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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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好意と敵意

 目の前で和輝が苦しめられる姿を見たから、咲希は自分も拷問にでも掛けられるのだろうと思った。心身ともに、今までに感じたことのないような苦しみを与えられるのだろう。咲希はそう考え、それだけの覚悟を持って、和輝を助けてくれるようにと頭を下げた。

 どんな目に遭わされても、林太に屈して思い通りになることだけはご免だった。攫われたことを知った時点で、ある程度の苦しみは覚悟していた。信頼出来る仲間が沢山いるから、攫われることなどないだろうと思っていたし、そんなことが出来るとしたら楓雅以外にいないと咲希は思っていたからだ。

 しかしどんな苦しみを与えられようとも、彼女は絶対に屈しないと決めていたのだ。それは彼女が負けず嫌いだから。そして彼女は姫として、上に立つものとして、凛々しくあろうとしていたから、情けない姿など誰にも見せてはいけないと考えていたのだ。彼女の大き過ぎる責任感、とでも言うのだろうか。

 藤原咲希はそういう性格の持ち主であった。

 彼女が林太に従うと口にしたのは、決して自分が救われる為ではない。彼女にとって、三村和輝という男は確かに特別な存在となっていたが、彼女が救いを求めたのは彼が特別だったことだけが理由という訳でもない。信頼してくれる仲間の為ならば、自分を信じてくれる人の為ならば、自分を犠牲にしてしまうのだ。

 藤原咲希は、そういった面も持ち合わせている、とても優しい少女なのであった。

 だからだろうか。彼女は、善人や悪人など関係なく、老若男女全ての人間に彼女は愛されてきた。ときにそのせいで、彼女自身が苦しめられることも多くあった。そして苦しめられれば苦しめられるほど、咲希は優しさを知っていった。清純な彼女は、自らが悪を知らない為に、狂った愛を愛として受け取ることなど出来ない。

 林太は咲希を欲しいと心から思っている。それは、彼女のことを好きという気持ちが主なものなのであるが、彼女がそれを知るはずなどない。咲希は林太に苦しめられてきたことから、彼が自分を嫌っているのだと思い疑うことなどない。そんな彼に捕まったのだから、どんな痛みを与えられ、恥を掻かされるのかと考えることだろう。

 美しい着物を着せられ、花畑へと連れていかれた。蝶が舞う、乱世に溺れる現世から離れたかのような、美しい空間であった。そこで告げられた林太からの命令は、舞って欲しいというもの。咲希はそれをどうして驚かずにいられようか。

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