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サクラのキセツ 陰  作者: 斎藤桜
11/85

届かなくて

「このままじゃ、皆が死んじゃうよ」

 タレのたっぷり掛かった、甘い団子を頬張りながら、深刻な表情をして海人は呟いた。もう丸一日が過ぎたというのに、日良が部屋から出てくる気配はない。そして、野乃花が動く気配もない。このままでは、二人とも飢えて死んでしまうだろう。

 咲希や和輝が攫われたという報告を受けてから、ずっと頭を抱えていた海人。そんな中で、日良や野乃花がそうしているのだから、もう海人の頭の中はいっぱいだった。どうしたら皆を救えるのかと考えるけれど、良い案は一つも出て来ない。

 糖分補給をすれば、何か思い浮かぶのではないか。そう考えて、海人は団子を食べているのであった。持ってこさせれば良いものを、彼が団子屋にまで食べに行っているのは、城から離れたいという思いもあった。

「海人様、日良様に何かあったのでしょうか」

 俯きながら団子を口に入れる前に、毎度溜め息を吐きながら食べる、そんな海人に店主は恐る恐る問い掛けた。顔色も悪く、海人のことも心配だし、彼がこうなっているのだから、日良に良からぬことがあったのも明白だからだ。

 自分が首を突っ込むべきことではないと、理解はしている。それでも、日良のことを信用しているから、心配な心は止まらないのだった。

「何もないとは言わない。だけど、必ず僕が日良様のことはお救いする。それが僕の役目だから、心配することはないよ」

 無理に微笑みを浮かべて答えるけれど、それが反対に海人を痛々しく見せていた。美味しそうに団子を頬張ってはいるが、いつも通りふっくらしている海人だが、どこか痩せたようにも見えるほどに。

 短期間で驚くほどの活躍を見せ、日良だけでなく、多くの人の信頼を集めていた海人。そんな彼だからこそ、不安気で悩んでいるような表情をしていると、回りにいる誰もが心配したのであった。

「日良様……」

 遂には涙を一筋流し、海人は城まで全力疾走で帰っていった。普段は運動を嫌い、走ることなどほとんど見られない海人だから、どれだけ彼が思い悩んでいるのか知るのにそれは十分だった。どれだけ良くない状況にあるのか、知るのにも十分だった。

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