空を飛ぶやつには無反動砲
ちょっと長め。と言っても+2000文字くらいだけど
数学が終わんねぇ。英語も終わんねぇ。
「行ってきまーす」
「はい、行ってらっしゃい」
なんだかフレンドリーになってきたアリムさんに見送られて宿『さえずり』を後にする。
帰ってくるけどさ。ちなみに朝は小鳥のさえずりとかなかった。
「えーと、ギルドまでは・・・こっちだったな」
流石に一晩では忘れない。
そこそこ賑やかな道を歩いていく。
目立って悪いことしてる人とかはいないな、治安がいいってのは本当なんだな
・・・
さっきから道行く人がチラチラとこっち見てる・・・。
なんだよ! 言いたいことあるなら言えよ! 銃背負ってて悪いかー!
見た目ただの鈍器っぽいけどちゃんと戦えるんだぞ! 泣くぞコラ!
この男、豆腐メンタルである
「よし、走ろう」
人々の物珍しそうな目線から逃れて一刻も早くギルドにたどり着くために、俺は身体強化を使った。
タンッと足を軽く踏み込んで、そこから一気に加速した。
周りの景色が流れるように過ぎていく。
周りの人達は驚いたようにさらに見てくる
逆効果じゃねぇか。
でも走り出した手前止まるわけにも行かず、そんな目線を受けながらギルド前まで走りぬいたのだった。
******
「で? 何があった」
「身体強化して走ってきたら急に止まれず塀をぶち壊しました・・・」
マスターからのお説教なう。
あれから走ってきたはいいが、調子乗りすぎて止まれずにギルドに突っ込みました
マスターは俺の返答を聞いて親指をこめかみに当ててため息をついた
「まったく・・・敵が来たかと思ったじゃねぇか・・・てかお前固いな・・・」
そりゃ身体強化で硬度も増してたからな
ていうか敵って何が来るん?
「あの・・・弁償しますので・・・おいくらですか?」
ついつい語尾が弱くなる
「あー。弁償・・・ねぇ」
うむうむ、とマスターは数秒考えてから
「じゃあ報酬なしで依頼受けてくれ」
笑顔でそう言った
*****
「という訳でこれ受けることになりました」
受付のお姉さんにSランク依頼の紙を渡す。
マスター曰く、この頃依頼が溜まってきたので弁償の分だけ依頼受けてくれ、とのこと
もちろん報酬は弁償金が引き抜かれる。
で、何回か受けるのもアレだから一番報酬が高い依頼を選んだ。
その結果がSランクの『レインボードラゴン討伐』だ。誰が付けたんだよこの名前。
ちなみに自分のランクより上の依頼も受けれる。
ただ命の保証はないので自分に合ったものを受けたほうがいい、ってマスターが言ってた。
「はい、わか・・・ってこれSランクじゃないですか」
「大丈夫、行ける」
「まぁ・・・私が内容に口出しすることはできませんし・・・分かりました。受理します」
案外冷たいのな。
でもそのくらいじゃないとひねくれ者がいっぱいいそうなここじゃやっていけないのかも。
「では、依頼の説明を致しますね」
「よろしくお願いします」
では、と分厚い本を取り出した。幅が5cm位ある。図鑑のようだ
いくつかページを捲り、
「ありました、これがレインボードラゴンです。その名の通り全身虹色でキモいです」
キモいて。
確かに描かれてる絵はキモいけどさ
カメラ、つまり風景とかを写すようなものはこの世界にはないのかな?
「弱点は確認されている例ではないですね、地道に攻撃して息絶えるのを待つしかないようです」
へぇー。結構強そう。
Sランクの一番難易度高いやつだったし
「達成条件はレインボードラゴンと識別できる鱗を一枚以上持ち帰ることです」
剥がれにくいのでご注意ください、と言ってお姉さんは図鑑を閉じた。
「報酬は金板4枚に金貨8枚です」
うむ、十分だ。
この世界の物価は安いのでそれだけでも暫く遊んで暮らせる。
・・・あれ? そうだと『さえずり』はこの世界にしちゃちょい高くね?
そうだ、忘れてた。これ聞かなきゃ
「えーと、このギルドカードは他の所でも使えるんですか?」
「ええ、リムア国内ならばどこのギルドでも使えます」
「えーと、各地域にあるんですか? ギルド」
「はい。一つずつありますので旅先や出かけた時などもその場で依頼が受けられます」
便利ー。
その街に定住していて一番強い者がギルドマスターになるらしい。
だからここのマスターも『うちのギルド』って言ってたのね。
その時、フッと背中が軽くなった
銃が持ち上げられたのだ。
慌てて肩ごしに後ろを覗くと
「これが、お前の武器か?」
マスターでした
「あー。まあそうです。気にしないでください」
さっきのアレが蘇る・・・!
「・・・どうやって戦うんだ? 殴るのか?」
鈍器じゃねえよ
「銃っていうものでして、鉛の弾を打ち出すんです。弓矢の高速連射みたいなものでしょうか」
いろいろ違うけどな
「そうか・・・聞いたことねぇな」
この世界は銃が無いのか・・・。
「じゃ、じゃあ俺は依頼行ってきますね」
色々模索されたらあとが面倒なのでさっさと出かけよう
「おう、死ぬなよ」
「頑張ってくださいね」
マスター、生々しいっす
*******
「さて」
俺は貰った地図に目を落とす
「高速演算」
つぶやくと、脳に入ってくる情報量が途端に膨れ上がる
これは能力で作ったもので、高速思考や並列思考などをまとめて2乗した感じのものだ。
地図をさらっと眺めるだけでここからの距離、時間、最短ルートなどが一瞬で算出される。
目的地は"沈黙の森"静かで薄暗く、気味が悪いからついた名前だそうだ
こりゃ・・・結構遠いな。テレポートとか使ったほうが良さそうだ
そこまで考えてから俺は高速演算を解き、路地裏に入っていく。
人目に付いちゃまずいからだ。
「目的地を沈黙の森に設定、座標確定」
ちょっと雰囲気を出すために一人呟く
うっわ恥ずかし
でもなんだこの高揚感
「テレポート、開始」
一瞬の浮遊感の後、景色がガラリと変わる。
さっきまで見ていた明るい街中の風景とは違って暗く、薄気味悪い森の入口
「ここか・・・」
中に少し踏み込み、辺りを見回す
「広いな・・・探知するか。生物探知」
これも今作った能力、広範囲にわたって生体反応を探知してその大きさまで確認できる。
他に機能もあるがそれまた今度に
「ん・・・・お、みっけ」
西の方に数キロ、ドデカイのが・・・・2体?
依頼書には単体で目撃としか書かれてなかったぞ?
何はともあれ、行ってみるか
******
身体強化で数十秒。やっぱぱねぇなこれ
さて、無事近くまでこれたんだが・・・
2体いる。デカイのとめっちゃデカイの。
デカい方がレインボードラゴンだな・・・あの色は遠目でもキッツイわ
ちなみに今俺は見つからないように隠れて様子を伺っています
もう一匹の方が・・・ありゃ何だ?
白銀の輝いてる鱗にスラリと伸びたしなやかそうな尻尾。
鋭い眼光を持つ金色の瞳。まるで俺が王だと言わんばかりの威圧感だ
羽は透明感があり、薄そうだがきれいな光を放っている
なんだこいつ・・・・?
・・・・
・・・・・認識阻害
この手の奴には何かありそうだと思った俺は自分に認識阻害をかける
姿、気配、音など俺が居ることを示すものを他の生物に認識できなくする物だ。
実際に姿が消えるわけではない。
そろーっと後ろに周り、もう少し接近する。
俺後ろ取るの好きだな
とりあえず両者は睨み合っている。
と言ってもレインボーの方が悔しそうにしており、白銀の方が余裕かまして見下してる、って構図だ。
勝負か何かかな・・・?
「ズオォォォォォォ!」
突然、レインボーが叫んだ
ズオォて何よ、お前色だけじゃなくて鳴き声も変なのな
それに反応したのか白銀もすぅっと息を吸い込み
「コォォォ......」
辺りに染み込むような響きで、水面の波紋のように鳴いた。
・・・すげぇ。すごく綺麗
録音したかった
虹色野郎とは大違いだな・・・
これから虹色を倒すにあたって、あいつも敵対したら倒さなきゃいけないのか。
自分の命を守るために
・・・あいつ、どこかに行かないかな。
できれば倒したくない。
不意に、白銀が虹色に背を向け、反対方向に歩き出した
・・・・もしかして、通じた・・・?
いや、そんなことはない。こっちは認識阻害をかけてんだ。
でも、これで虹色を心おきなく倒せる。
俺は虹色の前、さっきまで白銀がいた所に出て。
認識阻害を解いた
―戦闘、開始だ。
*****
「ズオォォ・・・?」
白銀がいなくなり、人間が出てきたから不思議に思ったのだろう、こっちをジロジロ見てくる
「鱗を一枚くださいな」
そう言って俺は背中のSA58を引き抜き、頭を狙って連射する。
ブレが大きいし遠くて当たりにくいな。能力、自動リコイル
腕の筋肉が勝手にズレを直してくれる。よーし、おk
バババババババッ
心地いい射撃音で的確に頭を狙う。
「ズオオオァァァオアァァ!?」
なんか喋ってるんちゃう? 俺の気のせい?
突然飛来した弾に驚き、避けることもできず正面から受け続ける虹色
「グアアアアアアアアアアアアアアアア!」
なんだ、普通の声出せるやん
痛みに耐え切れず、翼をはためかせて上空に舞い上がる
「逃がさんよ!」
即座にSA58を背中に戻し、RPG‐7を創造。レーザー誘導も付けておく。本当はないんだけどね。
「おら! 一発目!」
スコープから上空の虹色を捉え、打ち出す
虹色は横に逸れて回避する、がレーザーで誘導して追いかける
翼で叩き落とそうとしてくるが、それも上手く回避する。ゲーマー舐めんな
ドォン!
虹色の横っ腹に当たり、体制を崩す。
俺はその間に弾をリロード
「グ・・・・グアァ」
虹色はなんとか持ちこたえるがふらふらと頼りない飛行。
『なんなの? マジいきなりなんなの? 反撃の隙もないの?』
と片目が弾丸で潰れた顔で脇腹から血を出しながら訴えかけてる(気がする)虹色。
「ごめんよ・・・俺も本当はやりたくないんだ・・・」
それが本心なら是非とも今すぐやめて欲しい
「でも・・・ギルドの塀を直さないと、マスターに怒られるんだああああ!」
どこまでも鬼畜だった
「はぁいもう一発!」
リロードを終えて発射する。
これ一々リロードが必要なんだよね。
今度連射できるのを一から作ってみても面白いかな?
虹色はビクッと体を震わせ、急旋回で逃げる
「逃げるなあああああ! 鱗取らせろおおおおお!」
レーザーで誘導、頭にぶち当てる
本来ならば攻撃し返すのだが、見たこともない武器に恐怖を覚えているようで逃げるのみ。
「グギャアアアアアアアアア!」
これが止めになったのかふらふらと空中をさまよい、地面に向かって落下していった。
「回収地点に向かいます!」
一人テンションを上げて身体強化で走る。
「おぉ・・・潰れてる」
おそらく着地した時に下だったであろう頭は完全に潰れて中々グロイ状態だ。
「俺は何も見とらん・・・」
急にハイになってた精神が沈む。
頭だったものを見ないようにしながらRPG-7を消し、鱗が綺麗な場所に近づく。
死んでいるようだ。
俺はスリングのポケットからナイフを取り出し、鱗と鱗の隙間に刺し入れる
にちっ
皮を切ったような感触。
さらに深く刺す
ズッ
そしてそれを横方向にスライドさせる
ズチチチチッ...
あんまり聞きたい音じゃないなあ・・・
不快な音と血の臭いに顔をしかめながらもナイフを動かし、鱗をはがす
ベリリッ
鱗の裏には皮と血がべったり付いていた
「うぉぇ・・・」
吐き気を我慢しながら、創造でリアさんが使ってたバッグを創る。
その中に押し込む。もう見たくねぇ
そのあとも何枚か無心になりながら剥ぎ取り、バッグに押し込む
このバッグは内容量が馬鹿デカく、重量が無い。こういうのにはピッタリだな
「さて、と。これで依頼内容は終わりだな」
でもせっかくだし少し休んでからそこらへん探索してから帰るか
離れたところに泉があったのでそこで血濡れの手とナイフを洗い、腰を下ろす
「ふあー。やっぱ疲れるなぁ」
肉体的には大丈夫とはいえ、精神的にきつい
ナイフで肉を切るとか料理くらいしかなかったもんな。
ましてや死体なんて・・・
「んーっ」
軽く伸びをして、ごろんと横になる。
草が気持ちいいな。
ビーッビーッビーッ
おぉ? 何?
この音は・・・生命危機か
探知のもうひとつの機能、生命危機だ。
本能的に危険な状態になった場合、または近くの人間がその状態になると警告する。
「場所は・・・・近いな」
立ち上がってその方向に走り出す。
あわよくば、たどり着くまでに生きていることを願いながら。
「ここらへんのはず・・・・あっ」
藪の中、人の腕らしきものが見えた。
ガサガサと、葉っぱが付くのも構わず藪をかき分ける
「おい、大丈夫か!」
そこには、銀色の髪をした血まみれの少女が横たわっていた。
久しぶりの銃戦闘。
RPG-7にレーザー誘導付けるとか馬鹿じゃねぇの?
とか思われるかもしれませんがそこはチートですから。
ギルドの説明、上手くできたかな・・・?
まとめると大きな一つのギルド組織があり、その支部が各地域に置かれてるってことですね。別にマスター個人の物ってわけじゃないです。
ていうかよくある冒険者ギルドです、はい。
共通模試が目前ですので、2日くらい更新無くてもご心配なく。
終わったら復活します。多分毎日書いてるだろうけど。