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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第3章 弟襲来 
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異世界トリップ六日目その2




部屋でまったりとチョンルイとお茶を飲んでいるが俺にベッタリとくっ付き膝に乗り離れようとしない


これ程懐かれるのは悪い気はしなが少々うっとおしいのも事実


「チョンルイは何時も何してるんだ」


「王様になるお勉強」


「へーー 凄いな…… でも王様の子供じゃないのになれるのか?」


「もう決まっているの」


この世界の仕組みを分かっていない俺には子供の戯言だろうと聞きながす


「チョンルイが王様になったらモテモテで後宮に綺麗な女の子が一杯集まるんだろうな」

羨ましいぜ、畜生!!


大人になれば黙っていても女が群がりハーレムを形成してしまうの間違いない


「いらない」


「へっ?」


「女の子はあの子だけでいいの」


「おっ 小さいのにもう好きなの子がいるのか。 どんな女の子だ」


小さい頃は純粋だから一筋なんだろう


大きくなって女を知ればとっかえひっかえし出すのが男


恐らく女がほっておかないだろうしな……俺なんか誰も構ってくれないのに


糞!!


未来のチョンルイに嫉妬しそうだ


「とってもとっても可愛いの でもケントちゃまも可愛いから好き」


「いやいや俺男だから……  それより今度その子を紹介してくれ」


お姉ちゃんが居れば紹介して欲しいが姫様みたいのは嫌かも


いや俺もマッキーさん一筋…だが 目の保養に見たいだけだから


「ダメなの まだ生まれてないから」


しょんぼりと悲しそうに目を伏せる


生れてない????


あっ! あれか


友達のいない小さな子が空想の友達をつくる様に好きな子は生まれていないという設定の妄想


成程……弟もいるようだから母親も下の子に構い寂しい思いをしてるのだろう


「そっか 早く生まれると良いな」


そう言って頭を撫でると


「うん!」


嬉しそうに頷く天使の様なチョンルイ


そうやって二人で和んでいると



「チョンルイ!!」


「!!」



突然聞こえてくる少し怒ったような声


扉も開いた様子もないので普通は驚くがここでは普通な現象だ


声のする方を見ればやっぱり美形が立っている。


どうせなら女の人が良かったのにと内心思わずにはいられない


「お父しゃま!」


チョンルイはそう言い俺にしがみ付いて来る。


想像通り父親 流石にチョンルイのお父さんだけあってインテリー系の怜悧な顔立ちの美形で深緑の長髪にお洒落な白いメッシュが入っており瞳は緑で見た目は三十前後だろうか

どうせならお母さんの方が迎えにくれば…


美形でも男とばかり出会っても虚しい俺



お父さんは軽く我子を睨みつけてそれから俺を見る。


「お初にお目にかかりますケント様。 私はこの国の丞相を務るルイングゥイと申します。 この度は我愚息が御迷惑をおかけし申し訳ありませんでした」


深々と頭を下げるお父さん


「いえ こちらこそ姉が御迷惑をおかけしてます」


すると驚いたような顔で俺を見るが薄っすらと頬笑み


「とんでもない。 ミユキ様のお陰で陛下は王の務め確り勤めるようになり助かっております」


「そうなんですか? 俺ここに来て間もないので情勢に疎くって」


「暫らく滞在なさるならそのままで宜しんではないでしょうか」


「は…ぁ」


なんだろう…あまり歓迎されていないような気がする。


気のせい?


「それよりチョンルイ、勝手に屋敷を出るなど言語同断。 アンチョンがこの事を知れば悲しんで寝込んでしまいますよ。 さあ知られない内に帰るのです」


「やなの。 ケントちゃまといる!」


そう言って俺に更にしがみ付くがその力が半端無く強い


むぎゅ~~~う


くっ苦しいーーー 


「チョンルイ! まさか…?  ……ならば尚更 引き摺っても連れ戻します」


苦しんでいる俺など眼中にないように父親は愕然としたようにチョンルイを見やるが意を決したように動き出す。


実力行使で連れ帰ろうとしているのは賛成だけどチョンルイは更に俺にしがみ付き俺の肋骨は軋んで折れそうだぞ!!


誰かヘルプーーーーミーーーーー


息が詰まって声が出ない俺


父親はチョンルイの腕をとろうと手を伸ばすが


バシッーーーーーィ


何かに弾かれるように手に火花が飛ぶ


「っ痛!」


痛みで顔を歪め見れば指先から血が出ていおり何が起きたのか分からないがチョンルイが力を使ったのだろう


俺は思わずなんとか動かせる手でチョンルイのホッぺを引っ張る


あくまでも軽く


しっかし羽二重餅のように気持ちいい触り心地


すると驚いたように俺から手を放し呼吸を復活させる俺


そんな俺の顔を真っ青な顔で見上げるのだが


「こら。お父さんに怪我させたら駄目だ 態とじゃないだろうけど謝れ」


悪い事をしたら怒らないと


「ケントちゃま…」


涙ぐむチョンルイ


姉ちゃんが見れば何でも許してしまう事間違いなしだろうが俺は男


「理由はどうであれ人を無暗に傷つけちゃいけないだろ。 王様になるんなら皆に優しい王様にならなくちゃ」


「あい 」


「ほら お父さんにチャンと謝れ」


俺は膝からチョンルイを降ろして父親の前に立たす


「お父しゃま ゴメンなさい チョンルイは悪い子でしたの」


可愛くペコリと頭を下げ素直に謝る。


父親もそんなチョンルイに俺に向けた笑みと違い優しい笑みを浮かべながら抱き上げ目線を合わす。


「父も少し厳しかった。 初めてアンチョンと離れ寂しかったのかい」


コクリと頷く


「…それにお母しゃまいないと皆がしゃわって嫌なの」


「!…… そうなのか。 しかし今日は夜までアンチョンも戻れないし後宮に連れて行けば陛下の悋気を買う」


なにやら悩み始める


「ケントちゃまと居たいの ダメ? お父しゃま…」


「お前が陛下の様になるのではないかと心配なのだよ…… よりによって何故ミユキ様の弟君なのだ」


それはどういう意味でしょうか?????


訳が分からん


「良い子にするから お願いなの」


甘えるようにねだる


「はぁ… 仕方がないね… アンチョンが迎えに来るまでだよ」


「お父しゃま大好き!」


父親の首に抱きつくチョンルイ


そして目尻を下げてデレる父親だったが俺を見やると冷たい眼差しを向けながら


「そう言う訳で夜までチョンルイをお願いしますケント様。 変な気は起こさないで下さいよ」


変な気って俺は巨乳好きで変態じゃない!


幾ら天使の様に綺麗だからといって幼児を普通襲うか??


「それあり得ませんから。 子守りっていうか決定事項??」


「呈州のミョンミョングゥイ姫の件では色々を苦労をしました……」


そう呟く父親


エッ!? この人が処理してくれたのか でもそれって俺の所為!?


うっ… 確かに俺が持ち込んだ厄介事かも


「分かりました。チョンルイはお任せ下さい…」


ああぁ…… 午後はビーターさんに剣を教えて貰う予定だったのに


子守りかよ…


なんてついていないんだ新年からーー 一層の事不貞寝したい


「ケントちゃま!」


俺に反して嬉しそうに俺に飛び付いて来る可愛いチョンルイ


しかし父親の俺を見る目は一瞬忌々しげに睨んだ


ゲッ! 怖いんですけど~~~~


もしかして我子が自分より俺に懐くから嫉妬??


そして薄ら寒い笑みを浮かべ


「あまり手の掛からない子などで宜しくお願い致します」


そう言い残し黒いトンネルが出現するとそのまま吸い込まれるように消えて行ったのでホッとする。


しかし……


「遊びましょ」


そういて俺に擦りつくチョンルイ


なんか俺って子供受けするんだなと知り、コレをマッキーさんにアピールすればイメージアップ間違い無しだと思うのだった。










我息子チョンルイが屋敷を抜け出しあろう事か離宮に行っているなどまさに青天の霹靂


そもそも結界で護られたあそこに入り込めるはずがないが一つだけ可能なのは瞑道を潜ればいいい


つまり既にチョンルイは瞑道を駆使する事が出来ると言う事だ


孵化して生まれて今だ一歳に満たないと言うのに二月であそこまで体を故意に成長させてしまい慌てて止めたが諌めなければ十歳近くの体にする心算だったらしい


『チョンルイ急激な成長は神核と精神を歪めるから止めなさい。 一体どうしてそんな事をしたのだ?』


『ゴメンちゃい ミュンちゃんを抱っこしたかったの』


あまりに可愛い理由に思わず心が和むが


まだ卵の弟を心から可愛がっている兄らしい言葉


『その体で十分だからこれからは自然に任せて成長するんだよ』


『はい お父しゃま』


あまり我儘を言わない素直な息子。日々立派に成長して行く姿が楽しみで堪らないが


成人すれば陛下を凌駕するのが容易に想像できる。


神力が高いのが幸せとは限らないのを陛下を見て知っている私には不安でならない


この子が心に闇を抱えてしまった時にこの子を救えるのだろうか


世話をさせる者も慎重に選んでいるが殆どの者がチョンルイを見ると心酔し厄介な事になってしまい女も男も関係なく性愛の対象の目で見る不届き者まで出る始末


常にアンチョンが付き添い目を離せない状態で今日は新年の儀の為どうしても屋敷を空けねばならずやむなく一番信用のおける侍女に任したのだが


何があったのだろうか


ただ単にミユキ様に似ている弟君に興味を持っただけだと思うが


しかし失敗だった。チョンルイの前で弟君の話を洩らしたのは


その時点では何の興味を示していなかったはずだ。


子供所以の気紛れか


瞑道の出口を出ると男の膝の上で嬉しそうに無邪気に笑っているチョンルイ


私達家族にしか見せない愛くるしい笑みは衝撃だ


賢いあの子は自分が他者に与えてしまう影響を十分わかっており世話を受ける侍女には決して心を許さず無表情に徹しているのに


嫌な予感がする。


チョンルイを膝に載せる少年はミユキ様に良く似た普通の顔立ち


益々不安が募る


そして不安は現実となってしまう


ケント様に並みならぬ執着を見せる我子に眩暈が


せめてもの救いはケント様がチョンルイを普通の子供として扱う事だろうか


無理やり引き離そうとすると神力で拒絶されてしまい父親として悲しみが襲うがそれどころでなくなる。


あろう事か弟君は私の愛する息子の頬を引っ張ったからだ


おのれ!!


穢れない新雪の様な美しい肌に痕が残ったらこの世から抹殺だーーーー


しかしチョンルイは弟君の言葉を素直に聞き私に謝る姿のなんと愛くるしい


そしてここに来た理由の一部に世話を任せた侍女にも問題があったようでチョンルイを任せるのが総計だった。


チョンルイは他人に触れられる事を極度に嫌がるので決して触れるなと言い付けておいたのに長年勤め信頼する侍女ですらチョンルイの美しさに惑わされてしまう


困ったものだがチョンルイから滲みだす美しさも人を引き付ける魅力も消しようがない


誰もがこの子を欲しがる。


しかしこの弟君はどうであろう……チョンルイの事を普通に扱うどころか少々ぞんざい


それなのにここに居たいと望むチョンルイ


だが一番安全であるかもしれないと思い直し子守りを頼むとあろう事か迷惑そうな素振り!


許せん!!


こんな愛くるしいチョンルイを拒否するとは!!


信じられない少年だ!


なにしろこちらは色々迷惑を被っている身


少しは働いて貰わねば


フーラングゥイの報告では問題の無い性格らしくあの陛下にも気に入られておりミユキ様の側にいる事を許させたただ一人の男


陛下が気に入らなければ例えミユキ様の弟君でも男を同じ屋敷に住まわすなどあり得ない事


私の可愛いチョンルイにすら殺意を向けるのだから


あんな冴えない凡庸な少年など何処がいいのだ??


全く陛下にしろチョンルイにしろ趣味を疑う事甚だしい


理解出来ない


それとも私には気付かない魅力があるのだろうかと考えるがさっぱり分からず無駄な思考を打ち消す。


取敢えずは新年の儀を滞りなく終わらすのが先決


瞑道を進みながら陛下の着替えが済んでいる事を切に願うのだった。










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