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帰らない人

作者: 黴菌

俺がガキの時、両親は事故で死んだ。


それから19歳になる今まで俺は親戚の家で育った。




今日俺は一人暮らしを始める。


アパートはもう見つけてある。


大学までは徒歩20分だし家賃もなかなかだったので、すぐに決定した。



最近かった車でようやくアパートに着いた。




自分の部屋に入って、

少しの手荷物を置くと、



すぐに暇がやってきた。




そんな時呼び鈴が鳴った




俺の部屋のではないだろうと思い、無視していたが何度も鳴るので俺の所だとわかった。俺は急いで玄関まで走っていった




勢いよくドアを開けたせいで呼び鈴を押した人物の顔面に当たったのがわかった。



その人はどうやら男のようだった。



顔をおさえてよろめいていた。



「大丈夫…ですか??」



俺が覗き込むように聞いた。



「大丈夫やから…気にせんといてや…いてえ…」



そう言って男は顔をあげた。

羨しい程整った顔の関西人だった。



「あの…ちょっと運ぶん手伝ってくれへん??俺一人じゃ無理そうやから。」


仕方なく俺は男の手伝いをする事になった。


男の部屋は俺の隣だった。



男が運んで欲しいと言ったのは大きな箪笥だった。



俺は男と協力してなんとか部屋に運び込んだ。



「ありがと。もうえぇで。あっところで名前はなんてゆうん?」



親が広い心を持つ人間になれと言う意味で付けた名前…。


「弘…大谷弘です。そっちはなんていうんですか?」




「俺は華家田隆!!隆でえぇから。後敬語つかわんでえぇで。ヒロも大学生やろ?勘やけど(笑)」




笑うと余計にいい顔をしていた。



「正解。片岡大学って所だよ。」




「まじで!?俺と一緒やん!運命やん!!赤い糸や〜(笑)」




「キモい事言うなぁ〜!(笑)」



俺らはすぐにうちとけた。


簡単に…。


でも強い絆で結ばれた。




それから何ヶ月か経った。




俺はいつも通り隆と一緒に大学に行こうとした。



隆の部屋の呼び鈴を押した。




いつもはすぐにでてきて、笑いながらおはようって言うのに…。



いくら待っても隆は出てこなかった。




「隆〜?いるのか?なんかあったのかぁ??」




俺は隆の部屋の前で言った。



「うるせぇっ!ほっとけって!!」



いつもと様子が違った。


隆の罵声を初めて聞いた。



「隆?なんかあったのか??」



「だから俺はいいから先行けよ!!」



俺は腹が立って

隆を置いて一人で大学へ向った。



どうやら隆は後から大学に来ていたようだった。


そのことが余計に腹がたって、俺は一人で帰ろうと考えていた。




隆が何か話しかけてこようとしていたが…俺は気付かないフリをして一人で帰った。






『明日謝りに行こう…隆に何か事情があったのかもしれないし…そうするか…。』



そう思って俺は眠りに着いた。



夜中に隆の部屋のドアが閉じる音で目覚めた。

どうやら隆が出かけたようだった。



俺はその不自然な行動を寝ぼけていたせいか、気にもとめずにまた眠りについた。






今度は携帯の鳴る音で目が覚めた。


窓を見るとまだ外は暗かった。




俺は寝ぼけながらも携帯を手に取った。



携帯の画面には、密かに俺が想いを寄せていた瑠璃だった。




なんでこんな時間に?と思いつつ、電話にでた。




「もしもぉし?どうした??」




「ヒロ!!どっどうしよう!……私…どうすればいいの!?」




瑠璃の声にいつもの落ち着きはなくて、とにかく異常だった。


俺の眠気は一気に飛んでいった。




「落ち着け!!何があった?」



「隆が…隆が!」



隆の名前が出て来た瞬間、俺も正気を失ってしまいそうだった。




「とりあえず何処だ!?今すぐいくから!」




俺は瑠璃から聞いた場所へ車をとばした。







車が目的地についた。




救急車の赤いライトがチカチカしていた。






大きなトラックがガードレールに突っ込んでいた。







誰かが運ばれていて…




男が運ばれていて











羨しい程顔が整った男で…







華家田…隆…




言葉が出なかった。




瑠璃が近寄ってきた。




「ヒロっ…隆…がっ……うっ…」




瑠璃は泣きじゃくっていた。



でもそんな事は俺にとって既に関係なくて…

瑠璃を押し退けて隆のもとへ走った。




もう少しと言う所で



救急隊員らしき人物に止められた。




「隆!!おい!起きてんだろ!?怒ってシカトしてるだけなんだろ!?」




願うように俺は叫んだ。




でも…その願いは叶わなかった。



「残念ですが…彼はもう……。」




俺は気付くと隆の実家にいた。

黒かった。

みんなが泣いていた。


葬式だという事がわかった。


俺は涙も流せなかった。







家に着いた。



俺は一人で一点を見つめていた。



何故涙が出ないのだろう?




悲しいのに…。




いや…悲しすぎるから……脳が起きてくれないのだ。




一週間が経った頃だと思う。



あれから何も食べていない。



眠ってもいない。




ポストから手紙が来ていた。




しかし見る気もなかった。




トイレに行きたくなった。




何も飲まないとは言っても、体の循環で尿意はくるらしい。



トイレから出た時手紙が目に入った。




俺は懐かしい文字に言葉をなくした。




『華家田隆より』




俺は意外にも冷静に手紙に手を伸して開いた。




『ヒロへ』



隆との思い出が巡った。



『これをお前が読んでる時には俺は死んでるんやろな。大切な人を守るためや。』




瑠璃か…。



隆は瑠璃が好きだった。


俺はそれに気付いていた。

あいつに勝つ自信はなかったから…俺はこの想いを隠していた。



瑠璃も隆といつも楽しそうに喋っていたから…諦めていた。




『あのな…今までいえんやったけど……信じれへんかもしれんけど…俺人の心の声が聞こえるねん…。聞きたくなくても…いつも聞こえた。…苦しかった…。』




俺は隆が苦しんでいる事に気付いてやれなかった…。




『みんな嘘付きや…心と違う事を言って生きてた。それが普通なんやろうけど…醜い心の声がよく聞こえた…。でもお前は違ったんねんで。面白いくらい素直やった。俺はヒロが羨しかったよ。』




俺は隆が羨しかったよ。



その力がじゃなくて…




隆自身が羨しかったよ。




『でもお前が瑠璃と居る時だけはお前も嘘つきになった。お前もアホやなぁ(笑)遠慮なんてせぇへんかったら俺も楽やったんに。お前の嘘はある意味苦しかったで(笑)』




悪かったな(笑)




『後はお前が守ってやれよ…瑠璃の事幸せにできんやったら俺呪うからな(笑)』



そりゃ困るな(笑)



『あっあん時俺が怒ったんはな…あの日お前が死ぬ映像が見えたんや…。俺な…死が近い人の死ぬ瞬間と時間が見えるんや…。俺と大学行ったらお前は確実に死んでた。俺が橋から落ちて溺れてるのを助けようとして、お前は飛び込んだ。カナヅチのクセにアホやな(笑)んで俺を助けた後にお前は溺れて死んだ…その映像が見えた。やから嫌な態度とったんやで。』




すごい奴だよ…お前は…。



『安心して大学行ったら瑠璃の死ぬ時が見えた。トラックが瑠璃に突っ込んでいく映像が見えた。悩んだんねんけど…決心したよ…俺は瑠璃を守る…俺が消えたって構わない。』




隆…ズルイよ…。




『ありがとな…隆…。俺忘れへんから…』



こっちこそ忘れるかよ。



『これが最後じゃねぇからな。俺生まれ変わってもお前の側にいるから。そん時まで待っといてな…。絶対やで!!』



分かってるよ…何十年だって何百年だって待っといてやるよ。




『じゃあな…お前がいて本当に良かった。瑠璃は頼むぜ。』




あぁ…










『ヒロ…お前最高やで!!


隆より』







俺は泣いていた。




何かが崩れた。




涙はプライドをなくして溢れてきた。




隆はもういない。






でも俺は待つよ。


帰らない人を…




いかがでしたか??これのその後ってのを作ろうと思っています。(笑)

最後まで読んでいただいてありがとうございます(´▽`●)

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