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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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お前が欲しい

 林太からの許可が下りたとのことであり、野乃花たちは城内へ招き入れられる。海人と、その護衛として、代表の野乃花だけが、林太との面会も許された。

「案外、簡単に会えちゃうものだね」

 楓雅に案内されて、林太の前にまで連れて行かれた海人。いつものようにへらへらとした笑顔を浮かべて、緊張感もなく、そのようなことを言っている。和輝を探して異世界まで来るような人だから、苦労を知らない訳ではないのだろうが、それ以上にポジティブな性格をしているのだろう。

 全てを楽観しているようで、全てを悲観しているようで。無理な希望を抱いていないから、理想を現実にする実力を持っているから、堂々とした態度で笑っていられるのだろうか。

「こんにちは。僕の名前は海人、和輝君を返して貰えないかな」

 門番に言うのと変わらない言い方で、変わらない笑顔で海人は頼む。その様子に林太は少し驚きを見せるけれど、気を悪くするようなことはなかったらしい。反対に興味深いと言った感じに海人を見、傍に来るようにと手招いた。

「僕に欲情したんならごめんね。残念ながら、僕が愛せるのは和輝君だけだから」

 平然とおかしなことを口走り、海人はのんびりと歩いていく。その浮かべる表情は、ただ笑っているだけというわけでもなく、自信と余裕を滲ませている縁もあるようであった。相手の怒りを買っても、上手く擦り抜けることが出来ると、海人は確信していたのだろう。

 初対面であるのだから、林太の性格をそう詳しく知るはずもない。しかしそれだけのことで、会話をするのに臆してしまうほどに、海人は慎重な性格をしていない。それこそが、海人が海人たるところでもあり、この短期間で信用と信頼を築いた彼という人物でもある。

「心配しなくとも、小太りの男などに興味はない」

「ちょっ、小太りって何さ。僕が小太りなら、そっちは大太りだね!」

 怒った様子もあるけれど、何を言うにも表情を変えない。ころころと笑ったり怒ったり、表情が変わっているのだが、どこか浮かべる笑顔を揺るがせない海人が、林太は面白くて堪らないようだった。

 その様に、楓雅と同じところを感じたのだろうか……?

「愛してくれなくても、そんなことはどうだって良い。欲情なんて間違ってもしない。だが、お前が欲しいとは思う。才能を感じる、我が軍に取り入れたい。和輝とやらと一緒にいたいだけならば、二人で我が軍にいれば良い。不自由はさせない」

 後ろで見ていた野乃花は、林太の言葉に戸惑いを隠せないようだけれど、当の海人は笑顔を浮かべたままであった。丁度、林太の隣にいる楓雅と、同じようなごく自然な笑顔を。

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