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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第2章 私の王様
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丞相と卵と休暇






妻の知らせを聞いて急いで屋敷に戻るとオロオロと顔を青褪めさせた妻が待っていた。


「アンチョン大丈夫かい」


「あなた! 申し訳ありませんお仕事中なのに……でも私どうしていいのか分からなくて……」


今にも泣きそうな程うろたえているので落ち着かせる為にも抱きしめて一緒に長椅子に座り背中を擦ってやる。


「一体何があったのだ?」


「どうしましょ……私の可愛い卵が陛下に殺されてしまうかも……貴方どうしたらいいの  うっううう……」


初めて見るアンチョンの取り乱しように胸が締め付けられる。


「何故、陛下が卵を殺すのだい。 ミユキ様と何かあったのか」


優しく問いただす。


幾ら陛下でも私の大事な妻と卵に理不尽な仕打ちをするならばそれなりの覚悟がある。


「はい…… 」


それから妻の語った話に唖然とする。


「卵の子が思念を使いミユキ様をかわいいと言ったのかい!?」


「それを聞いた陛下は凄まじい殺気を放ち卵を割らんばかり睨みつけるので私は恐ろしく、ミユキ様より卵を受け取って別室に隠しましたの……それから暫らくして無礼を謝る為に戻ったのですが既に姿がなく……」


それぐらいで嫉妬するなど陛下が悪い


「大丈夫だよアンチョン。 恐らくミユキ様が陛下にとりなして下さっているはずだよ」


そう言うと少し安堵の表情を浮かべる。


「ミユキ様が」


「ミユキ様は優しいお方だから卵を殺すなど非道な事をさせるはずがない。私も明日ご機嫌を伺いに行くから何も心配するな」


「ゴメンなさい貴方……ご迷惑を掛けてしまって」


「迷惑などと、 私はアンチョンの為なら何でもしよう。 さあ少し眠るといい まだ卵を産んだばかりで気が高ぶってるおるのだろう」


漸く落ち着いた妻は暫らく抱きしめてやっていると安心したのか寝息をたて始める。


余程混乱していたのだろう


可哀想に


寝室に連れて行き寝台に寝かしつけてから卵の部屋に向かう


厳重に結界の施された部屋に行き扉を開けて入ると中央の台に納められた卵に近ずき、手をかざして神力を注ぐと卵が光り出す


毎日帰って来てから卵に神力を注ぐのが日課になっていた。


まさか産まれて四日しか経たない卵が自我を持ち思念を送るなど信じられないが、試しに語りかけてみる


「お前は悪い子だ母を泣かすなど」


《 ゴメンなさい 》


すると直ぐさまに応じるよに思念が飛んでくる。


「!!」


驚いて言葉が出ないとはこの事かと思わず微動だに出来ずジッと卵を見詰めてしまう


まさか陛下が神力を与えた所為か??!!


「…… 私が誰か分かるかい」


《 ちち 》


凄い、私を父親だと認識している。


「そう父親だ。今日何が起こったのか話してごらん」


《 ミユキ あった かわいい すき 》


すきとは好きの好き!!


僅か生を受けて二十四日しか経っていない命がここまで自我を持つなど信じられず、我が子ながら据え恐ろしい


しかしこのままではアンチョンの気が休まらないので釘を刺すしかないが……


理解できるだろうか?


「よいかミユキ様は我々亀族の王の妃なのだから軽々しく好きとは言ってはいけないお方。 その所為でお前が陛下の悋気に会い殺されるかもしれない。 そうなれば母は嘆き悲しむがよいのか?」


《 いや…… でも へいか きらい 》


「陛下は確かに心の狭い我儘なお方だがこの国で一番神力の高い亀族。産まれたばかりのお前では敵わない相手、強い相手に従うのがこの世界の不文律だと理解しなさい」


《 ミユキ すき ダメ…… 》


「ミユキ様は陛下のものだ諦めなさい」


好きの意味合いが今一どの様に理解しているのか分からないがミユキ様を好きとは我が子ながら趣味を疑う


明らかに陛下の神力が影響しているのではないかと心配だ


そもそも与える神力によって人格が形成されなど聞いた事もないのだが


母親以外の初めての女性として認識したせいだろうか、こうなれば美しい娘を数人揃えて世話をさせれば審美眼が改まるだろう


こうなれば卵の内から早期教育で確りと育てなければ陛下のようになってしまうな予感がする。


我が子の誕生に喜んでいたのも束の間で新たな悩みの種を背負い込んだような気がするのは気のせいだろうか


「兎に角、母と陛下の前でミユキ様を好きなどと言ってわならぬ。分かったな?」


《 はい ちち 》


取敢えず素直な物分かりの良い子のようだと一安心するのだった。








翌日はアンチョンも落ち着くと我が子との会話に喜び安心して王宮に出仕してから政務を終えてから陛下のいる離宮に立ち寄る。


「陛下、昨日は色々ご迷惑を掛け大変申し訳ありませんでした。妻は気にするあまり心労で倒れ今朝も起き上がれないほど気を伏せってしまい、なんとお詫び申し上げてよいかとお伺いに来た次第です」


側にはミユキ様も座っており私の言葉に目を向く


「牡丹の君は大丈夫なんですか!」


「体は異常ございませんが精神的に弱って、陛下に卵を殺されないかと気に病んでいる様子。幼い子の何気ない言葉に反応するなどあまりに大人げないのではないですか」


「むっ そなた余に詫びに来たのではないのか!」


「だから最初にお詫び申し上げましたでしょ」


「そうよチョンマゲがあんな事で怒るから悪いのよ! 牡丹の君が心配だは私がお見舞いに行きたいけどチョンマゲがいるから無理よね」


ミユキ様の申し出は嬉しいが陛下が来てはアンチョンが気が張る。


「心の狭い陛下がミユキ様一人を我が屋敷にお寄越しになるとは思えませんし、陛下をアンチョンに会わすわけに参りません」


「そうよね…… 牡丹の君がこれ以上伏せってはお気の毒だわ」


「ミユキ~~」


そう言って冷たい目を陛下に差し向けると途端にあたふたと顔を青褪めさせる陛下


陛下に反省させるのはミユキ様の言葉が一番


我が妻の憔悴ぶりに比べればまだまだ


「そうだわ! ねえチョンマゲこの際牡丹の君に元気になって貰う為にもルインさんに休暇をとって貰って側に居て貰いましょ!!」


「えっえ~~」


「はっ!?」


相変わらず突拍子もない事を言いだすミユキ様


だが妻の側にいられるのは嬉しいかもしれない


「しかし丞相が居なくては政務が滞る」


「昨日は良いっていたじゃない!国を動かしてるのはルインさんだけじゃ無いんでしょ。チョンマゲの王様らしい姿を見たいわ……それともチョンマゲって無能」


「別段丞相が居なくとも余が丞相の分まで確り国を動かせる」


「ルインさん、チョンマゲが大丈夫だって言うからこの際十日ぐらい休暇をとって牡丹の君とゆっくりマッタリして下さいね!」


「はぁー …… 」


流石ミユキ様、陛下の手綱を確りと握っておられる…陛下の惚れた弱味か


「ミユキ、余は許可した訳では無いぞ」


「いいじゃない十日ぐらい 少しはルインさんを労らないと髪が全部白髪になっちゃうわよ。若白髪の旦那様を持つ牡丹の君が可哀想」


しっ白髪… ここ百年余りに徐々に増えて来ているが  


アンチョンも私の白髪を気にしているのだろうか!!!


すると陛下が私の髪を労しそうに見詰める。


一体誰の所為で白髪が増えたと思っているのだと陛下を軽く睨む。


「確かに丞相には苦労を掛けっ放しであった。 十日は無理だが五日なら休暇を取り妻とゆっくりと過ごすがよい」


「本当ですか!?」


陛下が私を労るなど初めての言葉


「よかったねルインさん。 これで又 子作りに励めるね!」


嬉しそうに言うミユキ様


子作り?? 何の話しだ


まさか休暇を貰えるなど、陛下にお会いしてから初めてかもしれない。


思い起こせば丞相の職に就く前は陛下の世話に追われ、丞相になったらなったで政務に追われ休みなど年に一日休みを取るか取らないかの頻度


生涯休暇など縁がないと思っていた。


五日も取ってもいいのだろうか


仕事漬けの私に言い知れぬ不安が心を襲う


そんな私の葛藤を読んだかのようにミユキ様がけしかけて来る。


「ルインさん偶には仕事を忘れて牡丹の君とラブラブしないと牡丹の君に愛想を尽かされますよ」


アンチョン……


政務に追われ結婚してからもゆっくり過ごす時間も侭ならず王宮に泊る事さえあった私に不満一つ漏らさなかった愛しい妻


アンチョンの為にも二人で過ごすのも悪くない


「それではお二人の御好意に甘えて明日から五日間の休暇を頂きます。政務の方は緊急な事は無いので二人の副丞相補佐がおりますので大丈夫でしょう」


「うむ、分かった余に任せよ」


陛下がこうまで言い切るなら安心だろう。そもそも私より優秀なのだから私が居なくとも立派に国を治められる方なのだ。


ただ単にやる気がないだけ


これも全てミユキ様のお陰なのだろう


私では陛下の孤独を癒せなかったが、こんな普通の人間少女が陛下をこうまで変えてしまうとは思わなかった。


容姿はアレながらミユキ様が陛下の伴侶で良かったと心から感謝してしまう。


「それよりミユキ~ 王の務めをチャンとしたら御褒美が欲しい」


「いいけど、何が欲しいの」


「また、アレをして欲しい!」


「 /// アレってまさかアレの事!! 」


「そうだ、アレ以来してくれないではないか… だから褒美にしてくれぬか」


ミユキ様の顔を見れば顔を真っ赤に染めて恥ずかしがっている。


アレとは何だ????


「もーー 分かったわよ。 でもルインさんの休暇が終わった後でよ」


「ミユキ~ 約束だぞ」


そう言ってミユキ様に抱きしめて恥ずかしがるミユキ様を私の視界から隠すとサッサと帰れと言わんばかりに私に目くばせする陛下


私も長居をする心算もないので目礼をして離宮を辞し、愛しい妻が待つ屋敷に急ぐのだったが、陛下達の言うアレがなんなのか気になる…


恐らく碌でもない事に違いないだろう


それより今は妻との五日間の休暇をどう過ごそうかと想いを馳せるのだった。







そして屋敷に戻ると心配そうにアンチョンが待っていた。


「お帰りなさいまし貴方」


「体は大丈夫かい」


直ぐ体を抱き寄せ、シミ一つない額に口付を落とす。


「陛下は如何でしたか…」


「ミユキ様が取り成していたようで問題なかった。それにミユキ様のお陰で陛下が明日より五日間の休暇を頂いた」


「休暇?? 貴方がですか?」


にわかに信じられず問い返して来る妻


無理もない、結婚して以来ゆっくり一日すら過ごせずに寂しい思いをさせて来たのだから。


「陛下からのお詫びだそうだ」


漸く休暇の言葉を受け入れた妻は


「嬉しい! 五日間も貴方とずっと過ごせるのですね! そう言えばミユキ様がそのような事を陛下に頼んでおいででしたわ」


さっきとは打って変わり華のように笑顔を咲かせる。


そのような会話があったのかと初めて知る。


「そうだ、王都の側は忙しないので賀州にある別荘であの子も連れて家族で過ごそう」


「はい! あの子も喜びますわ。 今日は一杯お話をしましたの」


「ほ… 何を話したんだい」


「主にミユキ様の事を話すと特に喜んでましたわ」


「ミユキ様の」


「あの子もミユキ様の愛らしさに感動している様で、もしミユキ様に可愛い女の御子様が出来たらお嫁に欲しいと、もうそんなおしゃまな事を言うので驚かされます」


そう嬉しそうに無邪気に報告する妻


くらりと眩暈が起きる…


どうやらミユキ様から御子様に乗り換えたようだが、恐るべしは我が子


既に知能と自我は十歳程度まであるのではないか。


陛下は知らないが私ですら自我を認識したのは殻を割って生まれて一年経てから


しかも何故そこまでミユキ様の容姿を感動する程可愛いと言えるのだ??


思えばアンチョンもミユキ様の事を可愛い、愛らしいと連呼する。


初めは陛下の伴侶に対する気遣いだと思っていたが心の底から愛らしいと思っているのに最近気が付いた…… もしや私に審美眼の方が可笑しいのかと不安になる。


「どうしたのですか貴方?」


急に黙り込んだ所為でアンチョンが不安げに声を掛ける。


「あの子の成長の速さに驚いているだけだよ。 それより明日からの予定を二人で話そう」


「それではお酒の用意をしてきます」


そう言って喜び勇んで部屋を後にする妻の姿を温かく見守り、椅子に座り待つ事にする。


我が子の将来を今から憂えても仕方がない


今はミユキ様に感謝し、五日間の休暇を妻と如何に過ごすか考える事にするのだった。













今日でアルファポリスファンタジー小説大賞の投票が終わり、35位の好成績で終わる事が出来、読みに来てくれた人、投票してくれた人達に感謝申し上げます。

後1話で第2章を終わらせて11月位から第3章を始める予定です。

これからも「私と王様」を宜しくお願いします。


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