表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
26/85

救出のため

「本当に、それ以上は何もご存じないのですね?」

 絞り取れるだけの情報を雄大から残らず全て聞き出すと、一葉は最後に確認をする。そして立ち上がると、雄大のことも立ち上がらせる。

「一緒に行きませんか? 雄大殿は何をそんなに恐れていらっしゃるのです。恐れるものなど、本当は何もないのですよ」

 手を差し伸べられたので、思わず掴んでしまい、そのまま立ち上がらせられてしまった。しかし手を引いて歩き出そうとする一葉に、連れて行かれるわけにはいかなかった。自分は決して動くつもりがないという、意思表示も込めて、彼は固い決意のもとに動こうとしなかった。

 普段は流されるがままに動きがちの、臆病な彼。それでも今だけは頑なに動くまいとし、どんなに一葉が手を引いても動きはしなかった。彼女の呼び掛けにも反応を示さず、逸らすこともせず、ただまっすぐに彼女の目を見つめていた。

「行きません。絶対に行きません! 今更、救出に行こうというのを止めはしませんが、決してここを動くことはしません。行くならば、勝手に一人で行って下さい」

 いつになくはっきりと言葉を発し、行かないと言い切るものだから、一葉は驚いてしまう。雄大の口から、絶対に、なんて言われるとは思っていなかった。そこまでの否定をされるとは思っていなかった。雄大を勘違いしていたのかもしれないと、一葉は彼のまっすぐな目に、同じくまっすぐな視線を向ける。

 急いで咲希のところへ行かなければならない。本来ならば一葉には、こんなことをしている暇などないはずなのだ。そして雄大だって、一葉に全てを話してしまった時点で、咲希が救出されず一葉が捕まった場合には、自分の立場も危うくなることがわかっている。もう関係ないとは言えないところまで来てしまっていることも、わかっていた。

「どうして……? 私では雄大殿を守る力がないのだと、そう仰るのでしょうか」

 意地の張り合いになってしまっていたので、行こう行かないの言い合いを終わりにして、一葉は雄大に問い掛ける。それに対して雄大は、哀しそうな、何かを恐れているかのような表情で、俯くことしか返せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ