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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第3章 弟襲来 
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異世界トリップ一日目





広大な畑の真ん中に降り立った健斗は酷いに匂いに悩ませながらパラシュートを外し適当に畳んでまとめ持って来た大きなゴミ袋に入れてしまうのに四苦八苦していると何処からか現れた子供達


子供達は見た事もない奇妙な男の不思議な行動を物珍しそうに遠巻きで見守っている。


健斗は溜息をつく


はぁ… 何で寄って来るのがガキばっかりなんだ!


ここは美少女が登場して俺に惚れるんじゃないのか!!


しかし良く考えればこの臭い状況で会うのは心証が悪くフラグが立たないと思い直す。


早々にこの臭い足を洗い王都に入ろうと思い子供達に声を掛けてみる。


「おい、この辺で足を洗う所はないか教えてくれ」


そう呼び掛けると何故か後ずさる子供達


なんだ???


自分の服装が可笑しい所為か言葉が通じないのか?


警戒しているのは間違いない。


「子供を手懐けるにはお菓子が一番」


大きなリュックからおもむろに飴袋を取り出す。


これは俺の大好きなイチゴのミルク味だ


袋を開けて1個取り出して可愛いイチゴ模様の包みを外して口に放り込み


「美味い! やっぱアメはイチゴミルク味に限る」


そう大声で言ってもう一個口に入れて如何にも美味しそうに舐めて周りを見れば物欲しそうな子供達が伺える。


「欲しいか?」


袋を差し出すと一番体の大きな子供がおずおずと近寄ってきて手を差し出して来るので掌に一個のせてやると先ず匂いを嗅ぐ


俺の匂いでイチゴの香りなんか掻き消されていそうなのに子供はうっとりとした顔をしたかと思うと不慣れな手つきで包みを外し恐る恐る口の前にペロリと舐めると目を見開く


そして一気に口に放り込んでしゃぶり始めると目をキラキラさせて叫ぶ


「うめーーーー!!」


そうそう、俺も小さい頃このイチゴミルクを舐めた時の感動は忘れない。


様子を見ていた他の子供達がワラワラと近づいてきて我先に手を差し出して来る。


「「「「 ちょうだい! ちょうだい! 」」」」


小さな泥だらけの手に一個づつのせてやると包みを外して次々口にすると全員目を輝かせて幸せそう


だがその幸せも直ぐに終わってしまうと一斉に物欲しげな目を俺に向けて来る


じーーーーーーーーい


「「「「「「 …… 」」」」」」


仕方なくもう一個づつやると直ぐに食べるかと思いきや大事に懐にしまい込む


見れば子供達の服は継接ぎだらけでくたびれており昔の古いテレビの名作で良く紹介されるおしん風


日本の子供達とはかなり様相が違いあまり裕福な生活とは言い難いようだ


その内、好奇心一杯の顔で尋ねて来る子供


「あんちゃん、どこから来たさ?」


「俺か、あの空から来たんだ」


「もしかして亀族様なの?」


亀族とは玄武国を治めている神族、つまり神様―――流石に異世界トリップ


「否、れっきとした人間。 それより足を洗いたいんだけど水場を教えてくれないか」


「ええけど、あんちゃん肥溜に落ちただか」


「間抜けだな~」


子供たちがウシッシと笑いだすが肥溜めとは何だと記憶を手繰り寄せてよく時代劇に出て来るアレだと思いだす。


肥溜めって詰まりアレか


たい肥、いわゆる糞!!!!


よく足下を見れば白い蛆が数匹を確認


一気に血の気が引く


「…… ギャアァァァァァァーーーーーーー  俺を今直ぐ水場に連れてってくれ~~~」


絶叫したが気絶しなかったのを褒めたいくらの悲惨さだ


信じらね~~~


反泣き状態の俺を子供達は手を引っ張り直ぐ側の川に連れて行ってくれ速攻で糞を洗いながすが、ズボンを脱ぎ靴下とシューズと次々洗い草むらに広げて乾かすしかない。


「替えのズボンを持って来て良かった」


リュックからズボンを取り出し履き替える姿をジーッと観察している。


余程俺が珍しいようだ。


俺は一番年かさの十歳くらいの少年に話しかける。


「王都に行きたいんだがどれくらい掛かる」


「う~ん~ 歩いて三日くらいだぁ あんちゃん 王都に行くのけ」


三日! 風に結構流されたようだ


「馬か馬車はないのか」


「ねえだな、長のところさ馬が一頭いるだけだ」


見たとおりのど田舎、仕方が無いので歩くしかないがこの日の為に俺は高校を卒業と同時に自衛隊に入隊して体は鍛えてきた。


これは向うの姉ちゃんが最低限の体力とサバイバル力をクリア―しないとこちらの世界に送ってくれないと条件をだしたからだ。


「一応健斗は弟設定だから姉として無責任な事出来ないし~ 取敢えず自衛隊入隊で3年耐えれたらね~」


なんて優しい言葉の中にサド気質を感じるが俺は頑張った!


はっきり言ってオタクな俺は運動なんてこれまでしておらず二次元の世界の海を泳ぎ回る存在でチョッとポッチャリめの色白な男子高校生


運動なんてもっての他だったが小さい頃からの夢だった異世界トリップが実現出来ると知った俺は二次元断ちをして進路も一般大学から一転し自衛隊に入った。


三年の担任には成績は良いんだから防衛大にしろと言われたが一般曹候補生の試験を受けて入隊、体力テストがあったら確実に落ちていた。それから入隊前から基礎体力を少し上げて挑んだけどマジ1年は地獄


教官にも俺は1週間もたずに脱落すると思っていたと言われたからそれくらい俺はへなちょこだったが屈折五年昇進もそれなりして除隊する時は引き留められるくらいのバリバリの自衛官


しかし俺がここまで頑張ったのは異世界トリップをしてハーレムを作る為であって愛国心からでは決してない


それより3年が何故5年かって? 


何でも王妃になった姉ちゃんが長い眠りに就いてしまい最近目覚めて漸くこの世界に落ち着くの待っていたら5年になってしまった。どうやらこの世界と向うの世界の一年は違うんだそうだ。


姉ちゃんが異世界トリップしたのも驚いたけどその世界のイケメン王様と結婚したと聞いた時は俺も後に続くと決意した。何しろ俺の姉ちゃん……顔は不細工ではないが普通、だけど胸が洗濯板で嫁にいけるか心配だったのにそれが超美形と結婚ありえね~


矢張りこれは異世界トリップの恩恵だ


神族は美形しかいないそうだから姉ちゃんの側に居ればモテモテ間違いなし!!


「待っててくれ~~ 俺の嫁~~」


俺が妄想していると子供達が不気味そうな目で俺を見ている。


いけね~ なにしろ禁欲生活が長くて飢えており綺麗な女を想像しただけで涎が


口元を拭い子供達に王都への道を聞く


「王都への街道は何処だ?」


「「「「「「 あっちー 」」」」」」


全員が違う方向を指す―――子供に聞いた俺がバカだった。


「何処かに大人はいないのか」


そう聞くと途端に子供達が慌てだす。


「いけねべーーー 草むしりの途中だったべー おっとうに怒られる!!」


「早く 草むしりに戻んべーー」


どうやら子供達は畑の草むしりの途中だったらしい


やっぱ学校なんて行かずにこの年代でも立派な労働力なんだろう。


「おい待て、川を教えてくれたお礼がまだだから手を出せ」


子供達はそれを聞くと嬉しそうに手をだす。


遊んで泥だらけだと思っていた手は立派な労働者の手だったのかとジーンとしてしまい袋にあるアメを均等に全部分けてやると本当に嬉しそうな顔をする。


今時の幼稚園児でもアメ一個をここまで喜ぶ奴は少ない


俺もそうだったけど……


「「「「「「 ありがとう あんちゃん! 」」」」」」


子供達は飛び上がらんばかりに畑に戻って行ったのを見送り取敢えずシューズが乾くのを待ってから農民Aでも捜そうと水筒を取り出してトリップ前に淹れて来たコーヒーを楽しむ事にするのだった。


コーヒーを飲みなが周りを見れば畑と森しか無い単調な風景


建物らしきものも見えず、澄んだ空に綺麗な空気で日本では失われつつある風景


向うの姉ちゃんの話ではあまり機械文明が発達しておらず生活レベルも数千年単位で緩やかにしか進歩していないスローライフ


俺の世界とこの世界どちらがいいか判断できないが取敢えず生まれる世界も親も選べない状況


産まれ落ちた世界を生きるしかないのだ。


それなのに俺は異世界でこれから違う生活を選べる。


「俺って超ラッキー! 姉ちゃん様様」


コーヒーを飲み終わり草むらに横たわり日向ぼっこをしながら姉ちゃんに会いに行ったら驚くだろうなーなどと考えていると顔に影が掛かりその方向を見れば逆光で良く分からないが女性が俺を見降ろしていた。


「あの~ 旅のお方ですか?」


声を聞く限り若い女性


俺は急いで跳び起きて女性の顔を見る。


「!!」


こっこれはーーーー!


キターーーーーーーーーーー!


お約束の美人


長い茶色の髪を後ろで束ねて服装は簡易な着物に長いスカートのよな物を穿いており、全体的にくたびれているのを着ている。大きな緑の瞳に鼻筋が通って形良い唇。化粧などしておらず服でも誤魔化されず綺麗なんて凄いんじゃないか?


現代女性は化粧で誤魔化してるらしくスッピンを見て幻滅したと言う友達の話を良く聞く。


どんな状況でスッピンなんて拝めるんだ~自慢か!!


先ず自己紹介からだな


なにしろリアルな女性にあまり免疫がないので既に顔が真っ赤なのはずだ


「おっ俺…健斗っていいます… /// 」


もっと自己アピールをしないといけないのに、テンパっている俺にはこれが精一杯


おお~~ 心臓がドキドキ


こっこれは恋だろうか


「ケントさんですか? 私はリューリンと申します。王都に行きたいと弟から聞いたんですが」


よく見れば女性の横にはさっきの子供の一人が立っていた。


「はっはい そうなんです。 /// 」


この子の姉ちゃんか!


これは中々流れ的にいいのでは


お菓子をやった→優しい人→素敵!


おおーー 早速フラグがたったーーーー!!


こんな美人に惚れられるのか!?


向うの世界では絶対にあり得ないぞ。 


異世界トリップ万歳ーーーー


心中で万歳三唱をする俺


「王都に行く街道はここから大分外れているので明日の朝なら案内出来るんですけど」


明日→一晩お泊り下さい→抱いて!→童貞喪失!!!


こんな綺麗な女性に筆おろしして貰えるならこの年で童貞悔いなし!!←妄想注意


「そっそれでお願いします /// 」


そう返事をするとリューリンさんが恐る恐る尋ねて来る。


「少しお聞きしたいんですけど…もしやミユキ様をご存じないでしょうか」


ミユキと言えば俺の姉ちゃんだが何でこの娘が知ってるんだ?


王妃だから有名人だし当然か


「深雪は俺の姉です」


「まぁー やっぱり。黒い髪に目や顔立ちも似ておいでなのでもしやと思いお聞きしました」


そう言うとその娘は慌てて跪き弟にも頭を下げ始める。


「王妃様の弟君様とは知らず子供達が無礼をしました。どうかお許しを」


エッ?! 俺って偉いの??


どうやら姉ちゃんのお陰でこの世界の俺の地位も人間でありながら上らしい


しかしこの状況は頂けない


美人に跪かれても萌えない


どうせなら「いらっしゃいませ御主人様」とでも言って歓迎して欲しい


「俺そう言うの苦手なんで立って下さい! 俺は一般人なんで普通でいいんで」


「そう言う訳には…」


戸惑うリューリンさんを何とか立たせて普通の客人として扱って貰う事で何とか手を打ちリューリンさんの家に泊めて貰う事になる。


やり~


脱童貞!!


喜び勇んでリューリンさんの家に向かうのだった。


その道すがらの話でリューリンさんは姉ちゃんがこの世界に落ちて来た当初の世話係をしていたらしくその流れで弟が居るのを知っていたのだ


何たる偶然――――いや、これは必然!


リューリンちゃんは俺のハーレム構成員の一人だと確信したのだった。










しかしそんな美味い話なんてないと思い知る。


「私の夫でこの村の長を務めているタンです」


そう言って紹介されたのは三十歳位の渋めのおじさん


ガーーーーーーーーーーーーーン


見事フラグがへし折れる。


このエロ親父ーーー


こんな綺麗な若い娘(年を聞いたら十七歳!!)を嫁にしやがって!


日本なら淫行罪だ!!


羨ましいぜーー 畜生!!


「弟君様 このようなあばら家で申し訳ないですが精一杯お持て成しさせてくだせい」


確かの村の長の家と言う割にはボロく築百年は経っていそうな佇まいながら村ではましな方


大きな体をペコペコさせ頭を下げる長


腰の低い悪い人間には見えない


「こちらこそお世話になります」


そう言った途端土下座し始めるタンさん


「畏れ多いだ…」


正直疲れる…これは俺が王妃の弟という事は隠して王都まで行った方がよさそうだ。


そしてリューリンさんのささやかな手料理を振る舞われて其の夜は一人寂しく布団で寝るのだが


「 ァ…  ィャ…  ァァン~ …… 」 


薄い壁から時折聞こえるのはリューリンさんの甘い声


新婚さんだから仕方ないけどお客が泊る時ぐらい控えろ!!


童貞の俺には刺激的すぎその声で抜いた。


空しい……


挫けるな俺!


王都に行けばリューリンさん以上の美女が俺を待っている。


人妻もいいが、やっぱり俺の好みはロリ系の巨乳


待ってろよ俺のマイスイートハ二ー


新たな野望に燃えていると




「!!」




「クソ! 3ラウンド突入かよ…… いい加減寝ろ!」






そうして異世界トリップ初日の夜は更けて行った。








暫くケント視点でお話が続きます。

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