異世界トリップ二日目その六
「ケント殿の黒髪と目を見てもしやと思いましたが」
薄気味悪い秀麗な笑みを浮かべるナメクジ男
「何故素姓を隠しておったのだ? 王妃様の弟を名乗ればどこでも手厚い持て成しを受けるであろうに」
ニコニコと上機嫌な姫様
何か不気味さを感じるが気のせいだろうか
「俺は普通の庶民だし、なんか堅苦しいのが苦手なんだ」
「確かに王妃様の弟君となればこぞって亀族どもが取り入ろうと擦り寄って来るじゃろうな」
「やっぱりそうなるのか、面倒だな…」
はっきり言って俺の望むのはロリ顔巨乳娘であってじじぃが擦り寄って来ても嬉しくない!
しかし貢物として女性を宛がわれたらどうしよ///
受け取ってもいいのか!?
一晩のアバンチュールなんて具合に何人もの美女とウハウハか~~
3P、4Pも夢じゃない!!
酒池肉林じゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
うっ!!
想像しただけで頭に血が昇り鼻血が出そうで急いで鼻を摘まむ。
「何をしておるのじゃケント?」
「チョッと妄想」
「一体何の妄想じゃ?!」
「男のロマン」
「訳が分からんぞ?」
子供は分からなくていいの
「男のロマンも良いですがこちらを見て下さいませんか」
ナメクジ男がそう言っ俺の前に1枚の絵を見せてくれる。
それには艶やかな黒髪を高く結い愛らしいピンクの花を差し零れんばかりの黒い瞳に小さな赤い唇の美少女だが胸はあまり無いようだ。
まさか姉ちゃん!??
訳ないよな……
「綺麗な人ですね」
正直な感想を言う
「変ですね? 巷でこれが王妃様の絵姿として出回っているんですよ」
「えっええーーーーーーー!」
思わずもう一度その絵を見るが、見れば見るほど全くの別人
共通点と言えば黒い髪に目と膨らみの無い胸ぐらい
姉ちゃん…詐称するにも程があるぞーーこれは既に犯罪に近い
「姉ちゃん整形でもしたのか???」
「整形?」
「俺の世界では外科手術で綺麗な顔に造りかえるんだけど、こちらの世界なら不思議な力で顔をかえれるのか?」
「確かに不可能では無いですが」
「そうか…あの顔で超絶美形な王様と結婚したなんて可笑しいと思ったんだ。この顔なら納得 きっと異世界に落ちた時に何らかの特典で変化したんだな」
実の姉だがそんな大層な顔で無いのは事実。
かく言う俺も姉ちゃんに似た顔で少し小さめの丸い目のふっくらとした唇に低い鼻でやや童顔だが決して不細工では無いと思う。偶に合コンでは可愛い弟キャラだねと言われてたし(男として見られてね~)
「クッ…クックッククククックック 本当の絵姿はこちらですよ」
笑いをこらえるように別の絵を差しだす。
「?」
どういう事だとその絵を見れば美しく着飾っている以前より少し綺麗になった姉ちゃんが描かれていた。
そして相変わらず胸はないようだ。
「えっえ????」
「騙して申し訳ありません。最初のは王妃様を想像して描かれたもので今のは亀王陛下が自ら筆をとられお描かれた姿絵なのです」
おおー 王様なのに絵まで上手いんだなっと感心してしまう。
「試したのか……」
つまり本物かどうか
「何しろ偽物の弟君をお連れしてはこちらの身が危うくなりますのでお許し下さい」
そう言って頭を下げるので何も言えなくなる。
「別にいいよ。 胡散臭い人間が王妃の弟だって言って直ぐ信じる方が問題だし」
「ご理解戴き有難うございます」
「ケントは絵姿を見れば王妃様に良く似ているのじゃな」
「そりゃあ兄弟だからな。姉ちゃんも俺も母親似だ」
上に兄貴もいるけど父ちゃんに似て背が高く182㎝で(俺は171㎝しかない)顔も両親の良いとこどりで地味目だがそれなりに整い頭も良くってモテル! 性格は温厚で無口だが母ちゃんに似て時たま意味不明な行動をとる事があるのが少し怖いぐらい。しかも最近超可愛い上に胸の大きいお嫁さんを貰い女性の趣味が俺と被っているのを見てヤッパ兄弟だと改めて思った。
「それで態々異界から姉である王妃様に何しに会いに来たのじゃ?」
「姉ちゃんが幸せかどうか心配で家族を代表して見に来ただけだよ」
まさか嫁を捜しに来たなんて言えないので適当な理由を言う。
本当は家族の誰一人心配していない、姉ちゃんならどこでもしぶとく生きるだろうし代わりの姉ちゃんも居る所為か居なくなった気がしないんだよな~
「しかしケント殿は普通の人間に見えますがどうやってこの世界に来られたのです?」
「妾でも界を裂く瞑道など開けれんぞよ」
そうなのか?
向うの姉ちゃんは簡単に穴を開いていたが
「俺も詳しい事情は知らないが此処の偉い神様と姉ちゃんが入れ替わってるんだ。その姉ちゃんに化けた偉い神様がこの世界に落してくれたんだ」
アレは正に落されただよな
準備万端で立っていると向うの姉ちゃんが突然床に直径2mの穴を出現させたと思ったら問答無用で付き落され心の準備もへったくれもない感じ
ドン!
『 !! 』
『 深雪に宜しく~~ 』
『 姉ちゃんのドSーーーー! 』
叫ぶ俺に、にこやかに手を振っているのを確認した後は真っ暗な空間をただ落下して行きズボリと何かを付き破ったかと思うとこの世界の上空で急いでパラシュートを開いたのだ。
姉ちゃんも俺と同じように落ちて来たんならパラシュートも無く良く無事に降りられたと不思議だ、会ったら聞いてみよう。
「この世界の偉い神だと…一体誰じゃ?」
「瞑道を開けるのは並みならぬ神力を有する王かそれに準ずる者、もしくは崋山の高位の神しかおりませんが」
「うむ… その神は名乗らなかったのか」
「名は無いと言ってたかな… 姿形は姉ちゃんそのままだし俺は姉ちゃんて呼んでいた」
「訳が分からぬ。ケントの世界に何の用があるのじゃ?」
「私にも計りかねます」
そう言えば何の目的で俺の世界に居るのか聞いてない。
「俺には普通の人間ライフを楽しんでいるようにしか見えなかったけど」
ある意味酷いよな…他人の人生の全てを奪って本人に成り済まして暮らしてるんだから
……
もしかして姉ちゃんて酷い目に遭ってる???
俺的には異世界トリップなんて憧れだけど平凡を愛する姉ちゃんには大災難だったのではないかと改めて思い至る。
それに姉ちゃんはどちらかと言うと美形を拒否していた。
大学のサークルの劇を見に行き打ち上げに連れていて貰った時
何時の間に姉ちゃんが打ち上げの席から姿を消しているのに気が付き置いて行かれたのかと思い辺りを捜すと裏路地で口論する男女
一人は姉ちゃんでもう一人は主役をしていたイケメン
『好きなんだ深雪 付き合ってくれ』
『無理、私イケメンアレルギーなの』
そんなアレルギー俺知らないぞ? 普通にイケメンタレントにキャーキャー言ってたはず。
『ニ股は嫌だって言うからあいつとは別れたんだ』
『ゲッ!あんな綺麗な人振ったの』
『俺はあいつより深雪が……』
『女を泣かすな!!』
ドス!!
『姉ちゃん……』
あろう事か告白男の股間を蹴りあげる姉ちゃんはそのまま股間を押え息絶え絶えの男を置いて路地から出てくると俺の腕をとり
『健斗! 丁度良かった。 帰るぞ~~!』
『帰るって…良いのかあの人を振って!?』
姉ちゃんには勿体ないくらいのカッコいい男、これを逃せば二度と無いのを理解してるのか
『あんなイケメンを彼氏にしたら人生お終いよ! そもそもあいつにはミスキャンパスの彼女がいるのよ』
お終い???
どちらかと言うとこの世の春だと思うが??
『でもその彼女を振ったって言ってたぞ』
『そんなの嘘に決まってるわよ~ 本当だとしても許せない! あんな綺麗な子を振るなんてー。大体1回寝たいって言うお誘いならOKだって言ったのに真面目に付き合いたいなんて言うのよ。信じられる!?』
『はぁ~? 誠実な良い奴だろ??』
姉ちゃんの方が信じらんねよーーーー
『私はね彼氏にするならこの顔に合う地味ーーな顔がいいの! あんなイケメンでしかもミスキャンパスを振ってまで付き合うのが私だと大学中に知れ渡ったたらどんなやっかみや嫌がらせを受けるか考えてみなさいよ。しかもミスキャンパスの彼女が居ながら女が常に寄って来るモテ男、あんなのが彼氏じゃ平穏な生活を過ごせなくなるのは明らか、しかも彼の実家は会社経営をするセレブ! 信じられる通学するのに高級外車に乗って来るような奴なの。親の脛かじりのくせに電車使え!電車! 私程度の女なんか1回寝れば十分じゃね~~ 私の夢は自分に合った地味な男と結婚して地味な子供を産んで育て、夫婦で酒を飲みながら教育談義をするのよ!!」
などと同じような話を家に帰るまで延々と聞かされたのだ。
姉ちゃんが此処まで平穏な生活を望むのは母ちゃんの所為が大きいだろう。あの母ちゃんの所為で色々大変な目に遭ってるからな俺達
俺ならロリ顔の巨乳少女がお付き合いを申し込んできたら周りなど気にせず、何らかの罰ゲームで騙されていても即OKをだすのに勿体ない
自分の変なポリシーを曲げずあんなイケメンを振る姉ちゃん
それが超絶美形の王様と結婚……
そんな姉ちゃんだからきっと色んな葛藤があったんだろうと推測する。
ゴメン姉ちゃん…もしかして苦労してた?
自分の事ばかり考えていたと心の中で謝った。
一通り俺の事情を説明してから明日には姉ちゃんの元に連れて行って貰う事になる。
何でも姉ちゃんは王都の宮殿では無く郊外にある大きな湖のある離宮で暮らしてるんだと
普通は王都の後宮かと予想してたんだが違った。
一人で王宮に乗り込まなくて良かった!
取敢えず明日は姉ちゃんに会えるので先に休む事にした。
「それじゃ、姫様お休み~」
「 /// おっお休みなのじゃ……」
微妙に噛む姫様
なんか言い慣れて無い感じ。小さい頃から挨拶はチャンとしないと駄目だぞ
そして変態従者が部屋に送ると言う申し出を速攻で断り部屋に戻るがパジャマがないので持って来たTシャツとジャージで寝る。
明日はきっとパラダイスが俺を待っていると信じ豪華な部屋で眠りに着くのだった。