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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第3章 弟襲来 
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異世界トリップ三日目その二






湖を回り込むように走らせて行くと大きな木造の門が見えて来る。


そしてその両脇を守る様に厳つい鎧を着た屈強な兵士が立っており、俺達を確認すると長い槍を突き立て静止するように促す。


「お前達は何者だ! 此処を王妃様の離宮と知っての狼藉か」


「許可無き者は直ぐに引き返すが良い!」


怖えーーーーーーーー!


きっと俺なんて息を吹きかけられるだけで吹っ飛びそうな程の大男達


まるでオンラインゲームの武将キャラ張りにカッコいい!


何食ったらあんな立派な体になるんだ?


小柄な俺には羨ましい……あんな屈強な体なら男に襲われずに済むんだろうか


だが今時は筋肉ムキムキはあまりモテない


俺のように細マッチョが受けがいいのだがそれを披露するチャンスが一度もなかったのが悲しいぜ


しかしこの世界ではきっとその機会が訪れるはずだ!


「妾は呈州の州知事の娘ミョンミョグゥイ。王妃様の弟君をお連れ致したのでお目通りを願いまする」


姫様は馬上から衛兵に視線を合わし臆することなく堂々とした口上を述べる。


俺なんか姫様の後ろで衛兵達の眼光にビビって陰に隠れたい衝動にかられるが男として何とか視線を外して堪えていると


「王妃様の弟君だと!! このうつけどもめ」


「王妃様の弟君を騙るとは 何たる大罪! この場で討ち取ってくれよう!」


ひぇーーーーーっ やっぱ信じね


「黙れ!! このお方を良く見るがよい。 王妃様と同じ黒い髪に目に顔立ち よく吟味致せ」


グイ!


そう言って俺の襟元を掴み顔を前に突き出させるお姫様


その途端、恐ろしい眼力で俺を睨みつける衛兵達


「「 …… 」」


あまりの恐ろしさに涙ぐむ俺


信じて貰えなければ殺されるのか~~


衛兵達は少し離れてこそこそ二人で話し合う


通して貰えるんだろうか?


暫らくすると一人がこちらに来る。


「確かにその人間の若者は王妃様に似ておいでだがそれだけでお通し出来ぬ。 王都に行き然るべき手続きを踏んで陛下の許可書をお持ち下さい」


普通それが妥当だよな… 容姿だけで通れるなら警備として問題


「姫様 やっぱり…」


「致し方ないようじゃ」


そうそう、此処は素直に王都に行って王様に会ってからに


「やれウェアー」


エッ 何を言ってるんだ姫様????


姫様がそう命令すると変態従者は馬上から飛び降りて一人の衛兵に瞬間で飛びかか眉間に指を突き立てたかと思うと衛兵の巨体が倒れて渾沌してしまう


何をやったんだ??


まさか殺して


俺が驚いていると姫様が何処から取り出したのか短剣を俺の顎の下に突き付ける


「!??」


「門を開けよ! さもなくば弟君の命は此処まで。 王妃様が愛する弟君を亡くされ嘆き悲しめば妾の一族は愚か、そなた達の一族もろとも道ずれに陛下の裁きでうち滅ぼされようぞ」


姫様!!


その無茶ぶりは何だ???


俺が姉ちゃんに会うだけでそこまで命を張らなくてもいいぞーーーー


しかもそんな大事なのか!?


「おのれーーー!」


悔しそうに姫様を睨みつける衛兵


変態従者はそれを涼しい顔で見ているだけ


止めろよ!


従者なら姫様の暴挙をどうにかしてくれ~~~~


もう俺はマジ泣きたい……


「それとも妾達を通せばそなた達の首だけで済まそう。このお方は紛うこと無き王妃様の弟君、王妃様にお会い出来れば弟君様より恩情を願おう」


その間俺の首には姫様の短剣が突き刺されられ緊張状態


まさか本気じゃないだろうな


しかし此処までして姉ちゃんに会いたい理由って何だ???


どうやら唯の家出娘では無いらしい


衛兵さんは顔を青褪めさせながら暫らく思い悩むが自らその門を開く。


ギィーーーーーーーー


門を開けるとガクリと膝を付き思いつめた様に剣を置く


まさか自害!!!!!


姫様と横を通る時に声を掛ける。


「衛兵さん、早まるなよ。 俺が姉ちゃんに頼んで誰もお咎めを受けないように頼むから」


俺の所為?で人が死ぬなんて目覚めが悪すぎる!


全部姫様の暴挙が悪い。


「弟君様!」


衛兵は感極まったように土下座し俺を見送る。


門を抜け一気に離宮の玄関まで掛け抜けると姫様はヒラリと馬から飛び降り俺も降りようとするがずり落ちてしまう


ギャーー 落ちる!


ズッドンと落ちるかと思いきや何の衝撃も受けない


「あれ?」


「大丈夫ですか」


「ヒェーーッ! 直ぐ降ろせ~~」


落ちた俺を受け止めてくれたらしい変態従者だが生理的に受け付けね!


「つれないお方だ」


そう言いながら静かに俺を降ろされ急いで姫様の背後に隠れる。


「俺は女が好きなんだ!」


「私の恋人達は皆、最初そう言いますよ」


こらーー! 健全な青少年を不道徳な道に引き摺りこむな!


なんて恐ろしい奴


「無理! ……取敢えず落ちなかった事には礼を言っとく…ありがとう」


「いえいえ どういたしまして」


俺が礼を言うと初めて普通の笑みを見せると少しドキリとする。


くそーーこれだから美形は困る。


「ケント 何時までへばり付いておるのじゃ ///  サッサと王妃様にお目通りを願うぞ」


そうだった!


さっきの事で姫様に文句を言わないと


「姫様 さっきのアレは何だ! 衛兵さんが罪を問われるなんて聞いてないぞ」


「仕方がなかろう。何事にも犠牲が必要じゃ」


恐ろしい


あまりにも自分本位な考えにカッとしてしまう


「あの人達に何の落ち度もないだろ! 真面目に職務をこなしているだけなのに俺達が無理やり通ったせいで責任をとらせるなんて酷過ぎる。 幾ら亀族の姫様で身勝手すぎるぞ」


声を荒げつい怒鳴ってしまうが姫様なら言い返すと思ったのだが


意外な事に無言で俺を見ていると思ったらポロポロと涙を流して泣き始める。


「えっええ~~?!」


大きな菫色の瞳から零れる涙はとめども無く止まらない


「うっう…… 妾とてこんな事したくないが こうでもしないと亀族の爺と無理やり婚姻を結ばされ純潔も寿命さえも奪われるにじゃ…… ビィエーン エンエン…」


こんな子供の内から結婚


なんか可哀想な話


しかも女の子に泣かれるなど初めての経験で慌てふためきオロオロしてしまう


どうすればいいんだと変態従者を見れば面白い物でも見ているように他人事


なんて職務怠慢だ、あんたのとこの姫様だろう


泣かしたのは俺だけど


「悪い姫様、俺が言い過ぎたから泣かないでくれ~~ 衛兵さんの事は俺から姉ちゃんにお咎めなしにして貰うし その姫様の縁談も姉ちゃんに相談して見るから」


あやすように頭を撫でながら言うと漸く涙が止まり涙で潤んだ目で俺を見上げる。


おおーーーー 萌えるぞ~ これは妹萌え?


「本当に?」


小首を傾げて聞き返す姿は究極の可愛さ


この可愛さの前ではどんな我儘を許してしまうのは男として仕方がない


なんか道を踏み間違えそう


「大丈夫! 俺に任せておけ」


思わず安請け合いしてしまった途端


「聞いたかウェアー」


涙も乾かぬ目をニッコリとさせる??


「はい ミョンミョグゥイ様 確かにケント殿は婚約の破棄を王妃様に掛け合うと確約して下さいました」


「はぁ~~??」


「ケントは妾の救いの神じゃ。 くれぐれも約束を違わぬようにのー そうしなければ王妃様に襲われたと泣きつくぞよ」


今の嘘泣きーーーーーーーー!


信じらね……


なんて姫様だ


俺は口をパクパクと唖然とするしか無く後の二人はどこ吹く風


騙された……っと項垂れていると


「そなた達か狼藉者は!」


玄関先で立ちつくす俺達にするどい女性の声が飛ぶ


一斉にその女性を見ると姫様と変態従者は跪き俺はタイミングを逃し立ち続け慌てるが、此処で姫様達任せるととんでもない事を言いそう


社会人としてもちゃんと自分で言おうと腹を決める。


「俺は橘健斗と言い…王妃様 橘深雪の弟です。 姉に会いに来ました」


しかしこのお姉さん綺麗だけど迫力があり隙がない


銀の髪に姫様と同じ紫の瞳だが切れ長で身長も百八十以上は確実で凛々しい女性


俺なんか子供っぽくて相手にされない感じ


「私は王妃様の侍女を勤めるフーラングゥイ 真偽はさておきこのような乱暴な訪問は感心致しかねぬ」


そう言って俺を睨むがさっきの衛兵さんとはまた違う眼力


背筋が凍り付きそう


侍女と言うよりは王妃を守る騎士のイメージだな


「その件は俺も悪いと思っているので謝ります。どうか姉に健斗が訪ねて来たと取り次ぎだけでもお願いします」


ペコリと頭を下げてフーラングゥイさんの出方を待つと誰かが近づいて来る気配がする。


「王妃様なりません。 害をなす危険な者かも知れないのでお下がりを…」


「え~ だって久しぶりの来客じゃない。 偶には新鮮な顔を見たいわ」


ピック!


この声は姉ちゃん!!


「姉ちゃん!! 俺 俺 俺だーーー!」


思わず大声で離れた場所に居る姉ちゃんに急いで呼び掛ける。


「俺? オレオレ詐欺???」


違う――――― 流石姉ちゃん、相変わらずいいボケだぜ


じゃ無く


「姉ちゃん! 弟の健斗だーー!」


「エッ!?? 健斗!!」


ドタドタと駆け寄る音と共に現れたのはピンクの可愛い衣装を着て黒髪を結いあげた少し綺麗になった姉ちゃん


しかしフーラングゥイさんが俺の体を突然拘束すように俺を取り押さえられ跪かされる。

ダン!


「グゥ……」


「控えおろう。王妃様の御前では誰もが跪いて貰う」


容赦ない侍女


「貴方が健斗?」


目の前に来た姉ちゃんの声に顔を上げる。


「久しぶり~~ 姉ちゃん! 元気だった?」


次にあるのは感激の再会かと思いきや


不思議そうに俺を見る姉ちゃん


「 ………… あんた誰????」


「えっ????」


それって何時ものボケ?


途端に侍女が俺の首に腕を回し締め始める。


「くっ苦し……」


「王妃様をたばかる不届き者! この場で首をへし折ろうぞ」


ギャーーーーーーツ


死ぬーーーーー


姉ちゃんのそのボケは洒落にならないぞ!


直ぐさま訂正して欲しく必死に姉ちゃんを見詰めるしかなかったのだった。








 

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