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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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能天気組

 どうしたら、咲希と和輝を連れて、日良のところへ戻れるか。どうしたら全員が無事に帰って、日良を安心させることが出来るか。海人は考えるけれど、そう簡単に、その手段が思い浮かぶはずなどなかった。

「林太様だっけ? その人に会わせて貰えないかな。ちょっと話をしたいんだ」

 瞬間移動のような方法で、この部屋へ連れて来られている海人だ。楓雅の実力を、身をもって思い知らされたわけだから、そこから逃げ出そうなどと言うことは不可能だと考えた。そして逃げることが出来ないのなら、解放して貰えるよう、交渉をしてみようと考えたのであった。

 帰らせて下さい。わかりました、どうぞ。だなんて簡単に帰らせてくれるくらいならば、攫って来たりなどしない。それくらいのことは、当然海人だってわかっているけれど、なぜだか自信を持った様子で海人は言うのであった。

「話をしたい、ですか……。林太様に確認をして参りますから、ここでお待ちになって下さい。すぐに戻りますので、大人しくしていて下さいね?」

 自分がいなくなった隙に、二人が逃げ出さないよう念を押して大人しく待っていろと言った後、楓雅は林太の元へ向かった。林太様と話などさせられるかと、斬り捨ててしまっても良いくらいの無礼だが、林太の指示がなければ、楓雅が自らそういったことを働くことはない。何においても、彼の命令に従うだけ、それこそが楓雅の全てなのだ。

 一方の海人は、相変わらずの能天気さ。見張りがいなくなったからと言って、逃げ出そうという気は、少しもないらしかった。念を押して言われなどしなくても、大人しく結果を待っていたことだろう。

「あのさ、林太様って人がどんな人だか、和輝君は知っているかな? 何か知っていることがあるなら、僕に教えて貰いたいんだけど」

 緊張感のない笑顔を浮かべながら、海人は和輝に訊ねる。少しでも相手の情報を収集出来たならと、そう思ったのであった。対して和輝は、林太と思われる人物を思い浮かべ、不快気な顔をする。

「怖い人だよ。海人より太っていて、すごく、意地悪な人……」

 嫌悪感からか、恐怖からか、ぶるっと和輝は体を震わせる。呟くように、海人の問いに答える。その表情の暗さから、海人はなんとなく相手の人物像が想像出来たし、和輝が嫌がるようじゃ相当な人物だと思う。だからこそか、明るい笑顔で、ふざけたようなことを言う。頬を膨らませて、冗談を言って怒ってみせる。

「その言い方、和輝君ったらひどいっ! 僕がデブの基準であるみたいに言わないでよ。痩せているとは思わないけれど、僕、ちょっと傷付いたなぁ」

「え、ごめん、傷付けるつもりはなかったんだ。だけどね海人、太っているというのは特徴であって、必ずしも痩せている方が美しいとも限らない。海人はそんなところも含めて可愛いんだから、傷付いたりする必要はないと思うよ」

 海人がいつも通りでいるものだから、和輝もいつも通りな感じを取り戻し、少し変態で、優しい口調で口説き出す。結局、楓雅が面会の許可を取って戻るまでの間、二人はただいちゃいちゃしていたのであった。

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