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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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成功の笑み

 怒るよりも先に、やるべきことがある。一葉はすぐに冷静な思考を巡らせ始め、まずは城の主のところへ走った。

「雄大殿、姫様がどこにいらっしゃるか――」

「知りません」

 やっと見付けて問い掛けるのだが、雄大は一葉の言葉を最後まで聞くことすらなく、否定の言葉を述べた。その瞳は罪の意識と恐怖との間を彷徨うようで、一葉は彼の言葉が嘘であるとすぐに気付く。

「知らないなら良いのですが、……困りましたね。この城に今、姫様がいないという情報が漏れた場合、どうなるでしょうか」

 嘘を見抜いていないようなふりをして、脅しを掛けるように一葉は言う。雄大は彼女のその姿にも恐怖を覚え、それでもなお口はきつく閉ざしていた。臆病な彼のその意志の強さに、一葉は犯人が誰であるかも知った。

「林太殿から脅されているのですね? だとすれば、窓を開いたのは雄大殿、そこから姫様を連れ去ったのは楓雅殿でしょうか。和輝殿と深雪殿のことはご存じですか。まさかあの二人のことも売ったのですか?」

 全てがバレていることに、詰め寄る一葉の目の鋭さに、雄大の瞳は怯えで潤んでしまっていた。一葉はそれに成功の笑みを浮かべ、更に続けた。

「話して下さいませんか? 大丈夫。雄大殿のことも、姫様は平等に守るに決まっています。雄大殿は姫様に降伏したのですから、姫様は雄大殿のことを他の仲間と平等に扱います。彼女はそういう性格です」

「いや、でも……、知りません。何も知りません。何も、知りたくありません」

 雄大のあまりの怯えように、一葉はやり過ぎたと少し反省する。しかしゆっくりしている暇はなかった。その間にも、咲希は苦しんでいるかもしれないのだから。心を鬼にして、花のような優しい笑顔を表面に付け、一葉は雄大から引き出せるだけ情報を引き出そうとする。

「そんなに恐れる必要はありません。姫様は、誰もを守って下さいますから。そして和輝殿も、きっと雄大殿のことを大切にすることでしょう。だから信じて、お話頂けないでしょうか。林太殿の築く世界を望んでいるのではないのでしょう? それでしたら、ご協力願います」

 何度も頭を下げて頼む一葉に、雄大の瞳にも、怯えと動揺以外の色が見え始めていた。

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