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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第3章 弟襲来 
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私と弟






一年もあと三日で終わろうとしている中、王妃であるミユキはマッキーに新年の祝賀の儀について教えて貰っていた。


「新年の祝賀の儀を陛下自ら執り行い天帝様に国の安寧を祈願した後に謁見の間で国の重臣や各州の州知事から祝賀をお受けになります。通常はそのまま宮殿の大広間に集められた亀族達に賛礼を受けた後に祝賀会が開かれて終わるのですが私は一度も参加して無いのでどの様な雰囲気かは教えられません」


「基本私はチョンマゲの横に居るだけでいいのよね」


「はい。受け答えは陛下がなさいますのでそれで宜しいそうですが、翌日には王都を馬車で祝賀の行列を執り行い、三日目には王宮での宴が催されてかなりお忙しくなります」


いよいよ王妃デビューかと思うと気が重い


何しろあの超絶に美しい夫の横に居るのは普通顔の私には一種拷問


今さらながらに自分の絵姿を事前に公表しておいて良かった。知っていればあからさまな落胆の顔を見ずに済むだろうから…


我ながら姑息だけど心のダメージは減らすのに越した事は無い・


「それと午後より衣装合わせをしたいのですが」


「うっ またあの重い衣装を着せられるの。マッキーが代わりに着て」


「滅相も御座いません。 王妃様の衣装に袖を通すなど」


相変わらず真面目なマッキー


そもそも身長は同じだけど胸のサイズが天と地の差があるからどう考えても無理だよ


「冗談よ冗談」


「王妃様 お茶を淹れますので休憩を」


「有難うフーラン」


ワゴンに乗ったお茶のセットで優雅にお茶を入れ始めるフーラン


考えて見れば二人共とても真面目で堅物


私にはもう少し砕けた突っ込みとボケが出来るような侍女も欲しいかも


最初は色んな綺麗どころを集めてハーレムでも造ろうかと考えていたのに王妃の侍女となると人選が色々難しいらしく中々新人さんが来ない。


別段人手不足ではないが少し寂しいのも事実


王妃として公の場に出る機会が増えれば面白い人達にで会えるかとその点は期待している。


そう言えば新年の祝賀の儀には深紅の薔薇の君に会えるかな?


久しぶりにあの女王様プリを堪能したい


フーランに深紅の薔薇の君の事を聞こうとすると


「ねぇ…」


ガシャ!


フーランらしく無く何故か乱暴にお茶碗を置く。


「?」


「申し訳ありません。どうやら侵入者のようですので奥の部屋にお下がりください」


「侵入者?!」


私には何時も通りの静かで何の音もしない


「マッキー 王妃様をお部屋に。 私は確認をしてきます」


「はいフーランさん」


フーランがそう指示すると疾風のように部屋を出ていく


「誰が来たのかしら…マッキー分る?」


「私も何も感じませんでした。 王妃様とりあえず奥の部屋に参りましょう」


「ねー 柱の陰から少しだけ覗きに行きましょ」


「なりません王妃様」


青い顔をして止める


「少しだけ見たら奥に行くからお願い」


押しに弱いマッキーを連れて長い廊下を渡り玄関に向かうと何やら声が聞こえて来るとマッキーはハッとしたように私を押しとどめる。


「王妃様なりません。 害をなす危険な者かも知れないのでお下がりを…」


「え~ だって久しぶりの来客じゃない。 偶には新鮮な顔を見たいわ」


本当に他人に飢えているのよ。


こんな引き籠りの様な生活は性に合わない


すると若い男性の声が聞こえる。


「姉ちゃん!! 俺 俺 俺だーーー!」


姉ちゃん? なんか懐かしいフレーズと声


「俺? オレオレ詐欺???」


まさか異世界にもオレオレ詐欺があったのかと感心していると


「姉ちゃん! 弟の健斗だーー!」


「エッ!?? 健斗!!」


健斗の名を知るのはこの世界で誰も居ないはず。チョンマゲにすら家族の事を話していないのを今さらながらに気付く


だから本当に健斗が来てる?


どうやって?


疑問は尽きないが取敢えず本人かどうか確認する為にも駆け寄るとフーランに取り押えられ土下座させられている人間は確かに黒髪だが少し印象が違う


「貴方が健斗?」


声を掛けて見ると顔を上げる男


「久しぶり~~ 姉ちゃん! 元気だった?」


声は本人の様な気がするが顔が


「 ………… あんた誰????」


「えっ????」


健斗らしき男は信じられない物でも見るように私を見るが、フーランによって苦痛に顔を歪ませる


「くっ苦し……」


フーランに首を絞められ真っ青な顔


「王妃様をたばかる不届き者! この場で首をへし折ろうぞ」


その言葉を聞いて慌てる。


「フーラン 私の前で殺生は禁止! 」


しかし止めるのが遅かったらしく男は墜ちた後で気を失っている。


「この男が健斗?」


フーランは取敢えず床に横たえさせてジックりと男の顔を眺めると小さい頃の健斗の面影が被さる。


「フーラン お尻を捲って見て」


私のとんでもない命令にも顔色を変えずに男をうつ伏せにすると何の躊躇いもなくズボンを下ろしてくれる。


う~~ん 私的には恥じらうフーランを見てみたかったのに残念


下ろされたズボンから現れたのは白いお尻で右側の中央にハートの痣が見てとれる。


こんな所にこんなふざけた痣がある人間がこの世に二人といるだろうか


いや…いないだろう


どうやら本物らしい


久しぶりの来訪客が弟だったとは!


しかも凄く痩せているので別人かと思うよ――一体何が弟を此処まで変えさせたの?


恐らくあの天帝が裏で糸を引いていそう


このままケツ出しで晒すのも可哀想


「フーラン」


「はい 王妃様」


「それ私の弟みたい。悪いけど運んでくれるかしら」


「御意」


そしてフーランが健斗をお姫様抱っこをして立ち上がるとその後ろに二人の亀族が跪いているのに初めて気が付く


「あら…… 貴方達は誰?」


ピンクの髪の少女と紫色の髪の青年


どうやら今日は退屈せずに済みそうだ。









「酷~~ 弟が分からないなんてそれでも血の繋がった姉か」


「だから何度も謝っているでしょう」


「感動の再会を期待してたのに」


ブチブチ文句を言う弟


アレから気絶した弟を運び直ぐに意識を取り戻して今は姉弟水入らずで再会にはなを咲かせている。一緒にいた亀族の二人は取敢えず別室に控えて貰い後で事情を聞く事にしている。


「だってそんなに痩せたら別人よ! あの大福のような気持ちいいホッぺちゃんは何処に行っちゃたのよ、アレを揉むのが私の癒しだったのにーー」


体型も太ってもっちりしていて私より胸がでていた弟はすっかり痩せてスマートに変貌


まるでダイエット食品の宣伝のビフォア―とアフター写真を見ているよう。


「向うの姉ちゃんが自衛隊で3年辛抱したら異世界トリップさせてくれるって約束してくれたから俺頑張ったんだ」


そう自慢げに言うバカな弟


そんな事で将来を決めるなんてばか過ぎて笑えない。


「げー ヤッパリあいつの所為なのね…… あいつは私に成り済ましてちゃんとやってるの? そもそも私じゃないって正体をばらしたの?」


「いんや~ 久しぶりに実家に来た姉ちゃんに最初俺は全く気付かないのに母ちゃんが一目で貴女は誰って? 最初は母ちゃんの何時もの遊びかと思ったんだけど『 深雪を何処にやったの、正直に話さないと刺すわよ 』 てキッチンから包丁を持ち出して振り回し始めたらあっさり認めたんだ」


母さんが……きっと野生の本能で分るのかしら?絶対母性からじゃ無いのは断言出来る。


「それで信じたの? 」


「俺と母ちゃんは信じたけど父ちゃんと兄ちゃんは最初半信半疑だけど信じた」


「どうやって」


「姉ちゃんが勤めてた会社の社長に就任したから」


「社長?? 私が?」


「違うよ…向うの姉ちゃんがだ」


どっちでもいいじゃない。ややこしいー


「どうやったら三年で女性社員が社長に就任できるのよ! 」


あそこは典型な同族経営で株を取得しようにも誰も売らないだろうし私にそんな預貯金は無い!二十代の一般社員の小娘を社長にしようとすれば他の者達が承認などするなんてあり得ない。確か社長と専務の派閥に分かれており会長が絶対権力を持っていたはず。


会長の養女にでもなった? まさか愛人!?


それでも有り得ない


どんな裏技を使ったのよ??


「向うでは五年経ってるから姉ちゃんは二十八歳だよ」


「えっ そうなの?」


それでも二十八才で社長! 世界征服されるよりはましか?


「因みに俺は二十三歳」


あんたの年齢はどうでもいいと言いたいが止めておく


「そう… あいつが家族に酷い事してないならそれでいいわ」


「酷い目? どちらかと言うと父ちゃんはリストラされたけど姉ちゃんの会社に再雇用して貰ったし、兄ちゃんは可愛い嫁さんを貰うし どちらかと言うと恩恵を受けてるよ。 まぁ……母ちゃんは相変わらずだけど」


父さん… 一応一流企業に勤めうだつの上がらない万年課長だと思っていたけど…日本経済はかなり切迫しているのかも


それより兄さんが結婚か~昔から結構モテル人だった。


「兄さん結婚したんだ~結婚式出席したかったな」


「ああ 羨ましいくらい可愛いお嫁さんで今度赤ちゃんが生まれるってさ」


「私もとうとう伯母さんか~」


一度お嫁さんと赤ちゃんに会いたくなる。


などと話をしているとマッキーがお菓子とお茶を持って来てくれる。


「失礼します」


そう言って入って来たマッキーを見た途端顔を真っ赤にさせる健斗


そして食い入るようにマッキーの胸を見る目は既に血走っている。


我が弟ながら分り易い――マッキーは、もろ健斗のストライクド真ん中だから仕方ないだろうけど


マッキーが健斗を好きになる可能性は無いだろう


何せ元が男性だし


お菓子とお茶を出すのに側に来られた途端に体を固くさせ微動だにさせず顔は更にゆでダコのように赤い


この様子では今だ童貞だな


自衛隊なんて女気なさそうだし


「マッキー 弟の健斗よ。 暫らくこっちにいるみたいだから宜しくね」


「はい王妃様」


それからマッキーは健斗に向き直り微笑みながら挨拶をする。


「私は王妃様の侍女を勤めますマッキーグゥイと申します。 健斗様宜しくお願い致します」


すると突然立ち上がって敬礼をして挨拶を始める。


ガバ!!


「私は橘健斗 二十三歳独身 以上です」


それだけ言うと直ぐに着席して相変わらず顔を紅潮させて固まっている。


面白い!


面白すぎる弟に心の中で大爆笑


戸惑うマッキーに声を掛ける。


「だそうよ。 それよりあの亀族の二人を連れて来て頂戴」


「はい王妃様」


そう言って部屋を出て行くや否や


「ねっねっねっねっねっねっ姉ちゃん…… マッキーさんに夫とか恋人はいるの!!??」


「いないわよ」


「そっか~~~~ /// 」


今弟が考えている事がありありと分ってしまう


やった! 俺のハーレム構成員だ ロリ顔巨乳娘は絶対に俺の嫁にするぞ~~


などと妄想している。


この分だと異世界トリップすればハーレム野郎になれると今だに信じているのは間違いない。


今だに夢見る少年らしい困った弟を眺めるが、この世界にやって来る根性だけは認めてあげよう。


ハーレムは無理だろうけど一人くらい捕まるだろう


まっ……私の方は捕まった方だけどね。


童貞の弟に恋人が見つかる事を切実に願うのだった。




せめて脱童貞?






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