目立ち、プレッシャーなど少しも感じないようではあったけれど、そんなわけがなかったのだ。

 天才と称される度に、難しい任務に成功する度に、彼女は秘かに追い込まれて行っていた。今までに蓄積されていた、期待に応えなくちゃいけないという感覚が、自分は天才でいなければならないという圧力が、重荷となって、焦る彼女に圧し掛かる。どのようなことも軽々達してしまうので、彼女が壁に当たることを、待ち積み重なり続けていたようであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ