表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第3章 弟襲来 
52/70

異世界トリップ二日目その五




ヌル~ ヌルルルル~~~~


ナメクジが ナメクジが ナメクジが襲って来るーーーーー!


巨大ナメクジが俺の前に現れて大きな口を開けて俺を飲み込もうと襲って来るので必死に走り逃げるが地面につまずき転んでしまう。


しまったと思った時は遅くナメクジがそのヌメヌメとした体で自分に圧し掛かろうとしている。


ギャーーーーーーーッ


「止めてくれ――――――」


ガバッ!


飛び起きてハッとするとそこは見知らぬ部屋のベットの上だった。


「アレ???? 夢か…… 」


ホッとするのも束の間で部屋の様子を伺い訳が分からない


「確か、姫様に会ってから山族を捕まえて… それか……  !!  」


その先を思い出して一気に冷や汗が吹き出し鳥肌が立つ


俺は……俺は男に唇を奪われてしまったのか!!!


自衛隊に入隊し屈折五年、守り抜いたファーストキスとケツの穴! 


俺は何度もノーマルだと主張したいのに何故か狙われてしまう自分


幾ら美形でも男なんて受け付けるか!


どうせなら女の子にもてたい


異世界トリップして男にフラグが立つ俺って何なの……


うっうーー泣けて来る……


何で姉ちゃんは上手く行って俺はこうなんだ


二番煎じは駄目なんだろうかと考え込んでいると扉が開かれる。


ガチャ!


ビック!


ガバッ


もしやあの男かと思い急いで布団に潜り込む。


「ケント? 目が覚ましたと思ったのじゃが」


姫様の声だと気が付き急いで布団から飛び出し今の状況を確認したかった。


「姫様! 起きてるから待ってくれ」


「おお ケント 気が付いたのじゃな」


見れば綺麗な水色の花柄の着物を着ており、髪も可愛いツインテールに藤色の小花が所々にあしらわれており良く似合う。


日本でさえ滅多に見れない美少女で二次元に引けをとらない


だが如何せん胸がないとときめかない性癖の俺には綺麗な写真でも見ている気分


いや…3Dか


「ここ何処?」


すると何故かムッとする。


「そなた、妾を見て何か言う事があるであろう」


えっ??? 何か違うのか??


考え込んでいると焦れた姫様が怒りだす。


「妾の様な美しい少女を見たら先ずその美しさを誉め讃えるのが礼儀じゃ」


そう言う事かと納得するが普通そうなのか?


まぁ 事実綺麗だし誉めて何かが減る訳でもない


「おおー すげえ綺麗だぜ姫様」


少々 棒読みになるのは仕方がないだろうが


「 /// もっと心を込めて言うのじゃ! やり直し」


駄目押しされてしまった


「なんて綺麗なんだ 初ミクも真っ青な美少女ぶりだ」


少し抑揚をつけて言ってみる。


「?? 初ミクとはなんじゃ??」


「日本の国民的美少女歌手で凄い人気がある娘だ」


二次元だけど


「ほぉー 今一な誉め方じゃが 仕方ないの… 次はもっとましな賛辞を考えよ」


俺的には最大の賛辞だ!


第一何で俺が一々誉めなきゃならないんだ面倒くさい


「それより此処は何処か知りたいんだけど」


「街の宿屋の特別賓客室じゃ。 ケントが気を失ってしまい連れて来てやったのじゃ有難く思うが良い」


「へっへ~ ありがとう…     やっぱり運んだのってあの男?」


恐る恐る聞いてみる。


「そうじゃ。あ奴はウェアーグゥイと申して妾の従者を務めておる。ケントには二度とあのような事をしないよう言いつけておいたので大丈夫、安心いたせ」


「そうか…… 」


それでも油断は出来ない、ああいう手合いはしつこい


「それと俺の荷物はどこ」


「それならそこじゃ」


姫様が指示した部屋の隅に俺のリュックが置いてありホッとする。


アレには姉ちゃんと新しい兄ちゃんへの土産が入っているので無くしたくない――きっと二人共喜んでくれるだろうと今から楽しみだ。


それともう一つ大事な物が入っている。


急いで起き上がりリュックの中を確認してそれがあるか取り出してみる。


「なんじゃそれは?」


俺のとりだした白いケースを興味深そうに覗きこむ姫様に蓋を開けて見せてやった。


そこにはダイヤの指輪が納まっており、それを興味深そうに見る姫様


「なんと美しい石じゃ」


部屋の照明に反射しキラキラ輝くダイヤをうっとりと見詰める。


矢張り女の子はこういう光り物が好きなんだろう


「ダイヤモンドと言って俺の国では結婚相手に渡す指環に付けて贈るんだ」


この指輪を買う為に安い給料から百万円つぎ込んだ俺の血と汗の結晶


もしそう言う相手が出来たら即結婚を申し込む心算で用意した。


亀族ならこの世界に留まる心算だが人間の女性なら日本に連れて帰ると決めており、向こうの姉ちゃんも了承してくれた。


「これを妾にくれるのか!」


「はあ~? 言ったろ結婚相手だって」


「ケントには許嫁が居たのか!?」


目を見開き少しうろたえる姫様?


「うっ… まだ居ないが王都で絶対に相手を見つけるから良いんだよ」


物欲しそうに見るので急いで蓋を閉めてリュックにしまう。


「ならば妾が貰っても可笑しくないであろう!?」


「??? だから何で? 姫様はまだ子供だろ? それに俺なんか眼中にない人間だし不細工なんだろうが。 欲しいだけでも譲れないからな」


不細工やらキモいと言われ少し恨みがましく思っていたので突き放すように言う


「キィ――― ケントの空け者!!!」


バン!!


ヒステリックにそう叫ぶと部屋から飛び出して行きそれを茫然と見送る。


全く我儘な姫様だ


きっと周りからチヤホヤされて自分中心に物事が回っていると勘違いしている典型的お姫様タイプ


大事な結婚指輪を姫様の気紛れに付き合い、あげられる物じゃ無いのだ。


このまま嫌われても痛くも痒くもないしこのままお別れしようと思い立つ


我儘な姫に変態の従者


最悪のカップリング


窓の外は夜で暗く建物から漏れる灯りと所々に街灯が立っており逃げ出すなら早い方が良い


少々空腹なので手早くカロリー○イトを水で流し込んでリュックを背負い窓を開けると二階で屋根があるのでそこに降りて屋根伝いに進んで降りれる場所を探す。下を見下ろせば大きな通りで疎らながら人通りもあり裏手に回った方が良さそうだ。


「自衛隊に入っていて良かった~ 一般人だったら対処難しいかもな」


やっぱり姉ちゃんは助言は頼りになる。


裏手に回ると裏路地で雨どいを伝い降りれそうだと雨どいに手を掛けようとした時だった。


「ケント殿、このまま逃げる心算なら私の玩具になるか、それとも部屋に引き返すなら姫の賓客として持て成しますがどちらを御選択なさいますか?」


ヒィーーーーーーーーーーーーーーッ


変態従者の声が後ろから聞こえて来る。


ギッ ギィィーー


油の切れた機械の様に振り向けばそこには闇に浮かぶ秀麗な顔


だが俺にはナメクジ並みの嫌悪感で鳥肌が立つ


玩具?  玩具って何されるんだと想像も出来ないがとんでもない行為を強いられるのは伺える。


「もっ戻りますから、俺に触らないで下さい」


震える声を振り絞り言う


「残念ながら我が主にもケント殿に触れるのを禁止されていますのでご安心を。着替えと食事を用意しましたので後ほどお呼びに参ります」


恭しく頭を下げたかと思うと一瞬で暗闇に中に消えてしまう。


うっう~~ 怖いよあいつ! 


アレは獲物を狙う目だ!


しかもドSだ~~~~


このまま屋根を飛びおり逃げたい衝動にかられるがあいつのハンターの目が逃がさないと言っていた。


ガックリと肩を落としスゴスゴと元来た屋根を引き返し部屋に戻るのだった。


俺の異世界トリップ生活は全くついてなく、憧れの生活とは程遠いが姉ちゃんに会えば状況は変わるはずだと期待するのだった。








それから部屋に戻ると宿の人が部屋に来てお風呂や着替えの手伝いをして貰うが手伝ってくれたのは十五歳位の少年…どうして女中さんじゃないんだろうと嘆きながらも人懐っこそうな子だったので嫌ではなかった。


少年にこちらの服を着せて貰うが正装なようで一杯着せられる。


日本の着物の様にたもとの短い白い着物にヨモギ色のをもう一枚重ね着し、袴の様なズボンを穿いて内掛けの様な青い着物をズルズルと着せられる


「う~ん もっと簡易な服が良いんだけど」


「申し訳ありません。こちらを着て頂くよう言い遣っております」


少年は恐縮したように言い支度が終わるとソソクサと退出して行った。


きっと姫様の指示なんだろうから仕方がない。それに王妃である姉ちゃんにあの恰好で会いに行くにはラフ過ぎ、TPOは守らないと拙かったかもしれないし。


アレ……


そう言えば王宮に行って俺が王妃の弟だと言ってすんなり会わしてくれるのか???


幾ら黒髪黒い目だからと言って無理かも


普通に考えたらそんな不審人物は門前払いが妥当だよな


そこまで考えてなかった……


こんな事なら事前に手紙でも出しとけば……っと言っても送り方なんて分んねーーー!


なんて初歩的なミス


此処は自分の素姓をばらし姫様に連れて行って貰うしかないだろうか


信じて連れて行ってくれるかな?


タイミング悪く、さっき機嫌を損ねてしまったのは拙かった。


此処はなけなしのイチゴミルクのアメを一袋を貢ぐしかないだろうかと腹を括る。


残り少ないんだが


「ケント殿、お食事の用意が出来ましたのでおいで下さい」


ギックーー!!


変態従者の声が扉の外から聞こえる。


声を聞くだけで背筋が寒くなるのはどうしようもない


「はい、今行きます」


そう言えば今日は碌な物を食べていないので宿屋なら腹の足しになる物が食べれるだろう


恐る恐る扉を開けるとニッコリと胡散臭く微笑むナメクジ男


一応警戒しつつ一定の距離を持つ


「お待たせしました」


「これはケント殿 良くこちらの衣装がお似合いですよ。とても愛らしい」


愛らしい!!??


こいつ目が腐ってるのか?


まだ不細工だと罵られた方がましに感じられるぞ


「俺は男ですよ」


ムッとして答えてしまう


「御不快に感じられたなら申し訳ありません。ミョンミョグゥイ様が別室でお待ちですから急ぎましょう」


全く意に介していない感じで相手にされてない?


くそーーー ナメクジ変態男のくせに少しは反省しろ


廊下を案内されて通された部屋には既に姫様が不機嫌そうに席に着いておりテーブルには湯気を立てた美味しそうな料理が並んでいる。


美味そう~~


ゴクリと唾を飲む。


「こちらにお掛け下さい」


「ありがとう」


ナメクジ男が椅子を引いてくれるので姫様の向かいの席に腰を下ろしてさっきの事を詫びる。


「姫様 食事に招待してくれてありがとう。それとさっきは悪かったな、代わりと言っては何だがこれをやるから機嫌を直せ」


そう言ってアメの袋を差し出す。


「それはあのアメか!」


差し出した袋を見た途端顔を輝かせる姫は素直に可愛いと思えた。


「そうだ、イチゴミルクのアメで俺も大好きなんだが受け取ってくれ」


「ケントがそこまで言うなら受け取ろう」


そう言って受け取り大事そうに膝に乗せる。


「なんですかそれは?」


「ケントの国の菓子じゃ」


「それは珍しい、私にも一つ分けてくれませんか」


「嫌じゃ! これは妾が貰ったのじゃからそちにはやらん」


「いいですけど……さあそれより料理が醒めない内にお召し上がり下さい」


料理を勧められたので、手を合わせて早速頂く事にする。


「頂きまーす」


箸をとって肉団子の様な物を最初に食べれば甘酸っぱく中華風の味付け


「美味い!」


それから片っ端から料理を食べ始めると箸が止まらず姫様が呆れて見ているのも気にせず粗方食べてしまう。


「御馳走様でした。なんか俺ばっかり食べて悪かったかな…」


お腹が空いていてついガッついてしまった。何しろリュ―リンさんの家の食事は質素で物足りない。何処の世界でも貧富の差は仕方がない事。地球でも栄養失調でお腹の膨れた子供達や餓死する子供達は悲しいけど存在している。


「ケントは体の割に良く食べるのじゃな」


「そうか? うちの家族は良く食う方だから」


「王妃様もそうなのですか?」


「そうそう 姉ちゃんは痩せの大食いの典型…… エッ!! 」


ジーッと二人が俺を見ているその顔はヤッパリと言う物知り顔


「矢張りケント殿は王妃様の弟君でしたか」


「どうじゃ! 妾の言う通りであろうが」


俺の正体ばれてたの!?


まさか姫様は初めから気付いてたのか


俺は間抜けな顔を晒すしかなかった。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ