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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第3章 弟襲来 
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異世界トリップ二日目その四




美形な顔の怒りの顔ほど迫力があるのを初めて知る。


マジ怖えーーーーー 


ささやかな男の意地は直ぐに挫けて睨んでいた目は涙ぐんでしまう


こいつは亀族だ、姫様同様に力があるはずで俺なんか散りに等しいに違いない


俺は殺されるのか……ひぇーーーーーーーーーっ


情けない事に抱き付いている姫様の頭を抱えて縋り付いてしまう


それが奴を更に刺激したようでクワッと目が見開かれそこから光線ビームでも照射しそうなほど凝視され更なる恐怖に支配され生きた心地がしない


正に蛇に睨まれたカエル


そして1m圏内に入ると右手を俺の首元に突き出して来る。


首を絞められ殺されるのかと覚悟した時


何故か顎を取られ上に向かされると凄まじく綺麗な顔と冷え冷えとしたアイスブルーの瞳が間近で見降ろしておりこのまま瞬間凍結されそう


「……良い表情だ」


「へっ!?」


「その泣き顔が実にそそる……」


「????」


そそる?


こいつは何を言っている???


理解不能で今度は違う意味でフリーズ


「可愛い唇」


誰の??


ムチュッ???


そして固まる俺の唇と奴の唇が何故か重なる。


これはもしかして憧れのキスと言う行為ではないだろうか


誰と?


おっおっおっ男と!!!


ギャアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


と叫びたかったが生憎口が奴の口によって塞がれており出せないばかりかナメクジのような物が入り込んで来て俺の口の中を暴れて攻撃し始める。


ナメクジが這いまわってるおぞましさに気が遠くなる


「ウェアー! ケントになにおし……    」


最後に聞えたのは姫様の怒鳴り声


男に……


男に………


男に…………


ファーストキスを奪われた俺はそこでブラックアウトしてしまうのだった。







口付の最中に倒れ込むケントを抱きとめる男


「初心な子だ私の口付で気を失うなど」


決して自分が嫌悪されているとは考えないらしい


「たわけーーーー! この腐れ外道 ケントに変態が移るではないか」


「ミョンミョグゥイ様 亀族の姫がそのような下品な言葉遣では嫁の貰い手がありませんよ」


「フン! 呈州の州知事の地位欲しさに男なんぞ掃いて捨てるほど寄って来るぞよ」


「それよりケントを私に譲って下さい。 なんなら王都へ行くのは目を瞑りましょう」


「うーむ… 中々魅力的な申し出だが 無理だと言っておこうぞ」


「珍しい ミョンミョグゥイ様が人間に興味を持つなど」


「そなたも同様であろう。 何時から地味専になったのだ? そなたの好みは生意気な美少年では無かったのか」


この男はミョンミョグゥイの従者でもあり教育係を務めるウェアーグゥイ


秀麗な上品な顔立ちながら趣味は美少年の調教というとんでもない趣味の持ち主でその毒牙にかかり道を踏み外した者は有に百人を超えると噂される美青年


大事な呈州知事の一人娘にそのようないわくつきの男を付けるのは周囲は反対したが優秀なのは間違いなく大事な娘に手をだす心配もなかった。


「確かにそうなんですが、あの怯えた子犬の様な目で見られ思わずゾクゾクしてしまい思いっきりなぶって泣かせたくなりました。 あの濡れた黒い瞳を思い出すだけで直ぐさま突っ込んで一晩中犯し続けたいくらい興奮します」


そう言ってうっとりと気絶しているケントを見詰める目には危ない光が宿っている。


「ケントを見て他に思う事はないのか…」


軽蔑の眼差しで見るがこたえるような男ではない


「他? そう言えば黒い髪に瞳と言えば王妃様と同じ、しかも来ている服も変わっていますね……ケントは何処の国の者ですか」  


「これを見るがよい」


そう言ってたもとから取り出したのは水の入った透明な容器


ケントを抱いたまま受け取り繁々とその水筒らしき物を眺めると驚きを隠せず目を見開く

「素晴らしい技術です。どの様に造られたのか皆目見当も付きませんがこの世界の物ではありませんね」


「ケントから貰った物じゃ。ケントは日本と言う国からの旅行者らしいぞよ」


「日本 この世界にそのような国も地名も御座いませんが」


「そうじゃ、そしてケントは王都に居る姉を尋ねて行く口ぶり…… バカでも分かるであろう」


「つまりケントは王妃様の弟君だと」


「恐らく…確証はないが王妃様の出自は隠匿されており他の亀族も躍起になって探ったが分からなかったそうじゃが」


「珍しい双黒を纏いながら出自が分からないのは異界人の所為だったのですか、なるほど」


「だからケントは諦めるのじゃな 王妃の弟君をそなたの玩具にされ壊されては妾の首も飛ぶ」


「ミョンミョグゥイ様ならご両親の首を差し出すのでは」


「成程! それは良い考えじゃ。 煩いのが三人も一度に死んで呈州は妾の思うがまま」


あまりに酷い言い草に流石のウェアーグゥイも鼻白む


「はぁ… 薄情な主に仕え私は不幸ですよ」


「妾は暗愚な両親を持って不幸ぞ! 主従の縁は切れても親子の縁は切れぬのだからな……妾の結婚を無理やり決めるなど信じられぬ」


「それで自分のご縁談をぶち壊す為に王都に行っても成人もしておられぬ御身では無謀としかいいませんよ。 ここは御両親の言う通り婚約だけでも結べばよいではないですか」


毎年新年の挨拶の為に王都に各州の州知事が賛礼に行くのが習わしなのだが、今回はミョンミョグゥイと王都に住むさる高位の亀族の縁談をまとめるのに乗り気なのだ。


そこで邪魔な娘を宮殿に監禁してまで推し進めようとしていた。


しかし黙って大人しく監禁されるお淑やかな姫様では無く、ウェアーグゥイが美少年と戯れている隙をつき結界を打ち破り一人で王都に向かうじゃじゃ馬ぶり


生まれる性別を間違えたのではないかと何時も思うウェアーグゥイ


これまで亀族の婚姻は親が決めるのが一般的で女性は特にそれが顕著で余程の高位の姫でなければ相手を選ぶのは難しかった。しかし最近では女性自体が数が少なくどちらかと言うと女性の方に選択権があるのだが今回は相手が悪かった


「今にも死にそうな亀族の爺と婚姻を結ばされ命を削られた上に妾の純潔まで奪われる位なら死んだ方がましじゃ」


「爺…… しかし純血の亀族と婚姻を結べるなど亀族の姫として誉れ高いではありませんか。もし次期亀王様をお産みになれば皇太后となれば大きな権力を持てますよ。お好きでしょう権力」


相手は権力の中枢の丞相府に勤める重臣で純粋な亀族の血を引く男なのだが確かに高齢でありながら未だ正妻を迎えていないが側室は山の様にいるのだ。自分より神力の劣る相手と婚姻を結び命を削るより自分の寿命を延ばす為に時折、年老いてから神力の高い若い姫と権力を使い婚姻を結ぶのは良くある事


この場合はお互いの家に利益があるのでその姫以外には悪い話では無い


ミョンミョグゥイの両親もその亀族と親交を深め婚約の密約と同意書を交そうとしているのだ。


「妾は慎み深い性質なので呈州だけで十分じゃ。それに丞相様に産まれた御嫡男様は亀王様と同等に神力が高く次期亀王だと目されておる。あんな化け物を超える子など妾は産めぬぞ」


あまりの言葉に眉を顰めてしまう。


化け物とは何たる暴言で他の者に聞き咎められれば即刻打ち首だろ


「兎に角今回の婚約の書状は両家で取り交わされ提出され後は亀王陛下のお許しで決まったも同然。無駄な足掻きはお止めになって帰りましょう」


「何を言っておるのじゃ。 妾には今この手に重要な駒を握っているではないか」


そう言いながらケントに視線を注ぐ


「弟君をどうなされるのです?」


「ケントを使い王妃様に取り入り泣き付くのじゃ。 亀王様は王妃様を盲目的に愛されているのは周知の事実で王妃様の願いは何でも聞くと噂。 妾の元にケントが遣わされたのは天帝様の御慈悲に相違ない! 」


確かにこのまま老いた亀族と婚姻を結ばれるのも憐れに思っていたが阻止する力など無い自分には、主にこの婚約を説き伏せるしかないと思っていた。


だが王妃様に嘆願し婚約を破棄して貰う算段ならその可能性は高いので此処は趣味と実益を兼ねて協力をする事に決める。


「どうせなら私が体を使い弟君を籠絡すればもっと簡単ですよ」


「そのただれた思考は何とかならんのか……ケントなど妾の美しさに直ぐにメロメロじゃーそなたは手出しするな」


「はぁっ…!?」


主の言葉に驚くウェアーグゥイ


卵から生まれ出でた時よりお仕えしておりその性格を熟知しているがこのような手を使うなどあり得ない。どちらかと言うと相手の弱みを握り脅すのが常套手段な姑息な主


どうやら自分と同様に、この少年に多大な興味があるらしいと気付く


「良いでしょう…ミョンミョグゥイ様のお手並み拝見といたしましょうが無理なようでしたら私にお任せを」


確かに我が主は美しいが如何せんまだ子供で初潮すら始まっていない幼い体


しかもこれまで恋などした事のない色気の欠片もないお方だ


男を落すとはどういう事か理解しているかすら怪しい


ケントが少女愛好者ならば勝ち目はないが、異性愛者ならその嗜好を変えさせる自信があるウェアーグゥイ


「妾で十分じゃ」


自信満々のミョンミョグゥイ


これまで州知事の娘として男達にチヤホヤされてきて男の扱いを知らない少女


高飛車な亀族の姫の態度に人間の少年がどう感じるかは明らかであろう


自分方に分があると考えているので余裕があるウェアーグゥイは薄っすらと笑う


「ソロソロ街に参りましょう。既に宿はとってございますので七日間の逃避行の垢でもゆっくり落して下さい」


「ところでそなたは良くこの場所が直ぐに分かったの…神力を使わずに此処まで来て先程も僅かに使っただけであった筈じゃ。 妾がこの街道を来るのが分かっていたのか」



「勿論で御座います。おしめの頃よりお仕えしている私の裏をかこうなど百年早いですよ」


神力を使えば一気に王都まで飛んでいけるのだがその場合直ぐに見つかり連れもどされると思ったので歩いて人目を憚りながら歩いて来たのだ。


「クゥーーー それでは神力を使わない努力は無駄だのか!」


「そう言う事です」


「まさか結界に綻びがあったのも王宮に居なかったのも態と?」


「どうせ有り余るほど元気ですので少々力を削いでから再び閉じ込めようと考えてました」


いけしゃあしゃあと言う従者に殺意を覚えるのは生まれてこのかた何度目であろうと思いながらも手が出せない自分の非力が恨めしい


「そなたの加虐趣味を主にまで向けるのかーーー 」


「何を仰るのです。これも私なりの愛です」


そう言ってニッコリと笑う従者に何も言えない。


「妾は疲れた! サッサと宿に連れてくのじゃ」


「はい仰せの通りにミョンミョグゥイ様」


大きなリュックを担ぐケントを軽々と抱き上げ空高く舞い上りそれに続くにミョンミョグゥイは真っ赤に染まる街の方に消えて行くのだった。









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