私と牡丹の君の告知
私が目覚めて既に一月が過ぎさり離宮での生活に慣れて後宮に戻るのが少々面倒くさく感じていた頃、久しぶりに牡丹の君が遊びに来てくれる事になった!
ルインさんに幾ら会いたいとお願いしても中々応じてくれず、この間、私に全裸を見た事をばらすと脅した所為で警戒されているのかと思い、素直な態度を示し続けたお陰なのか漸く合わせて貰えたのだった。
まるで恋人に会うように楽しみ!
マッキーとのお勉強中だったが
「王妃様嬉しそうですね」
「久しぶり牡丹の君に会えるからワクワクして昨晩は眠れ……無いと思ったけど寝れたわ……」
「…… /// 」
相変わらずチョンマゲとの熱い夜はお昼まで熟睡を保証してくれていたけど、私の体がもたないので三日に一度に制限しているんだけど、ついうっかり牡丹の君が来ると嬉しそうにしていたら嫉妬したチョンマゲが襲って来たのだ
女性にまで嫉妬するってどうなんだろう
チョンマゲにしろルインさんは嫉妬深いので神様ってそういう習性なんだろうか
嫉妬されるのはまだ愛されている証拠で
されなくなったらお終い?!
分かっているけど、体は辛いのが現実でもう少しソフトな性生活が送れないかと思案中なんだけど―――思い浮かばないのが現実
精力を削るにはどうすればいいんだろうか?
精力増強剤ならあるけど減反剤なんて聞いた事ないし
あったとしても誰もくれない
周囲は恐らく子供を待ち望んで期待されているのが容易に想像できるから、そう言えば生理がまだ来ていない…… 色々有ったから不順の可能性もあるけどフーラン辺りに相談した方がいいのかな?…… !! そう言えばマッキーにも生理って来るのかな???
そしてマッキーに聞こうかと思うとフーランが牡丹の君の来訪を知らせてくれる。
「王妃様、丞相様の奥方様がお出でに成りました」
「本当! 直ぐにお通しして!」
マッキーは手際よくテーブル―を片付けて、私は椅子から立ち上がり出迎えしようとするが、直ぐに牡丹の君の麗しい姿を見せる。
「ミユキ様御無沙汰しており申し訳ございませんでした」
優しく艶やかに微笑む牡丹の君! 背後にはルインさんの姿が見えないので思いっきりハグして歓迎する。
ガバッ!
「キャー 牡丹の君会いたかった!!」
「私もお会いしとうございました」
二人でひっしとハグし合う
ヤッパリこういう女同士の付き合いはいいわ~~
牡丹の君からは花のような良い匂いして堪らない
「王妃様、 奥方様のお体に障りますので此方に御座り下さいませ」
体に障る?
「牡丹の君何処かお悪いんですか!」
「いいえ……そういう訳でも無いんですが /// 実は今日はミユキ様にご報告したい事が御座いましたの」
顔色も悪く無く、どちらかと言うと頬を染めて幸せそうなのが滲み出ていて何かいい事があったのが伺える
「そうなんですか? 兎に角座ってからお話しましょう」
私に促されるとフーランが椅子を引き優雅に牡丹の君が座るのだがその動作まで美しく王妃のよう、私もせめて達振舞いぐらい王妃らしくしたいので牡丹の君に色々教えて欲しいかも
それより今は報告の内容が知りたいので私は急かすように聞く
「何かいい事があったんですか」
「はい、実は私…先日漸く待望の卵を無事出産した事をどうしてもミユキ様に私の口から報告したかったのです」
「エッ!? 赤ちゃんが出来たんですかーーーー! おめでとう御座います…卵? 出産??? ええっえーーー? 」
出産と聞きおめでただと思ったたけど卵と言う不思議な単語に訳が分からない
「赤ちゃん出来たんですよね?」
思わず聞き返してしまう。
「いいえ、卵を産んだだけで孵化するのは十月後ですわ」
孵化するって卵が割れて中から亀が産まれるの???
「……牡丹の君は卵を産んだんですか!?」
「はい」
にこやかに微笑みながら楽しそうな牡丹の君
「冗談?」
首を傾げてからかわれているのかな?
その様子を見た牡丹の君が噴き出したように笑い出す。
「うっふっふっふふふふーーーー」
「あっ~~ 騙したんですね牡丹の君!」
「酷いですわミユキ様 私は騙したりなど致しません」
「ええっーー それじゃあ本当に卵を産んだんですか!!」
「はい! 何時もミユキ様には驚かされるので偶には私が驚かせたかったのです」
それから知った事実は人間の私には驚愕的な事だった。
卵から産まれるのは亀では無くちゃんと人間の赤ちゃんが卵を割って出てくるそうだ
どうやら神族の殆どは卵から産まれ人間の場合は赤ちゃんで産まれるなんて私には直ぐには信じられなかった。
神様と人間が婚姻を結んだ場合は神様と人間の両方の出産の可能性があるそうで神族の場合は卵で産卵?するので私の場合は卵か赤ちゃん両方を産む可能性あると言う
「私も卵を産むんですか!!!!」
ひぇ~~~ 思わずムンクの叫び
「そうですが必ずとは限りません。もしミユキ様の血が多く出れば人間の御子様をお産みに成るのですがそうなると色々問題がでます」
「やっぱり人間だと亀族の人達が煩いんですか」
特権階級意識の強い世界ではありがちな話
私に対する深紅の薔薇の君の態度が亀族の当然の反応なんだろう
「それも多少ありますが陛下に表立って盾突くような愚かな者はおりません。それより問題は命の重さの違いにあります」
「つまり寿命ですか」
「そうです。非常に悲しい現実ですが神族と人間ではあまりに時間の流れが違うために、先に子供が老いて死んでいてしまう悲劇も起こります」
「もし人間だったらどうなるの」
「殆どの神族は人間に養子に出し育てさせるのが通例ですが、情の深い親は手元で育て成人した時に神族と婚姻を結ばせて寿命を延ばそうとする者もいますが稀です。しかも人間と婚姻を結ぼうとする神族は余程相手を想ってなければ出来ませんわ」
チョンマゲ…
確かに命の半分を差し出すなんて究極の求愛
今さらながらに何て愛されてるんだろうと幸せになるけど、もし子供が人間だったらどうしようと恐怖が湧いて来る。
自分が全く老いないのに子供がどんどん年をとり死を看取らなきゃならない運命が定められているなんて何て残酷なんだろう…
さすがの私も悲しい気分に陥ってしまう
「牡丹の君、折角のお目出度い話なのに何でこんな話しをするの…」
「陛下とミユキ様にとっては避けられない問題です。確かに杞憂に終わる可能性もありますが、この際亀族について知って欲しかったのです。私達亀族は神族の中でも神力が高いのですがその半面出生率が低い為に人間と交わりなんとか数を保っておりますが、今だ純粋な亀族の血を尊ぶ風習は根深い物があるのです。 私は純粋な亀族の出でしたが夫の御両親は人間の血が入った言わば神位の低い出ながらその当時でも夫は丞相と言う国での最高の地位であってでさえ私達の婚姻は反対されてしまいましたの」
そう悲しそうに言う
ルインさん程の男性でも人間の血が入っているからと言って反対されるなんて確かに差別意識の強い世界
「牡丹の君は気にしなかったんですか」
「お恥ずかしい話ですが小さい頃より厳しく育てられ何れは陛下の側室に成る為に後宮に入内するのを産まれた時より決められておりましたから人間の血の入った亀族など下位のものだとバカにしていましたわ…」
陛下の側室??
「ええっ!! 牡丹の君ってチョンマゲの側室予定だったの!!」
「はい、何れ何処かの誰かがミユキ様のお耳に入れるでしょうから言っておきますわ。でも私は既に十八人も側室のいる後宮が恐ろしくって逃げ出したく成人してから毎日泣いて暮らす内に、とうとう陛下との顔合わせの時に泣きだしてしまいましたの。それを優しく慰めてくれたのが夫のルイングゥイでお互い一目で恋に落ちてしまい、その時に人間の血を引くからといって差別していた自分が如何に愚かだったか気付かされました」
美男美女だからお互いに一目惚れしても可笑しくないし、設定がまるで王宮恋愛ドラマか小説を地でいっている。
「以外、ルインさんの略奪愛! なんてロマンチックなの。でもチョンマゲはごねなかったの」
普通なら牡丹の君程の美人をむざむざ逃すなんて勿体ないよね
「陛下は最初っから私になど興味などあらず夫に言われイヤイヤ会ったみたいですの」
確かに後宮には深紅の薔薇の君を筆頭に十八人の美女が取り揃えられていたからな…
しかもチョンマゲの趣味は特殊
牡丹の君はそれとは正反対
「そうなんだ…でもどうやって結婚を許して貰ったの?」
「陛下のお力添えと夫が両親を説得して、最後には祝福して貰いましたわ」
嬉しそうに頬を染めるが
私には絶対両親を脅して裏工作を巡らせるルインさんの姿が浮かんでしまう
「そう言えばルインさんとは何時結婚したんですか」
「二百八十六年前に成ります」
二百年以上前…
私にしたら江戸時代の出来ごと――ー時間間隔のギャップが半端無い!
でもその期間赤ちゃんが出来ないなんて本当に出生率が低いんだと納得してしまう
「そんなに… でも良かったですね赤ちゃんが出来て。その内私にも卵を見せてください」
「はい、陛下のお許しが出れば是非に」
「私も何時かはチョンマゲとの赤ちゃんが欲しいけど、出来るかな」
チョンマゲはどうやらこの世界でも最高クラスの神様みたいだから子供を望むのは難しいのかもしれない、チョンマゲは子供が欲しいんだろうか?
「きっとミユキ様なら… と言いたい所ですが現実はそう甘くは御座いません。これは夫から聞いた話なのですが陛下はあまりに甚大な神力を持つ為に孤独なのだと。お小さい頃に両親を亡くされた所為で取り残される恐怖を知ってしまった…そして己が持つ命の重さが全ての存在に置いて行かれると…そう思い込んでしまったようです。 まだ陛下が王位を継ぐ前に狂ったように次々と女性を求められた時期があったそうですが誰も妊娠する事なく三十年以上が経った時にピタリとその行為をお止めになったそうです」
おのれ~チョンマゲの嘘つき
自分から抱きたいと思ったのは私だけと言っていたくせに
もしかってキスの話も嘘なんだろうか
いや…それよりも、子供欲しさに女性を抱くなんて失礼な話だけどそれだけ孤独だったのチョンマゲ
「そんなに子供が欲しかったの」
「子供と言うより自分を越える者が欲しかったようです。取り残される孤独を救ってくれる存在を」
「そんなに寂しかったなら… どうして今まで伴侶を迎えなかったの? そうすれば生涯一人にはならないはずなのに」
「愛してもいない者と数千年の時を過ごすのは苦痛と感じたようです。 陛下が心をお許しになさったのは、私の夫とじいやのルイングゥイ様だけで即位した頃には夫を伴侶に迎えようとしていたようですよ」
「チョンマゲってルインさんが好きだったの!!」
「恋愛感情とゆうよりは家族愛だったようですけど、夫もそこまで面倒を見れないとお断り申し上げたようです」
なんて滅茶苦茶チョンマゲ
「あっはははは…… チョンマゲにとってルインさんは特別なんだ 」
「夫にとっても陛下は特別ですのよ。私が卵を産んだ時も最初は私を労り喜んでくれましたが最後に言った言葉に私は結構陛下に対して嫉妬してしまいましたわ」
「なんて言ったんですか?」
「 『これで私が居なくなってもこの子が陛下にお仕えしてくれるだろう』 自分が死んでからの事まで陛下を心配なされるなんて妻としては妬けます」
可愛く拗ねる牡丹の君
「確かに女としては自分だけを大事にして想って欲しいですよね」
「我儘でしょうか」
「私もそうですから同じですよ」
そして二人で見詰め合い笑い合う
「うっふふっふふっふっふふふふ」
「くすくすくすくす」
そして突然思いついたように牡丹の君が言う
「そうだわ!! ミユキ様、何れ私達夫婦は先に逝ってしまいます。だから今度卵を産むとしてら私はミユキ様の為に子供を残しますわ」
牡丹の君の言葉で嬉しさのあまり泣いてしまいそうになるがぐっと堪えて一、少々怒ってみせて言葉を返す。
「牡丹の君はまだまだ若いんですから今からそんな悲しい事を言うのは無しです! でも子供はバンバン産んで下さいね! 私も絶対子供を産んでお互いの子供達を結婚させましょ!」
「まー 素敵! だったら絶対にもう一人は産まないといけませんわね」
「はい、頑張って下さい!」
それから卵を産む時の様子や卵が受精し産卵するまでにたった二十日間しか掛からないのに驚き卵の世話などの色々教えて貰う
そしてあっという間に牡丹の君の帰る時刻になり別れを惜しみながら次は牡丹の君のお屋敷に行く事を約束して別れるのだった。
その晩、私はチョンマゲにファーストキス疑惑を問い詰めようと思ったけど此処は不問に付す事にした。何故かと言うと、私に甘えるように食事を食べさす事をねだる夫の幸せそうな顔を見たら何も言えなくなってしまう。
寂しがりやな神様
チョンマゲ…… 愛は何時か変化してしまうかも知れないけど家族愛だけは生涯持ち続けよう
その為にも絶対子供を持とうと密かに誓うのだった。