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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第3章 弟襲来 
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異世界トリップ二日目その二





俺は森の中を通る街道をとぼとぼと歩いているが周りには背の高い樹齢百年以上は経っていそうな巨木ばかりで太陽の日差しが届かずうっそうとしている。


「この辺りで山族が出るのが定番だよな」


サバイバルナイフを直ぐ出せるよう腰に携帯している。


1対1の戦闘ならある程度応戦出来るが大勢に取り囲まれればアウト


まさか着地地点が王都から逸れてしまったのは想定外


「取り囲まれたら逃げるが一番だよなー 普通なら能力の一つでも目覚めるんじゃないのか!」


しかしそんな能力は目覚めないのは向うの姉ちゃんに言われていたので知っていたが


『 そんな都合に良いチートな能力が無償で貰えるなんてある訳ないでしょ~~ せめて言葉ぐらい通じるようにしてあげるわ 』


そう言ってくれたのが何の変哲もない金の指環で今は左手の人差し指に嵌めている。


向うの姉ちゃんは本物の姉ちゃん同様あまり甘やかしてくれないが有り難く貰っておくがせめて身体能力一つでも上げてくれるアイテムも欲しかった。


街道の先にはただ暗い森が続いており失敗…さっきの草原で誰か通るのを待っていれば良かったと後悔


先が見えない道では一気に走り抜けるのも危険で体力を温存する為にも一定の速度で歩くがガサゴソと音がする度にビクついてしまい走り出したいのを我慢する。


「なんか山族より化け物が出るんじゃないだろうな~~」


心の中で平常心を保つ為に呪文を繰り返す。


走っちゃ駄目だ 走っちゃ駄目だ 走っちゃ…


ギィェーーーーーーーーーッ


突然聞こえる不気味な声


「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーッ 助けてーーーー!」


俺は情けなも脱兎の如く走り森を走り抜ける。


自衛隊で重い装備をしたまま走る訓練をしているのでそれなりに走れるが全速力で走るって俺はバカか!!


二十分後には座りこんでいる。


「ゼェー ゼェー ゼェー ゼェー ……… もう走れん…… 」


座りこんだ場所は相変わらずうっそうとした暗い森の中


なんか心理的に来る物があってマジ怖い~~~~


なんか迷子になった気分で良く木のうろが人の顔に見えて来るって本当だな


アレなんか骸骨ポイし……


うう~~~


助けて姉ちゃーーん  


思えば小さい頃から引き籠り気味の俺を母ちゃんが外に連れ出しリアル迷子ごっごで置き去りにした時は何時も迎えに来てくれたのが姉ちゃんだった。


此処で待ってたら姉ちゃん迎えに来てくれないだろうか


だが知らないから無理だろうな……


少し泣きそうになるが二十三歳でこの状況で泣くのは痛いぞ!!


小さく丸まり泣くのと恐怖に耐えていると


ドン!


背中に衝撃!!!?


「邪魔だどけ!」


ドカッ!


背中を誰かに再び蹴られて前のめりに倒れるが咄嗟に腕でガードしたので顔を怪我せずに済んだ


「何するんだ! 顔を怪我するだろう」


「そんな不細工な顔に今さら傷の一つも惜しいのか」


如何にもバカにしたような少女の声


少女!!


振り向くとそこには美少女! 大きな菫色の瞳にピンク色の髪は両サイドの上方でツインテールにし白いリボンが結ばれ天使の様な可愛さだが……年齢的に十歳くらい


確かにロリ顔は好きだが幼児体型には萌えない


俺は巨乳が好きなんだ!!


しかし此処にこんな美少女がいるなんて変な話


幻??


思わず少女に触れようとすると


バシ!


「人間風情が妾に触れるな! この無礼者!!」


叩かれた手が痛いのでどうやら本物らしいが偉く高飛車な子供で身なりも綺麗な赤い着物で絹のよう、タンさんの村の子供達と明らかに違い貴族のお嬢様と言う風態


顔は可愛いが俺にしたら村の子供達がの方が数倍可愛く感じる。


恐らく髪とか美しさから判断して亀族のお姫様なんだろうが御供も連れずこんな所に一人歩いているのは不自然


「お譲ちゃんは迷子かな?」


ニッコリ笑いながら聞いてみると


「その不気味な笑みは止せ、目が穢れる」


マジ可愛くんねーーーー


「誰かお家の人はいないのかな?」


「言っておくが妾は迷子では無いぞ。そもそも道の真ん中で泣いていたそなたが迷子であろう」


ギック!


泣いていたのがばれてる!?


「……違うよ~ 疲れたから休んでいただけだから」


「妾の横を助けてと叫びなが走り抜けていったのは誰だ」


エッ そうだったの? 全然気が付かなかったがあまりこの娘とは関わらない方がいいと本能が言っている。


此処は本能を信じよう


「きっとそれは別人だ。俺は急ぐんでじゃあな」


さっきまでの恐怖心は何処へやら、それよりこの少女をから急いで離れようと立ち上がりスタスタと早足で立ち去る。


絶対アレは危険だ


きっととんでもない被害に合うのは目に明らかなパターン


普通の少女をこんなとこに放り出すほど薄情じゃないと弁明しておく


走って出た汗が今は冷や汗に変わっている。


暫らく歩き続け後を振り向くとあの少女の姿を消えておりホッと安心し前を向くと


「妾を置いて先に行こうとは失礼な人間」


「のわぁぁーーーっ! 何時の間に!!」


俺の胸ほどもないのに気配も感じず後を付いて来たとは考えずらくまさか空間転移


小さくても神様らしいからそれ位しそうだ


まさかそれとも幽霊!?


「そなた一人では寂しかろ。 妾が付いて行って進ぜよう」


「俺は一人が好きなんだ」


「嘘を申すな。さっきはべそをかいてだではないか!」


キーッと癇癪を起こす少女


なんだかこれ以上怒らせてもとんでもない目に合いそうなので街まで同行し人混みで撒いた方が穏便に済みそうだな……


「分かった。一緒に行ってもいいが泣いてはいないから」


「フン! 一人前に自尊心か――よかろう妾の広い心でその事は不問にいたそう」


マジでムカつくガキ


「それは有難うございます。それじゃあ行きますよお姫様」


俺が歩き出そうとすると右手を差し出す少女


「??」


どういう事だと訝しく見ていると


「サッサと妾の手を引くのじゃ! この愚図がそんな事も分からんのか」


「さっきは触れるなと言ったぞ」


「今はいいのじゃ。 触れる事を許す故、手を引け」


なんて上から目線のガキ!


絶対親もこういうタイプだな。


仕方なくそのほっそりとした小さな手を取りその少女が本当に実在しているんだと感じる。


しかも恐ろしく綺麗なガキ


神族は美形ばかりと聞いたが此処までのレベルとは期待してしまう――このレベルがウジャウジャいるのかと思うと顔がニヤケてしまう


「ところでそなたは面妖な服を着ておるな。しかも黒い髪に目とは珍しい……何者だ」


「ただの旅人」


俺が王妃の弟だと知られるとなんか面倒そうな気がして黙っておく


「本当に……」


疑り深そうに俺を見るので話題を逸らす。


「お姫様こそこんな所に一人で御供も連れず不用心じゃないのか」


「案ずるな。妾は強いし王都には父上と母上がおる」


お姫様って言うのは否定せずあっさり受け入れているぞ


「まさか家出じゃないよな」


「違うぞよ。妾は置いてかれたので後を追いかけているだけじゃ。 全く可愛い娘を置いて夫婦二人で王都に行くなど以ての外じゃ!」


「それは それは大変だ……」


それを家出と言うんだ! このアホ娘、次の街で絶対に逸れてやる。


というか飛び出した屋敷から絶対に捜索の為に街で待ちかまえている可能性が大きく巻き込まれイベント発生確実だよ~


「それよりそなたの名はなんと申す」


他人の名を聞く時は先ず自分から名乗れと言うとフラグが立つので絶対に言わない。


「ケント。それよりお姫様の名前は」


「下賤な人間に名乗れるか」


「あーそうですか」


一々反応するのも疲れるぞ


スル―だスル―


そのまま無言で歩き続けると突然立ち止ってしまう姫


「疲れたのか」


「ケントは妾の知っている人間とは違う…何故媚びてへつらわぬ」


「いや…十分へつらってるぞ」


自分的にはかなり下手に出ている心算だが…もしやタンさん張りにしろと要求してるんだろうか? なんて我儘な姫様だ


「姫様は俺にどうして欲しいの…もしかして優しくして欲しいとか?」


「フン!  そなたの様な不細工の優しさなどいらん!」


へーへーそうですか…… 不細工不細工言うなよ… これでも傷付いてるんだ


こうなったら嫌がらせの様に頭を撫でてやる


「遠慮するな。 良い子 良い子」


ナデ ナデ ナデ


そして怒り狂うかと思えば何故か顔を真っ赤にさせてプイと横を向く


「わっわっ妾を子供扱いすで無い!」


うーん 少しは可愛いところがあるのか


「取敢えず歩こう。とっとと森を抜けたいからな」


そう言って姫様の手を引っ張ると


「……ミョンミョグゥイ」


「ヘッ?」


「妾の名はミョンミョグゥイだと言うておるのだ」


いや…別段名前は知りたくないんだけど


もしかして懐かれた????


「良い名前だな姫様」


取敢えず流しておこう


これがせめてBカップの女の子なら嬉しいんだが、如何せん子供


射程外


兎に角、街までは穏便に行こう


お姫様が大人の時に会いたかったとつくづく思うのだった。









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