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小暮亜矢の冒険  作者: 真白もじ
第一章 異世界からの訪問者
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第一章 異世界からの訪問者 【4】

 巻き込まれたくない。だからこれ以上、事情は聞かない。私はそう決めた。

 居候になったナギルのお世話は……なぜか、私と由希が担当になった。美和お姉ちゃんはそもそも面倒くさがりで、説明とか適当だしね……。

 ……めんどくさい。

 私だって、めんどくさいのよね、すっごく。

 由希は腕輪をもらった分は優しく接するつもりみたい……。あくまで「つもり」だ。最悪で、最低だわほんと。

 ナギルに興味津々で、由希は色々質問してたし、途中でデジカメ使って写真まで撮ってた。なにやってんだあいつ。

「ナギルは王位とかに興味はないわけ?」

 うぉぉい! いくら異世界の人でも一応その人王族でしょ? 敬うとか、ちょっとは気を遣うとかあるじゃないの! なんでそんなフレンドリーなのよ、由希!

 ナギルは由希の態度に無礼とは思わなくなったようで――どうやらそれがこっちの世界では普通だと勘違い、さらりと「ないな」と応えた。

 頭に三角巾をつけ、手にはゴム手袋。エプロンまでつけてもらって風呂掃除とかやってもらってる……。だってできることが少ないんだもん、この人。

「面倒なだけだ。オレは補佐するほうが性格的に向いている」

「ふむふむ。補佐のほうへは興味はあるわけだ。

 あ、だから亜矢姉をお妃にしても大丈夫とか言ったわけ?」

「そうだ。庶民の娘を妃にもらえば反感は買うだろうが、オレの継承権は高くないのでな」

 ごしごし、とスポンジ片手に浴槽を洗っている王子様を、浴室の外から眺めていた由希が「へぇ~」と薄く笑っている。

 くっそー。庶民で悪かったわね、庶民で! 日本のほとんどの人は「庶民」なんですけど! 庶民なめんなよ!

「まあ確かに庶民の娘が嫁さんなら、王位狙ってますとは思われないよな~……普通は」

 そこまで簡単じゃないんだろうけどさー、と由希が洩らし、私は丸聞こえの会話を遮断すべく、リビングのドアを閉めた。

 だいたい由希のやつは洗う方法を指示しているだけで、何もしていない。……無駄話してないでなんとかしてあげればいいのに。……私もひとのこと言えないけど。

 そもそもなにがお妃なのよ。誰があんたなんかの嫁になるもんですか! 顔がいいのは認めるけど、最初の印象が悪い。悪すぎるもの。

 ………………そういえば、私、彼氏いない歴17年なんだわ。

 うわぁ……なんかそう思ったら途端に胃が痛くなってきた。おかしい……私、由希ほどとはいかないけど、平均値はいってると思うんだけど。

 ああ、やだやだ。こんなに暗くなってたら耐えられない!

 そういえばあの巨大インコはどうしてるんだろう。戻るってのもおかしいけど、帰ってからもう3日経ってるんだけど。

 ……無能なのかしら? いや、ありえる。だってインコだし、鳥頭だし、脳みそもそのくらいってこともあり得るじゃない?

 はっ! なに真面目に考えてんのよ。あいつらは宇宙人なのよ? 異世界という名の地球外世界の生命体なのよ? あああああー! もうやだぁ!

 考えれば考えるほどにドツボだわ……。

 私はリモコンに手を伸ばした。

 スイッチを入れると、ちょうど気になっていたシリーズがやってた。あー……これ、助手と探偵くっつかないのかしら? いくら人気のシリーズとはいえ、出演者にも年齢という壁があるんだからやきもきさせないで欲しいんだけど……。

「王子!」

 にゅっ!

 という音がしそうな勢いで、画面からインコが顔を突き出した。

「ギャーああああああああああああああああああ!」

 あまりのことに悲鳴をあげてのけぞる私は、お姉ちゃんの真似をしてリモコンを投げつけた。けど、悲しいかな、私はノーコンであった。

「おや、アヤ様」

「いやあああああ!」

 奇声に近い絶叫をあげて、私はわたわたと逃げ出す。

 ソファの後ろに隠れて震えていると、リビングのドアが開いてナギルと由希が入ってきた。うお。雰囲気の違う美形が並ぶとすごい迫力。

 ……じゃない! そうじゃないでしょ、私!

「モンテ!」

「王子! ……なんですかそのカッコ」

「いや、掃除をしていた。働かざる者食うべからず、だそうだ。こちらの世界の格言だそうだが、なかなか気に入ったぞ」

「なんてことしてるんですか、あなた……」

 呆れるインコの声に私は耳を塞ぐ。

 終わったならさっさと帰って。もう私を巻き込まないで!

「あれー? 亜矢姉、なにしてんのそんなとこで」

「しっしっ! あっち行ってよ由希」

 手で追い払う仕草をすると、由希が肩をすくめた。

 あー、やだやだ。本気で関わりたくない。異文化交流はノーセンキューだわ!

「なにか状況が変わったか?」

「第六王子のケガの原因ですが、これはご自身によるものと判明しました」

「自分で?」

「歓楽街で足を滑らせて転んだらしく、それほどひどくはないということでしたぞ」

「……兄上……」

 呆れてしまったようで、ナギルは深い溜息まで吐き出している。

 第六ってことは、ナギルのすぐ上のお兄さんってことよね? 歓楽街に行くような人なんだ……。って、なに聞いてるのよ! だめだめ、もっとしっかり耳ふさいでおこう!

 ……明日も学校あるんだし、部屋に戻ろう。

 すっくと立ち上がった私を、由希とナギルが一斉に見てくる。うっ、なによその目は。別に逃げるわけじゃないわよ!

「亜矢姉、どこ行くの?」

「……部屋に戻ろうかと思って」

「おお、それは少々お待ちくださいアヤ様」

 このインコめ! なにが目的だ。私を部屋に戻らせろ!

 軽く睨むが、インコの表情は喜怒哀楽がよくわからないので……どうなのか、やっぱりわからない。

「アヤ様との婚約のことですが、国王には報告しておきましたぞ、王子」

「……3日かかったのは、根回しのためか?」

 またも面倒そうに呆れるナギルだったけど、私はぎょっとした。

 なんでそのワケのわかんない婚約話、現在進行形なの??? 私、断ったよね? あれ? 私の意見って、無視なの?

「最短記録ですな!」

 あれ? なんかあのインコ、誇らしげなんですけど? 鼻息荒いんですけど? え? あれって鼻息って表現であってるの?

「知っているのは国王様と側近の方数名だけです。正式な結婚ともなればそうはいきませんが、一時的な措置として婚約が認められたのですぞ!」

「………………」

 無言になる私の前で、由希が片手を左右に振った。

「亜矢姉? おーい、意識しっかりしてるかー?」

「……お願い。あの鳥頭、ぶん殴って」

「殴っても治らないと思うけどなー。

 ああそうだ。その婚約っての、破棄とかしちゃっても大丈夫なわけ?」

 おお! 我が弟ながらナイスなこと訊いてくれるじゃないの! そうよそうよ。破棄できればいいんだわ!

「できますぞ。まだ正式には婚約成立はしておりませんからの。婚約式をおこなっていただければ、王国中に知れ渡りますが」

 勘弁して。

 でも良かった。破棄できるんだ。

 ん? 視線を感じてそっちを見ると、ナギルだった。うわっ、こいつ近くで見ると毒だわ。本気で美形だもん。

「破棄したいのか?」

「べつに王位とか、爵位とか? には興味ないから」

 平坦に言うと、ナギルは本当に不思議そうにした。なにその顔。なんとなくムカつく。

「……こちらの民は変わっているな。爵位や領土を与えると普通は喜ぶものなのだが……」

「ええ、ええ、変わってます変わってます。だから婚約するとかふざけたこと言うのはやめて」

 ああ、まともに会話しちゃってる自分。……部屋に戻る機会が。

 腕組みするナギルは本当に不思議そうだ。ほんとムカつく表情ね……。

 だいたいなんで今どき、告白もされてないのにノリでいきなり婚約しなきゃならないのよ。

 せめて……せめて「付き合う」ところじゃないの。段階としては! そこまでなら許せるのよね、ギリギリ!

「オレの妃では不満か?」

「はあ?」

「恋人でもいるのか?」

「…………」

 どうしよう。無性に殴りたくなってきた。

 いないわよ、どうせ! あーもう、なに言わせようとしてんの!

「いないよー。亜矢姉に告白してくるヤツなんて、亜矢姉のことわかってないバカばっかりだしさ」

 由希ぃ~! そこでなぜそんなことを言うの!

 睨みつけるけど、弟はさっと視線を外して口笛を吹いた。腹立つ~!

「つまりさ、亜矢姉は恋愛結婚が理想なんだよ」

「恋愛結婚?」

 ぎゃああ! なに言ってんの由希ってば!

 恥ずかしさのあまり真っ赤になって止めようとするけど、するりと動きをかわして由希がナギルに近づいた。

「そうそう。愛し愛され、恋し恋されってやつだよ。ま、王族のナギルにはムズカシーか」

「…………恋愛結婚。確かに、オレにはこの娘への思慕の情はない」

 はっきり言うなあ! あんたその美貌ではっきり言い過ぎだって! 期待してなかったけど、すっごい腹立つんだから!

 あまりのことに、怒りのあまりか……なにも言えないで押し黙ってしまう私を由希がそっと哀れみの目で見てくる。なんなのよ、その目は!

「だが、どうしてもというなら努力はしてみるが」

「結構です! 努力とかいらないし、結婚しないし、こっちからお断りです!」

 ズバッと言ってやると、そこそこ気分がスッキリした。

 そうそう。こんな異文化コミュニケーション、いつまでもやってられますかってのよ。

 ムッとした目でナギルが見てくる。

「オレの何が不満だ!」

「その偉そうな態度といい、物言いといい! そもそも誰が最初に私を縛って転がしてたのよ!」

「う……」

「顔が良くても性格悪い! 王族とか関係ないし、私、好きな人としか結婚しない!」

「なんだと! では愛を誓ってやる! ここでだ!」

「あのね、そんな口からでまかせ……」

「しかしアヤ様、褒賞を受けるにも一応それなりのあれとかそれとかありまして……」

 インコがもごもご言っているのを物凄い顔で睨むと、彼は首を軽く引っ込めた。

「べつに褒賞とかいらないし! もうとにかくさっさとここから……」

 くらり、と目眩がしてよろめく。

 あれ? なんか部屋が揺らいでない?

「亜矢姉? お、おい大丈夫か?」

 叫びすぎて酸欠? 由希に支えられたのかと思ったけど、ナギルだった。ゲゲッ!

「な、なにす……」

「モンテ! 召喚魔術だ。これはどういう……」

「王子! 防御結界を……」

 はあ? あの、すいません、わかりやすい日本語をお願いしたいんですけど。

 ナギルが由希に私を任せて、ずんずんとインコのほうへと歩いて……。

 ぶわっ、とその瞬間に私の足元に奇妙な円陣が出来上がった。見たことのない文字で埋め尽くされた円陣の中央には私が居る。

 え? な、なにこれ。ちょ、ちょっと待ってよ!

「うそっ、ちょ、待……!」

 下へと思いっきり引っ張られて、私は闇の中へと沈んでいった。

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