表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第2章 私の王様
44/70

私の王様






ルインさんと牡丹の君はそれから休暇をエンジョイしたらしくお礼と称しお土産を持って牡丹の君が遊びに来てくれたのだけれど今まで以上に艶やかで美しく幸せで輝いていた。

その美しい姿を堪能しながら楽しい一時を過ごした後の二十日後に牡丹の君が卵を出産したのを知った。 ルインさんなんてグッジョブ!!!


思わず心の中で拍手喝采を送ってしまう。


当のルインさんも困惑しているらしく、これ程連続して卵を産むなど玄武国でも歴史上例を見ないと話してくれたがその顔には常に嬉しそうな笑みで湛えられていたのだった。


私と言えば順調に生理が来ており妊娠の兆候は無いけど牡丹の君さえ2百年以上も待って漸く授かったのだから気長に待つしかない。


そして今だ離宮に住み続け後宮には戻っておらず六ヵ月が過ぎ去ろうとしているある日の午後、何時も通りマッキーから字を教えて貰っているが幼児が書くレベルぐらいには上達したけどマッキーは私の日本の平仮名、私が書ける範囲の漢字をマスターしてしまった……


「マッキー これでいいかなー」


「はい、だいぶ上達してきましたよ。ですが此処をもう少し丸めたほうがよろしいかと」

そう言って筆を持つ私の手をとって筆の運びを教えてくれるのだけどその時に背中や腕に触れるマッキーの胸の感触を密かに楽しんでいる。


ぶにゅぷにゅ~


ううっーーー気持ちい~~~~ 堪らん!


そんな邪まな事を考えていると、またしても邪魔しに来るかのようにフーランがやって来る。


「王妃様!」


「ゴメンなさい! 触ってません 感触を楽しんでるだけなの~~ 」


行き成り飛び込んでくるので思わず謝ってしまう。


「「 …… 」」


呆れたように私を見るフーランと頬を赤らめるマッキー


えっ てっきりマッキーの胸の感触を楽しんでたのがばれたのかと勘違い


「違います王妃様。 丞相様のお屋敷から卵が無事に男子の御子様が孵化されたと知らせが参ったのです」


孵化?? つまり殻を割って産まれたって事!!


「きゃーーーー 本当に!! 万歳ーーー 」


両手を何度も上に上げて万歳をして喜んでいるとある事に気付く


「アレ…… 孵化するのは後四カ月後じゃなかったの???」


「はぁ… 普通ならそうなのですが丞相様の御子様は異例づくしのようで自ら成長を速めて殻を割ったようです」


「それじゃあかなり神力の高い子なの」


「成人した折には陛下に並ぶのではないかと推察されます」


「へーー …… 凄いの?」


「はい、でもこのままでは玄武国が割れるかもしれません」


顔を少し青褪めさせマッキーがか細い声で言う


「つまりチョンマゲに不満を持つ亀族がルインさんの子供を亀王にしようと反乱でも起きるとか」


ありがちな展開だけど


「確実にそのような勢力が暗躍して来るでしょう」


でもそれってあんまり意味がないよね。何しろチョンマゲは私でも分かるくらい王様の仕事に精力的でなくルインさんに押しつけている。


「いいんじゃない。どうせチョンマゲはやる気が無いようだし私も王妃なんて面倒だもの」


「宜しいのですか」


「もしかして二人共、私が王妃じゃなくなったら一緒に居てくれない」


「いいえ私は生涯ミユキ様を主と心に誓っております。お許しいただけるならこの命が尽きるまでお側に仕える所存」


「私も王妃様のお陰で自分らしく生きる事が出来るようになりました。だから何時までもお側に居させて下さい」


マッキー それって女が本来の自分だと言うの、良かった…性転換させて少し恨まれていないか心配だったのよね


「二人共ありがとう。 王妃じゃ無くなっても最低限この離宮は貰ってくいっぱぐれないようチョンマゲに稼がせるから」


「「 王妃様…… 」」


感動すると思ったのに何故か微妙な二人だった。


「それより牡丹の君にお祝を持って行きたいんだけど何がいいのかな」


「そうですね。丞相様なら全て揃えていらしゃるでしょうから」


「美しいお花で宜しいのではないでしょうか…なにぶんにも急な事で後日改めて陛下からお祝の品をお贈りになるでしょうから」


「そうだねマッキー 庭師の人に牡丹の花がないか聞いてくれる」


「はい王妃様」


「フーラン、使者の人に明日の午前にお伺いする事を伝えておいて」


「宜しいのですか陛下にお許しを得ずとも」


そう言われて卵に嫉妬したのを思い出しアレ以来卵に会いに行けなかったのだが…確かに明日は無理かもしれない。


「取敢えずお祝の手紙とお花を送るわ。 後はチョンマゲの機嫌のいい日にでもおねだりするしかないわね」


「そうした方が賢明かと」


「そうと決まれば手紙を書くからマッキーは牡丹の花の手配したら手紙を見て頂戴」


「はい王妃様」


今だに二人しかいない侍女


歴代の王妃は侍女が十人以上いたらしいけど私はフーランとマッキーだけで十分


以前はリューリンちゃんに来て貰いたかったけど人間は駄目だと却下されてしまった。人間差別かと思ったけど寿命が違いすぎて辛い別れが直ぐに来てしまうためらしい


それにリューリンちゃんは病気がちなお母さんと兄弟の面倒を見る為に実家に戻ってしまったらしい。何れ一度は会いたいけど王妃の立場では難しい


神族と人間の命の重さはどうにもならない問題だ。


もし私が人間の寿命しか無かったらチョンマゲとは結婚しなかっただろう


先に死にゆく者は幸せかもしれない


後に残されたものは喪失感を感じ長い悲しみにくれるかと思うと切ない


特にチョンマゲは小さい頃に両親亡くしたようだから……


愛する人にそんな思いをさせるくらいなら憎まれても身を引いて日本で普通のOLをしていただろう。


その場合チョンマゲが死んでいたような気がするけどこの際、結果オーライ?


結果が全てよ!








その日の夕方早速チョンマゲにおねだり


「牡丹の君の赤ちゃんが生まれたんだって! 会いに行きたいな~~」


途端に顔を真っ赤にして怒りだす。


「アレはそんな可愛い者ではない!! 絶対会いに行ってはならん!」


何時にも無く厳しく速攻で却下されてしまう


ルインさんと牡丹の君の赤ちゃんなら絶対可愛いはず


「なんで会っちゃ駄目なの~ 生まれたばかりの赤ちゃんよ」


「余のミユキを狙う者が可愛い赤ん坊なものか!」


狙う


なんでこんなに思い込みが激しいの


相手は赤ちゃんなのに


「顔を見るだけでいいの、お願いチョンマゲ」


「駄目だ! 駄目だ! 絶対に許さん!」


そう言って駄々をこねるよに喚く


「チョンマゲのケチ!そんなチョンマゲなんか嫌い!!」


最近は牡丹の君も遊びに来ないし、深紅の薔薇の君もまだお茶に呼べていないので少しストレスが溜まっていた私


ついカッとしてしまう


お互い子共の喧嘩のようになってしまい、腹の立った私はチョンマゲの膝から飛び降りて部屋を飛び出してしまうとマッキーが追いかけて来るけどチョンマゲは来なかった。


私はそのまま勉強部屋に入りマッキーも閉め出して一人で籠もるのだった。










「チョンマゲのケチ!そんなチョンマゲなんか嫌い!!」


ミユキの愛らしい口から久しぶりに聞く嫌いと言う言葉が余の心臓に突き刺さり呼吸を止めさせ、部屋を出ていくのを引き留められなかった。


嫌われてしまった。


どうしよう どうしよう どうしよう どうしよう どうしよう どうしよう


ミユキに嫌われたら生きていけない


どうしよう どうしよう どうしよう どうしよう どうしよう どうしよう


丞相の子にそんなに会いたいのか


余より赤子を選ぶと言うのか


茫然自失をしているとミユキの侍女が声を掛けて来る。


「陛下、お声を掛ける無礼をお許し下さいませ」


そう言いなが跪いてから話をしだす。


「王妃様は純粋に可愛い丞相様の御子様にお会いしたいだけで決して陛下を蔑ろにしている訳ではありませ」


「煩い! お前ごときが余に口を出すなーーーーーー!」


言い知れぬ怒りを侍女に向け放つだけで神力が刃のように侍女を切り付けてその体に無数の傷を負うがうめき声一つ出さずにその場から微動だにせず耐え忍ぶ


流石に丞相が選んだ女だけの事はある。


「恐れながら王妃様は丞相様の御子様がお生まれになった事で失礼ながら陛下が漸く玉座から降りて二人でこの離宮で静かに暮らせると喜んでおいででした」


「ミユキが」


「そうです。王妃様は陛下の為にこの世界を知ろうと懸命に学問に励み馴染もうと一生懸命頑張っておられます。そんな王妃様が陛下以外の者を愛するなどあり得ましょうか。此処は広い心示され王妃様をお許し下さい」


「余にそのような生意気な口を聞くとは覚悟が出来ておろうな!」


「怒りは全てこの身受けましょう」


暫しの静寂が辺りを包む


侍女は額を床につけ、その潔い良さに清々しいくらいだが


ミユキの為に我が身を差し出すのが気に食わない!


「お前にとってミユキは何だ」


「わが生涯の主と心に決めておりますが、武人としてで疾しい心はありません」


余の臣下でありながらミユキを主として仰ぐのか


「余の前で抜け抜けと良く言う」


「お許しを」


「よかろう、ここは余が折れるしかないだろう」


そもそも余がミユキに敵うはずがないのだから結局会わせるの許していただろう


あまり我儘を言わないミユキのささやかな願いを嫉妬でうち捨てるなど確かに心が狭い


嫌いと言われて当り前だ


「有難うございます」


「フン、お前に礼を言われる筋合いではない」


ミユキは余のものなのに周りの者はミユキを慕うのが面白くない


我ながら心の狭さを改めて自覚する。


そのままミユキの元に行こうとするが侍女が気を失っている事に気が付く


余の怒りを受けてここまで耐えたのだから仕方あるまい、手当はもう一人の侍女がするだろうとそのままにして置くのだった。










部屋に籠もって椅子に座りながら項垂れる


王妃になって実質二年と七ヵ月だけどあまり王妃らしい事をしていない私


チョンマゲは好きにするといいと言って自由にさせてくれて甘やかしてくれるが不安


この世界での知り合い何んて数えるくらいしか居ないし、しかもその人達とは自由に会う事すらままならない立場にいい加減に嫌気がさしていた


立派な王妃は無理だけどせめて公式の場に立てるぐらいには王妃の務めが出来るよう勉強も頑張っている。


チョンマゲに恥を掻かせたくないし少しでも相応しくなりたかった。


だけど私なんか全然相応しくなんかなれないのだ


どうしてチョンマゲは追って来なかったんだろう


何時もなら直ぐに抱き締めてその腕に閉じ込めて機嫌を伺ってくれるのに


やっぱり全然王妃らしくも綺麗でもない私に飽きて来たんだろうか


そんな不安が心を過ぎると次々にネガティブな思考が湧きあがり涙が出て来る。


「うぇーん~~ チョンマゲのバカ しくしく…… うぇぇーん グスグス えんえん……」


そうやって暫らく泣いていると音まなく背後から誰かに抱きしめられる。


ビック!


「すまないミユキ… 余があまりに料簡が狭すぎたから泣かないでくれ」


それは何時も抱き締めてくれるチョンマゲの腕と切なそうな声


「チョンマゲ……」


「明日にでも一緒に丞相の子供に会いに行こう、だから機嫌を直してくおくれ」


そう言って私を抱き上げてその膝に座らせて顔を持ち上げる。


そこには寂しい表情で私を見詰める麗しい夫


それに対して泣いた所為で涙と鼻水でぐじゃぐじゃでより一層みすぼらしい私は急いで両手で顔を覆って隠そうとするがチョンマゲがそれを許さない


「うっ…… 意地悪しないで… こんなみっともない顔見られたくない…」


「何を言う、ミユキは泣いていても壮絶に可愛い」


それはチョンマゲの目が腐っているからだと言いたいけど口には出したくない


だけど可愛いと言われて少しずつ心が落ち着いて来る。


「私は可愛いの」


「この世界でミユキほど愛らしい者は居ないぞ!」


チョンマゲの瞳は嘘偽りがなく本当にそう思っているのが伝わる。


ああ~チョンマゲの目が腐っていて良かった……


その瞳に私以外誰も映して欲しくない


「明日本当に連れてってくれる?」


「ああ。だが見るだけで触れてはならん」


「…… 取敢えずそれでいいよ。 ありがとうチョンマゲ」


チュッ!


「ミユキ~」


「チョンマゲ大好き…… 愛してるよ」


「余も愛しているから、二度と嫌いなど言わないでくれ。余は動けなくなってしまう」


「ゴメン」


そして何時もの如く夕食も食べずにそのまま寝室に傾れ込み仲良く睦み合う


こんな普通の私に誰が横恋慕すると言うんだろう


誰かに盗られないかと心配なのは私の方


周囲は美形だらけで気が気じゃないのにチョンマゲは分かっていないのだ


チョンマゲが王様を辞めれれば二人で世捨て人のように暮らせば、チョンマゲを誰にも見られないし他の綺麗な女性を見せないで済む。


チョンマゲがずーーーっと私を見ていてくれる限り幸せは続く


愛おしい夫に抱かれながら私は永遠の愛の夢を見る。


それは幻のようなものかもしれない


それでも私は信じつづける


その夢が終わるまで





チョンマゲ、どうかズーッとズーッと私を愛してね




それが私の最大の我儘




愛してるよ




チョンマゲ





私の王様








取敢えず第2章はこれでお終い。第3章の予告――ある人間が落ちてきて一騒動が巻き起こるそんなありがちな展開です。おそらく11月から連載しますのでその時は楽しんでくれれば幸いです。 此処まで読んで頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ