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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第1章 私と王様
9/70

トラウマと私




あれからルインさんにお姫様だっこをされて辿り着いた場所は何とも雅な場所だった。


トンネルと抜けるとそこは正に平安京の貴族の屋敷のような立派な木造建築の建物


どうして先は洋風だったのに此処は和風??


でも日本でもホテルと旅館があるんだからこういうのもアリかもしれないと納得しておく

だけど私が通されたのは離れのようだけど、実家の5LDKの家より遥かに大きな建物で通って来た庭も正に日本庭園……もしかしてタイムスリップ?? にしては金髪やモスグリーン色の髪は可笑しい


ルインさんに色々質問したくても言葉が通じない


折角おしゃべりしたくとも話せないなんてストレス


こういう時は甘い物が食べたい。


さっきの食事にはデザートが無かった…そう言えば非常持ち出し袋に氷砂糖が入っていたっけ…?? あれ?? あれれ~?!


しまった!!


私は大変な事を忘れていたのに気付く、あの中にはビニール袋で封印した物があったのを

「キャー ルインさん降ろして下さい! アレを見られた大変なんです!!」


『 ドウサレタノデスカ、ミユキ様? 」


綺麗な黒光りする床に降ろされると、脱兎の如く外に飛び出し非常持ち出し袋を捜しに行こうとして気付く


元いた場所が分からない……


そもそも此処が何処なのかすら分からない状況で捜しようが無い


多分落ちた時に木に突っ込んだ時に枝に引っかかったんだろう


私はその場にへたり込んでしまい一気に気分はブルー


「ウッウェーン もう嫌! 何が悲しくて自分の汚物を捜さなきゃなんなのよ~ ウッウゥ…… こんな所嫌… 家に帰りたい! 此処は私の世界じゃない…… ヒック ヒックエェーーーン エンエンエンーーーー」


私は恥ずかしい事に子供のように泣いてしまう


もう訳の分からない状況にパニクリ一度泣いて不安を吐き出すしかない


泣いてやる!


泣きじゃくる私にルインさんは優しく抱きしめてくれるとDカップの胸に丁度顔を埋める位置


これは中々気持ち良いかもしれないと泣きながら顔を擦りつけ感触を楽しむ


せめて私も此の半分でもあればと思うとまた悲しくなり涙が出て来る。


『 ミユキ様 ソンナニ泣イテハ私モ辛イノデ泣キ止ミマショウ 』


ルインさんが優しく慰めてくれて背中を撫でてくれるけど、言葉が分からなくて又悲しくなりまるで涙のスパイラル


「ヒィ~~ン 涙が止まらない うえぇ~~ん え~ん 」


久しぶりに大泣きしたせいか止め方が分からない


そこに又してもあいつの声が外から聞こえる。



「ミユキ~~~ 」


しかも私の名前を呼んでいる!!??


するとピタリと涙が止まる。


心身共に傷ついているのに又あんな行為を強いられて堪らない


思わずルインさんにしがみ付く


「匿ってください! あいつは強姦魔なんです!」


多分知り合いなんだろうけど、あいつは女の敵…ルインさんも私の表情で嫌がっているのは分かっているはずだ。


『 大丈夫デスヨ 陛下ハ ミユキ様二 危害ヲ加エル事ハアリマセン 』


何か言いながらニッコリ美しく微笑むルインさんに同性でありながらも見惚れてしまい、お姉さまと呼びたくなる。


ポッ/// なんか惚れてしまいそう


怪しい気分に陥っていると等々あいつが床をドッドッドッドッドッドッと鳴らしながらまるで般若のよな顔であの長い髪を引きずりながら迫ってくる。


「ヒェ~~~ 怖い、私殺されるの?? 」


ルインさんは怯える私を背後に隠してくれるどころか前に突き出す。


おい! 助けてくれるんじゃないの~~~?


今ままでの優しさはなんなのよーーーーーーーーー


どんどん迫ってる麗しい顔だが、表情は険しいし5mもある金髪の長い髪を引きずる姿は怖い


後50㎝の間合いの時に強姦魔は突然動きを止め私を凝視したのでチャンスとばかりに頬を張り倒す。


バッチ―ン


「あんたなんか大っ嫌い!! 側に寄るな」


あいつは真っ青な顔になり信じられないような顔になる。


思い知ったか、平凡を舐めるな!


これだけの芸術的に美しい顔を打つなんて美への冒涜に感じるけど、きっと私が初めて


私の処女とこいつの顔を打つ事を秤にかけたら他人はこいつに同情するだろうけど、人間は平等! 


「幾ら顔が良いからどんな女でもあんたに抱かれたいと思ったら間違いなんだからね!このすっとこどっこい!」


「ミユキ… 」


情けない声で私の名前を呼ぶ、だけど私はこいつの名前すら知らないし、一体どこの誰?って感じでムカつく!!


「私に名前すら教えないで、私の名前を勝手に呼ばないでよ!」


するとハッとした顔になる。


「済まなかった… 許してくれ… 」


そう詫びると、男の海のよう蒼い目からまるで水晶のように美しい涙が零れる。


普通ならこの美しい涙を見て全ての人間が許してしまうだろうけど、私のトラウマが発動する。


忘れもしない中二の時だった。栄子ちゃんと久しぶり同じクラスになったのが運の尽き、更に可愛さを増した栄子ちゃんは学年のアイドルに登りつめ、休み時間には他のクラスの男子が見に来るぐらい。 一方私は其の辺の女子中学生だけど友達と普通に学校生活をエンジョイしていた。 中二となればお年頃、私にも片思いだけどクラスに好きな人が出来て色気ずいていた。


しかし幸せは続かない、それは文化祭準備中に起こる…床で劇の背景の絵を描いていたので、筆を洗うバケツも側に置いてあった。それを栄子ちゃんが誤って倒してしまったせいで、私も水を被った上に絵まで水浸し…思わず涙ぐんでしまうと栄子ちゃんが大きな瞳を潤ませポタリポタリと真珠のような涙を零し泣きはじめる。「ごめんなさい…深雪ちゃん…わざとじゃないの…許して…」この状況で怒る訳にもいかず良いのよと言おうした時、憧れの矢沢君が間に入って来て「泣いてるだろ! 許してやれよ!」私の涙は綺麗にスルーされてしまい栄子ちゃんを慰める矢沢君!! 好きだった男子は栄子ちゃんが好きだったらしくその後付き合う事になった二人!私はずぶ濡れな上に悪者にされ、苦い失恋を味わい踏んだり蹴ったり、涙は女の武器なんて嘘っぱちだと思い知った日だった。


今目の前でハラハラと泣く男の顔が栄子ちゃんの泣顔に重なる。


ムカつく!


心の狭い人間と言われようが私は許さない


私はこいつに強姦された被害者


栄子ちゃんの時も私が被害者であって、決して加害者では無いのに被害者と加害者の立場が逆転してしまうのは不条理よ!


美形は正義なの!!


「男のくせに泣かないでよ! 泣けば皆が許してくれると思わないで!」


男はそれを聞いてビックリとしてから、慌てて袖口を涙を拭う姿が少し可愛いと思ってしまう。


はっ! いけない見た目で絆されたら負けよ!


これだから美形は油断ならない


「私はルインさんにお世話になるから、私に付き纏わないで! 行きましょルインさん」


何故か笑いをこらえているルインさんの手をとり奥に入って行くのだった。











ミユキを連れ去られ逆上した余は丞相の神気を辿りながら瞑道を開けて急いで追いかける。


以外にも後宮では無く丞相の屋敷のようなので一安心する。


しかし何故自宅に???


はっ!!


まさかミユキのあまりの可愛さに自宅に囲う気か!!


「ミユキーーーーーーーーーー 」


丞相めーー 妻がありながらミユキを愛人にしようなど


しかも気配がするのは本宅では無く離れ


囲う気満々ではないか!!!


離れに入り廊下を突き進むと丞相に抱きしめられている。


しかもその顔は泣きはらしたかのように瞼が腫れており、丞相に手篭めにされそうになったに相違ない!!


一気に詰め寄り丞相に攻撃しようとすると、卑怯にもミユキを自分の前に突き出す。


「うっ! /// 」


目の前に跳び込んできたミユキの姿は正に可愛い花の精霊のように愛くるしい装い


そのまま抱きしめようとするとミユキが泣きながら余の顔を平手打ちにする


バッチ―ン


「あんたなんか大っ嫌い!! 側に寄るな」


ガ――――――――――ン!!


完全にミユキの言語を理解した余には、まるで静止の術がかけられたように時がとまる。


「幾ら顔が良いからどんな女でもあんたに抱かれたいと思ったら間違いなんだからね!このすっとこどっこい!」


「ミユキ… 」


「 あんたの名前すら教えないで、私の名前を勝手に呼ばないでよ!」


そう言われ、始めてミユキに自分の名前や素性すら知らせていない事に気付く


「済まなかった… 許してくれ… 」


余はあまりにもミユキの意志を蔑ろにしてきたのかもしれない


名すら知らない男に突然襲われたら誰もが嫌なのは当たり前だと今さらながらに気が付く


ミユキに嫌われていると思い知り絶望感が襲い


両親が死んで以来の涙が頬を伝う


しかしそれは更にミユキの癇に障ったようで更に怒鳴られる。


「男のくせに泣かないでよ! 泣けば皆が許してくれると思わないで!」


確かに男のくせに泣くなど女々しい……


急いで袖で涙を拭うが、どうすればミユキに許して貰えるのか考えねば


今まで他人の機嫌などとった事が無いのでどうすればミユキに好かれるかなどとんと思いつかない


「私はルインさんにお世話になるから、私に付き纏わないで! 行きましょルインさん」

そして無情にもミユキは振り返りもせず余の前から丞相の腕をとり立ち去って行く


その代わり丞相が振り返り声をかけて来る。


『 陛下、ミユキ様ノ事ハ 私ニオ任セ下サイ。 必ズ私ガ ミユキ様ノオ心ヲ陛下ニ向クヨウニ致シマスノデ。 ミユキ様ガ落チ着イタラ王宮ニ戻リマスカラ、王宮デオ待チクダサイ 』


余裕の笑みでそう言う丞相


癪だが今のままでは嫌われるばかり……丞相に任せるしかない


懐からミユキが着ていた服を取り出しミユキの代わりに抱きしめて匂いを嗅いで寂しさを紛らせる……


余にはどうしていいのか分からず、取敢えず王宮で大人しく丞相を待つしかない


ミユキに出会い、生まれて初めて知った喜びは一気に苦悩に変わってしまったのだった。









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