脱獄宣言
いくらなんでも、深雪のことを馬鹿にし過ぎだっつの。
死神と呼ばれた忍びの実績は、偽物じゃないんだからね。
最初はどうしようもなかったよ。真っ暗だし、場所も知れないし、手足も動かないし、深雪なりに捕らえられたことにショックを受けていたし。
でもあの豚、本当に馬鹿なんだもん。
まあ、楓雅ともあろう男がこの程度のミスをするというのは、意外だし反対に怪しいくらいんだんだけどさ。
信じ切れないチャンスではあるけれど、これを逃したらもう訪れないかもしれない。
そんなわけで、深雪は脱獄しようと思っているわけ。
きっと豚の野朗は、深雪をさっさと追い返して、今度はあそこに咲希を呼ぶつもりなんだろう。
咲希のことは殺さないだろうけれど、ジュッキーはどうだろう。
豚だったら、ジュッキーのことを殺してしまうかもしれない。楓雅がジュッキーを気に入っているようだったけど、豚に命令をされたら、きっと彼は逆らえない。逆らおうとも思わない。
もしかしたら、咲希を悲しませる道具として、殺されてしまうかもしれない。
そんな理由で殺されることなど、本来ならば考えられないし、絶対に許されてはいけない。だけど、豚なら迷わずにやるだろう。
咲希が悲しむ前に、ジュッキーが傷付く前に、早く救い出さなければ。
二人が攫われたこと。それは、忍びであるのに守れなかった、深雪に落ち度があるだろう。
任務を果たすことも出来ず、姫を守ることも出来ず……。
でも深雪はその程度の忍びではない! 豚なんかに負けて堪るものか。
牢屋に放り込むだけで、手錠すら付けられていないんだ。
手足を鎖で繋いでいたものだから、豚の前に連れ出すのに、外さざるを得なかった。最初から足だけを鎖にして、手錠を付けておけば良かったものを。
それだったら、外すこともなかったから、付け忘れることもなかっただろうにね。
なんの道具も持っていなくたって、手が自由に使えるのなら脱獄くらい余裕だっての。




