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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第3章 弟襲来 
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新年の儀の始まり





新年を迎えた王宮では多くの主だった亀族達が新年の儀に参列する為に朝早くから集まって来ているが今年は王妃様のお披露目も行われる為に亀族達は贈り物の大きな箱を持参して賑わっているのだったが、今だ王宮を取り囲む巨大な壁に沿うように亀族の豪華な馬車が列をなして入場を待ちかねているのだった。


後宮では王妃であるミユキを磨き上げるのに余念がない


朝目が覚めると同時に沢山の料理が待ちうけていた。


「お昼は食事が出来ませんので今の内にお食べ下さい」


マッキーに給仕されながら取敢えず詰め込めるだけお腹に納めて満腹にしてから次は何時ものように風呂に入りフーランが普段より念入りに洗われて髪にはタップリの香油を撫でつけられてしまい辟易


香油は香りはいいけど少しべた付くのが嫌い


だけどこれを付けないとくせ毛の私は髪が広がり大変なのだ


そして洗い終わると一重の白い着物だけを着せられ別室に移されると大きな鏡の置かれている部屋で見知らぬ人間が待っていた。


昨日から後宮に入ったのだけど相変わらず侍女はフーランとマッキーだけ


他の人間の影すらないのだから今が初めて他の人間を見るから嬉しい


「王妃様 お初にお目にかかり光栄で御座います」


頭を下げたままなので顔は分らないが髪の色は茶色の中肉中背の女性だ


「貴女が私のお化粧をしてくれる化粧師さん。お名前は?」


「下賤な人間の身なのでお許しを」


人間が下賤なら私もそうなんだけど


しかしそんな事を突っ込んでも相手は困るだけなのでスルーしておく


「そう でも取敢えず顔を見してくれるかしら」


「はい」


女性は恐る恐る面を上げるが目は伏せられて視線を合わせないまま


本来私はここまでかしこまれる人間でもないのに王妃とは人を遠ざけてしまう立場だからと諦める。


化粧師さんを見れば確かに茶色の髪に緑の目でごく普通の二十代の女性で地味目だが細面の凛とした顔立ちでしかもスッピンで驚く


「化粧師さんて化粧はしないものなの?」


「はい 私めが化粧をしては相手に白粉や紅、香りが移る不手際が起こるかもしれませんので ご不快でしょうが御寛容下さいませ」


「そうなんだー 流石プロって感じだわ。それじゃあお願いするわね」


「滅相も御座いません。 ただ命じて下さればいいのです」


「そう」


取敢えずフーランに促され用意されている椅子に座り目の前の鏡に映る自分を見る。


この世界に来て確実に肌と髪は艶やかに綺麗になったのを実感


毎日フーランがお手入れしてくれるお陰


しかし顔の造作はあまり変わっていないのが悲しいところだが化粧師さんの顔を見た所為か何時もよりは普通に眺められるな~と


なにしろ普段からとびっきりの美形ばかり眺める毎日で鏡は直視しないようにしていた。

最近では健斗が来たから少し目が休まるが


「そう言えば 健斗はどうしてるかしら」


「弟君様は離宮でお寛ぎ戴いていますが人手不足でご不自由をお掛けしております」


「あの子はほっといても大丈夫だけど時折マッキーに様子を見に行かせて」


本当は健斗も連れて来たかったがルインさんに反対されてしまった。


昨日久しぶりに会ったのだがこれ以上の余剰の人員は割けないので無理だと言われしかも『次に弟君がどこぞの亀族に誑し込まれても面倒見ずに切り捨てますからね』と脅されてしまった…桜花姫の件で余計な仕事を増やしたのを根に持っているようで鬼気迫るものがあり大人しく従う


なにしろ少しやつれてたし、前髪の白髪が増えているのが憐れさを醸し出し苦労がしのばれるので健斗には悪いけど離宮で大人しくして貰う事にする。


せめてものお詫びにマッキーの顔を見せてあげようと思ったのだが


「それならば私めが行かせて貰います」


「え~~ マッキーがいいんだけど」


「警備への指示も御座いますので」


「そお… 」


可哀想だがフーランにそう言われれば仕方ない


「お話は後ほど さあ王妃様に化粧を」


「はい」


化粧師さんはフーランに指示されると既に並べてある化粧道具を手に取り化粧を始めるのだった。








「終わりました。どうぞお確かめ下さいませ」


化粧師さんが恭しく頭を下げて後方に控える。


そして鏡には今まで見馴れた自分では無く別人が映っていた。


コレは誰??


と思うくらいの可愛いらしい女性がいた。


私の目ってこんなに大きかったの


鼻も気の所為かスッと鼻筋がとおっており、ぼってりしている唇も小さく見えるから不思議


流石にマッキーには遠く及ばないが人間レベルでは十分可愛い!


しかも髪も結って貰ったのだけど凄い


まるで花弁が垂れ下がる様に結われ真直ぐな付け毛が背中を覆っており頭上には宝石がちりばめられた金の冠


まるでお姫様… いや王妃なんだけどそこまでの威厳はないな……と自分を冷静にみると溜息がでる


「はぁ……」


「申し訳ありません。お気に召さなかったのでしょうか」


化粧師さんが真っ青になりながら平伏する。


「違うの 化粧師さんのお陰で今まで生きて来た中で最高に綺麗にして貰ったわ。ありがとう」


「滅相も御座いません」


「でもこれなら、あの絵姿より断然可愛くなってるから少しは評判上がるわよねフーラン」


「はい 陛下は特に見惚れられお喜びになるでしょう」


「そうかな」


「衣装を召さればもっとお美しくなりますから」


「そうね」


主に衣装が人の目を引くだろう


だが今日の衣装は割かし地味目


真っ赤な生地に色とりどりの宝石が花の形でスパンコール並みにびっしりと縫い付けられておりキラキラと輝きある意味私の顔が霞も程


きっとド派手な内掛けが金の冠を乗せて歩いているようにしか見えないだろう


これがどうして地味なのか


明日のパレードの衣装はもっと凄まじいく着ている私の目が痛くなるくらい


まるで紅白歌合戦の小林○子


いいのよ所詮王妃なんて見せものなんだからと開き直っている。


フーランと化粧師さんが手伝い衣装を着せてくれるが化粧師さんは衣装の重さに四苦八苦して汗をかく始末


王冠と衣装だけで確実に私より重い


普通で考えれば歩けないがフーランが風の精霊の補助を掛けてくれるので王冠と内掛けが僅かに持ち上がり重さを感じなくしてくれる。そして最後に天女の羽衣の様な紗の白い布を纏うと完成


「お疲れ様です王妃様 後は陛下がお迎えに来ますので控室でお待ち下さいませ」


「分かったわ。 化粧師さんありがとう」


そう言って部屋を出る。








控室にはマッキーが何時もの地味な侍女服でお茶を用意して待ってくれており私が入って行くと


「王妃様お疲れさまでした。 とてもお綺麗です」


ぱっと朗らかに微笑み誉めてくれる。


いえいえ マッキーの方が綺麗なんだからと思いながらも


「ありがとう でも新年なのにマッキーに晴れ着の一つも着せられないでごめんね」


「いいえ 私は元は男ですので着飾る事に興味はありませんし実家にも戻れない身ですから王妃様の側にいられ幸せです」


も~~ 健気なんだから!


こんな良い娘が健斗のお嫁さんになればいいんだけど


私から健斗を勧めれば自分の意志と関係なく受け入れちゃいそうで怖いからどう攻めようか困っている。


なにしろ元男


やっぱり恋愛感情を持つのは女性それとも男性??


「王妃様 私は着替えて参りますので。 マッキーは王妃様の側を離れてはいけませんよ」


「はいフーランさん」


「フーラン直ぐに来てね!」


おおーーー いよいよフーランのカッコいい姿が拝めるなんて幸せ~~~


扉で一礼して行く姿も凛々しい


騎士の恰好をすれば益々カッコいいだろう


「楽しみだわ~~」


「はい」


「どうせならマッキーも男装して見る?」


「とんでも御座いません。私はここでひっそり控えている方が性に合っていますので」


「でも後宮なんて出会いの一つもないし寂しいでしょ。 これからマッキーだって恋をするだろうし結婚だって考えないの?」


「えっえ 私がですか!!」


意外そうに驚く


「だって女だし生理もある訳だから自然の流れよ」


「 /// 生理…… 今はまだ考えれません……」


顔を真っ赤にする初心なマッキー


初めて生理があった時――初潮を迎えトイレで卒倒しているのをフーランが発見して大変だったがその晩はフーランと二人でお祝をしてあげると複雑そうだったが嬉しそうに泣きながら感謝していた。


何でも初めて何かを祝って貰ったのだと涙ながらに話す不幸な生い立ち


桜花姫と言い亀族の親は腐ったのが多いんじゃないかしら


その点牡丹の君はまさに良妻賢母の鏡!


美人だし気立てもいいなんてルインさんは幸せだよとしみじみ思う


そしてマッキーもそう言うタイプだとみている


「そっかー でも好きな人が出来たら1番に教えてね」


「はい必ず」


そう言って微笑むマッキーはマジ可愛い


絶対に幸せになって欲しいと思うのだった。









「失礼致します」


おもむろに扉が開き入って来たのはフーラン


「きゃあぁーーーーーーーーーーー! フーラン素敵ーーーー!」


思わず椅子を蹴飛ばして立ち上がり歓声を上げてしまう


フーランの騎士姿は想像以上


日本の戦国時代の様な鎧を想像していたけど違っていた。


白いひざ丈の衣装の上に銀色のうろこ状の胸あてと肩あてが装着させ腰にもスカートのように巻かれ太いベルトには細身の剣を装備して手と足にも銀に白い模様の施された籠手と脛あてが装着されとどめにまっ白なマント


髪は上部で高く一つに結われ、額には銀のプレートに紫の宝石が嵌めこまれているだけだけの額飾り


フーランが男性なら惚れてしまいそう


「マッキー フーラン素敵だね~~」


「はい /// 」


マッキーも頬を染めてフーランに見惚れていたがその様子はまさに乙女


う~んん??


多分それは私同様にアイドルを見るような目だと思うが


マッキーを横目で見ていたのだが



「ミユキ―――――――――――!!」



つんざく様な声で思考が邪魔される。


例の如く瞑道を使うから忽然と現れるチョンマゲ


見れば金の王冠を頭に載せており王様らしい恰好だが


「おおーーーー 今日は何時にもまして愛らしい姿!! 皆もミユキのあまりの美しい姿を誉め讃える」


チョンマゲの戯言はスルーするしかないが一つ見逃せない事実があった。


「何でそんな地味な衣装なの!!」


てっきり何時もの様に趣味の悪いド派手な恰好をするのだと思っていたチョンマゲの衣装

それが今日に限ってまともなのだ


紺の地に金糸で亀の刺繍がなされた秀麗な衣装でひな人形の男雛おびなの衣装に似ているので私の衣装が浮いてしまう


これじゃあ私が派手好きなバカ女じゃない!!


「今日はミユキが主役だから余は目立たぬよう丞相に用意させた」


なにぃーー! いらないわよそんな気遣い!!


心から怒りが沸々と湧いて来るがチョンマゲに悪気が無いのは分っているからなるべく普通を装い甘えた声をだす。


「でも私…何時ものキラキラな衣装のチョンマゲがいいな~~ 駄目かな…」


チョンマゲを見上げるようにして目をウルウルさせてお願いポーズ


「 /// ミ…ミユキ~~~!! 分った! 今直ぐ着替えて来るから待っていてくれ」


来た時同様忽然と消えて何処かに行ってしまう


フッ… ちょろい


これで私が一人悪目立ちしないで済むと胸を撫で下ろすのだった。






「相変わらず陛下のお扱いに長けてらしゃいます」


ゲッ この声はルインさん


気が付かなかったけどチョンマゲと一緒に来ていたのだろう


なんか影薄くなった?


隣を見れば何時もより一層艶やかな牡丹の君


「ミユキ様 新年を迎えましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します」


「きゃー 牡丹の君おめでとうございます!」


ルインさんを無視して牡丹の君の手をとり合い挨拶を交わすのを忌々しそうに見やる嫉妬深い夫


「今日は一段と可愛らしいですわミユキ様」


「牡丹の君も益々しっとりとした美しさに磨きが掛かってます! とても子供が二人もいるなんて思えません」


「まぁ…そんな… /// 」


ポッと頬を染められ人妻の色気が匂い立つ


「チョンルイちゃん達は?」


「残念な事にお留守番を あの子もミユキ様にお会いしたがってましたが新年の儀は成人した者しか参列できませんの」


「本当に残念だわ 近い内に会いたい」


そんなささやかな私の願いはルインさんは容赦なく切り捨てる。


「それは御遠慮願います。嫉妬深い陛下は子供といえ容赦しませんよ」


「貴方…」


「ルインさんの意地悪。 牡丹の君あっちでお話しましょ」


牡丹の君の腕をとり引く


「はいミユキ様」


壁にある豪奢な長椅子に誘い一緒に座り


「マッキー お茶をお願い」


「はい かしこ参りました」


すっかり侍女が板についてしまったマッキーは手際よくお茶を淹れ始める一方フーランは扉の前に立っていたのだが誰かが来たのか扉を少し開けて何かを受け取る。


どうやら手紙らしくそれを読むと同時にルインさんの側に慌てるように行きその手紙を差しだすのを牡丹の君と眺める。


その手紙を見た途端に顔を青褪めさせるルインさん


何かあったよう


そして深い溜息をついたかと思うとこちらを見やり


「どうやら会場で不手際があった様なので見て参ります。 アンチョンはミユキ様のお相手をしていて下さい」


「はい貴方」


牡丹の君は立ち上がり瞑道に消えて行く夫を心配そうに見送る。


私は何があったのか興味深々でフーランをみやると目礼をして扉の前に直立不動で立ってしまうので聞きだすのは諦めて心配そうな牡丹の君に声を掛ける事にする。


「牡丹のの君 お茶が入ったからチョンルイちゃんのお話でも聞かせて」


そうお願いすると母親らしい慈愛溢れる笑みを零し


「仰せのとおりに」


それから日々可愛くなって行くチョンルイの話を楽しく聞くのだった。







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