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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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天才の悔しさ

 まんまと脱獄に成功し、深雪は咲希の姿を探していた。咲希も同じように投獄されていると思っていたので、まず最初に牢屋から探した。しかしそこには咲希の影など見られなかったので、彼女がどこにいるのか、推測してみることにした。

 本当は自分だけ捕らえられて、咲希は城で何事もなく過ごしているのではないだろうか。希望にも近いようなことを考える。そんなことはありえないだろうと、希望は掻き消して、すぐに咲希の居場所を考え直すのだが。

 そもそも、林太が咲希を捕らえていないで、深雪を捕らえただけだというのならば、あんなに嬉しそうな顔はしなかった。仮に深雪のことをどうしても捕らえたいと思っていたのだとしたら、もっと深雪に屈辱を味あわせてくるに決まっている。どんなことをしてでも咲希の為に生き残る。そんな深雪に死にたいと思わせるほどのことを、躊躇いもなく容赦もなくしてくることだろう。

 そこまでは深雪に興味を持っているようには見えなかった。現に、こうして脱獄出来てしまう程度の警戒しかされていない。ここまで条件が揃っていれば、咲希が捕まっていないという選択肢は、もうないも同然だろう。

 とりあえず自分が見つからないように、天井裏に隠れると、下の様子を覗きながら咲希の居場所を考える。牢獄にいないのだとしたら、林太の部屋にまで連れていかれているのかもしれない。急がなければ、咲希が一生癒えない傷を負うことになってしまう。深雪のせいでっ!

 責任を感じながらも、冷静さをなんとか保ち、咲希がどこにいるのか熟考する。しかし考えても答えが出ないので、少し行動することにする。林太の住む城のつくりなんて、深雪が知っているはずがない。だからまずはそれを知る為に、深雪は外に出て上から見下ろしてみようと考えた。

 そこは深雪も天才忍者。城の瓦の上に立つことなんて容易なこと、そこから全体を見下ろすにしても、彼女の視力があってこそ。高さも広さもあるのだが、細かいところまで彼女は確認することが出来ていた。そして、発見したのだ。悔しいだろうに、林太を楽しませている、親友であり君主である咲希の姿。

 お互いにもっと幼かった頃から一緒にいたので、咲希のことは見慣れていた。今更、可愛いだとか綺麗だとか思いはしない。だけど林太の思うままに動かされる、咲希のその姿は美しく、深雪は見惚れてしまっていた。

 咲希だって好きでやっていることじゃない。本当は嫌だけど、林太にやらされているのだろう。だけれど、普段は少し男勝りなところのある咲希だから、素直に可愛いと思わざるを得なかった。桃色の着物に袖を通し、華やかな髪飾りを付け、花や蝶と戯れるその姿には――。

 挿絵(By みてみん)

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