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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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想いを馳せて

 好感度を上げたいだとか、そういった下心ばかりでなくて、私は素直な気持ちで咲希様を救いたいと思っているのです。

 ここで活躍することにより、咲希様の信頼を得たいという気持ちだってあります。

 けれども私は、咲希様が無事ならば、それだけで良いのです……。


 いくら小国とは言えども、一国を治める立場にある私が、軽率な行動を取る訳にはいきません。

 こういうときには、その生まれを呪いたくなりますよ。

 私の国の下で、私を信じて生きて下さっている方々の為にも、私情で動くことなど出来ません。

 いっそのこと、全てを捨てて咲希様だけの為に翔けたなら、彼女も私の本気を信じて下さるのでしょうかね。


 日良様と笑い掛けてくれる、大切な人たちの犠牲の上に――。


 出来ませんよ、そんなこと。

 今だって私の我が儘の為に、海人も野乃花も、危険な敵地にまで行っているのです。

 それを裏切るだなんて無理に決まっています。

 彼らの努力も想いも、全てを否定することになってしまいますから。


 咲希様の中に私はどれほどいるのでしょうか?

 自分では何もせずに、大人しく城でお留守番をしている、こんな私をどのように思っておられるのでしょうか?


 不安と恐怖とで、涙が零れてしまいそうになります。

 笑顔でありたいのに、悲しいものですね。

 こんなとき、隣に野乃花がいたなら、きっと彼女は私を励ましてくれることでしょうね。海人がいたなら、私を笑わせてくれようとするのでしょうね。

 二人は無事なのでしょうか……?

 咲希様を助けに行って、二人までが危ない目に遭っているとしたら、私は、私はどうするのでしょう。


 でも、仲間を救う為ならば、私も堂々と動くことが出来ますね。

 野乃花はよく人々を労わりましたし、海人は街に出ることが多く、かなり仲良くなっていたように思います。

 その二人を助けるという名目ならば、協力を得られるのではないでしょうか。


 こんな考えは最低だって、理解はしていますよ。

 二人が無事に帰ることが何よりも大切ですし、それに咲希様も救い出せたなら、より良いことだと思います。


 何もしていない私が、手柄ばかりを求めてもいけませんしね。

 野乃花と深雪様が、海人と和輝様が仲良しだからって、主同士も仲良くなれるとか、そんな考えを持つ私だから、天がお怒りになったのかもしれません。

 私が全てを失ってしまうように、ね。

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