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なかったこと

 嗚咽をこぼす少女は夜の空間にぽっかりと出現した場違いな空き地で座り込んでいた。

 いつもは頭のてっぺんでひとまとめにされている黒髪は解けて、顔を覆う両手は土で汚れ少女の傍らには土が付着したスコップが放置されている。身にまとっている制服も泥だらけだ。

 真っ黒な空には色とりどりの星が吊り下げられていてぼんやりと光を放つ。街中に人の気配はない。ぬいぐるみが徘徊し建物の壁は幼い子どもが書いたような落書きで埋められている。

 ここは夜の世界。神様が用意したおもちゃ箱。

 現実から掛け離れた幻想の街。

 そんな場所で少女は何かを嘆いていた。

「…いろり」

 そう呼ばれた少女は涙と泥でぐちゃぐちゃになった顔で振り返る。

「遅くなってごめん。もうすぐ日の出だよ」

 優しく言葉をかけるのはキャラメル色の髪をした線の細い少年。柔らかい笑顔を浮かべ少女をなだめる。

「く、儚葉。何で、ここに」

「それは…いいから。行こう、夜が明けるよ」

 鼻を啜りながらいろりは儚葉が差し伸べた手を握りゆっくりと立ち上がった。

 そして二人手を繋いだまま夜の帳に消えていった。

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