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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
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名前を呼べば

 いつの間にか、私が仕える国は滅んでしまっていたようだね。

 助けられなかったこと、悔しくは思うよ。

 ただそう思ったところで、何も始まりはしない。

 そんなことをするくらいならば、取り返す為に頑張ってみようかな。

 咲希様のこと、私は好きだったんだから。


 あ、恋愛感情とかは抱いていないよ?

 私はもう三十路を越えたおっさんなんだから、あんな子供に発情したら、それはもう犯罪者さ。

 恋愛というのは、歳の差があまりない方がいいと、私は思っている。

 何も、いけないとは言わないよ? 言わないけど……。

 おっさんに若い体は勿体ない。

 歳を取っているからって、私が恋愛感情を抱くかどうかは別にしてね。

 年齢が近くても、多分だけど、私は機械しか愛せないから。

 人間の恋人は難しいし、こんな私じゃ相手の人が可哀想だもの。


 って、随分と話がずれてしまったね。

 いつもみたいに一人劇場を広げている場合じゃないんだ。

 こうしている間にも、咲希様は辛い目に遭っているのかもしれない。

 もしかしたら、私の助けを待っているのかもしれない。


 でも一葉様ったら、私をなんだと思っているんだろうね。

 私だって、なんでも屋じゃないんだよ?

 そりゃまあ、咲希様が攫われたんだと聞けば、助けたいとは思う。

 それでもさ、「早く助けて下さい」はないんじゃないかな。

 早くって、私だって急いで助けに行きたいっての。


 私が仕えていた国。それは、咲希様の笑顔が輝く国。

 城がなくなろうとなんだろうと、咲希様さえ笑っていてくれれば、私が仕える国は滅ばなかった。

 それなのに、咲希様が攫われちゃうなんて。

 こんなことなら、私の隣においておけば良かった。

 なんてね。さすがにこれは冗談だよ。


 私はあくまでも、咲希様の国を支える技術者。

 私自身には咲希様を守る力もないし、そんな立場でもない。

 でも、咲希様を助ける為に、努力は出来るよ。


 待っていて。今、助けに行くから。

 一葉様の勘違いだったら良いのにな。そう思いながらも、私は螺を回した。

 今、助けに行くからね。だからお願い、待っていて。

 地面に貴方が声を掛ければ、きっと私は貴方を助けに行くから……。

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