商店街
おじさんに貰ったお札を手に握りしめながら、
商店街の中に入ると、
意外と人がいることに気が付いた。
そしてどこからか「いらっしゃーい!!」と
活気のある声が聞こえてくる。
はっ、とそこで気付いた。
「そ、そういえば店の名前・・・聞くの忘れた・・・」
うーん、
とりあえず歩いて探そうか・・・
私は商店街の中を歩いて、そのご飯屋さんを
探すことにした。
商店街の中は何故か薄暗い。
天井を見上げると、丸い・・・豆電球が
広い間隔で順序良く飾られていた。
薄暗いと感じたのは、高い天井にも関わらず
その豆電球のみで、この商店街の中を照らしているからだ。
いくつかの豆電球は、切れているのかチカチカと点滅したり、
既に切れてしまっているものもある。
商店街の中にはシャッターが降りた所もあったが、
いくつかの商店はちゃんと機能しているようで、
店主達が様々なものを売っていた。
私もあまり昔の物に詳しくはないのだが、
周りのものを見てみると、恐らくそうだろう。
私は左右にある商店を横目に見ながら
食べ物やさんと思われる場所を探していると、
ふいに後ろからか細い声で声をかけられた。
「おや、こんな所に若いお姉ぇさん。珍しいね」
振り返ると、
身長140cmくらいの紫陽花柄の和服を着た
小さな老人が立っていた。
「こ、こんにちは」
「ふふ、こんにちは。
貴方みたいな若い方久方ぶりに見ました。
若い方がこんな所になにか用があって?」
お婆さんはニコニコと笑って、私に言った。
「えっと・・・こちらに美味しいお蕎麦があると
聞いたんですけど、肝心の
お店の名前を聞くのを忘れてしまって」
「あら、それなら・・・
多分佐上さんの所じゃないかしら」
「佐上さん・・・?」
「あぁ、えっと、ここからすぐ近くよ。
ここから六軒程先進むと、右側に赤い提灯が見えるの。
そこが、佐上さん所の¨柏凪¨というお店よ。
看板は出してないし、普段扉も締めているから、
初めてここにくるなら分かりにくいけれど。」
「柏凪・・・
ありがとう、お婆さん。」
「いいのよ。私もあそこのお蕎麦は大好きだもの。」
ふふ、とお婆さんは優しく笑うと、
「それじゃあ、会えて良かったわ。
またいらっしゃいね。」
と、片方の袖を持って小さく手を振った。
私は「ありがとうございます。」と頭を下げて、
お婆さんから聞いた¨柏凪¨を目指した。
少しして後ろを振り返ると、
お婆さんは、既にいなくなっていた。