私とマッキー
美しい湖の辺に建てられた離宮が気に入った私は暫らく此処に滞在している。
深紅の薔薇の君の襲撃により警備は強化されているらしいけど私には分からず呑気に暮らしては……いない
何しろ夜のお勤めが激務過ぎて幾ら神力で癒して貰っても芯からは取れず日々食べて寝るだけの怠惰な生活。拒否したいけど深紅の薔薇の君の襲撃を知ったチョンマゲが怒り狂いそれを宥めるのに自分の体を差し出したようなもの
あのルインさんを甘く見ていた私は直ぐ後悔したのだった。
深紅の薔薇の君襲撃後、転寝から目覚めた私はフーランに頼んでお風呂を入った後寛いでいると
「ミユキーーーーーーー 大丈夫か!! 何処も怪我をしておらぬか!?」
夕方帰って来たチョンマゲに抱きしめられ、そっちの方が背骨が折れて息絶えてしまいそう。
「……っくっ苦しい…… 死ぬ……」
「何!死にそう!! 侍女何をしておる医者をよべーーー!」
「っ違うー チョンマゲの所為…… 」
漸く自分の力の強さに気付き腕を離してくれるが直ぐに優しくその腕に閉じ込める。
「あの女がミユキに酷い事をしたと聞いて直ぐさま飛んで来た!」
あの女とは深紅の薔薇の君の事だろう
「誰に聞いたの!?」
「丞相だ。あの女は直ぐさま斬首し親族共々死刑だ!」
ルインさんめ~~~ 確かにチョンマゲへの口留めはしなかったけど
「駄目! 私と深紅の薔薇の君はお友達になったんだから殺すなんてしないでお願いチョンマゲ」
すると何故かキョトンとする。
「深紅の薔薇の君とはあの女の事か…… 」
「そうよ、だって真っ赤な薔薇の女王様のように綺麗だから付けたの。ピッタリでしょ」
だがチョンマゲは気に食わない様子
「ずるい!! 余にもそのような名を付けて欲しい!」
チョンマゲも壮絶に綺麗だけど私にははチョンマゲと言う強烈なイメージに固定されて今さら他は浮かばない
チョンマゲはチョンマゲしかないのよね……
此処は誤魔化そう
「チョンマゲは私の国に伝わる伝説の美男の名前で由緒正しいのよ! だからチョンマゲは男性に対する最高の美辞麗句なんだから」
「そうなのか?」
大嘘だけど……神様に嘘をついて罰があたるかな
「そうよ! チョンマゲほど麗しい男性は私は知らないよ」
これは真実
そう言うとポッと頬を染める可愛い夫
「///余もミユキほど愛らしい女性は知らない」
それはチョンマゲ限定だろうけどヤッパリ嬉しい
「ありがとうチョンマゲ。 その可愛い妻に免じて深紅の薔薇の君の事は不問にして」
「それはならん!」
何時もならこれで折れてくれそうなのに今日は余程怒っているのだろう
私はチョンマゲにしか効かないお色気作戦で攻める事にする。
他の男にしても相手にされないか引かれる??
腕を首に回して上目遣いで夫を見詰めて
「お願いを聞いてくれたら夜に良い事してあげるから…… お・ね・が・い 旦那様」
「良い事!!」
ゴックリと唾を飲むチョンマゲ
「耳を貸して」
そして私はチョンマゲの耳に今夜してあげるサービスを耳打ちする
現代の性知識はネットを使えば簡単に知る事もできるし、ティーン雑誌でもその知識量は半端無く処女だった私も知識だけは豊富、いわゆる耳年増なのである。
だから男性がして欲しい事は大体理解しているつもり
ブッ!
途端に鼻血を吹きだす……
「ミユキが余にしてくれるのか!」
「/// うん…… 恥ずかしいけど私のお願い聞いてくれるならして上げる……」
ここで少し恥じらうのがテクニック
あんまりあっけらかんとしていては色気もへったくれも無いから
あくまでも知識として知ってるだけだから!
「うっ…… だが…… 」
しぶとく躊躇うけどもうひと押し
「 /// 今夜はいっぱい可愛がって旦那様……」
「ミユキーーーーーーーーーー!」
そしてチョンマゲは堕ちた……
深紅の薔薇の君は許され一件落着なんだけど私は疲労困憊
しかしこれもあの美しく気高い女王様を守る為と思っていたけどソロソロ限界で休息が必要
私も癒しが欲しいのよ、癒しが
今日も昼ごろに目覚めるとチョンマゲはチャンと王宮に行って仕事をしてるのでいない。
「お早うございます王妃様」
そして目を覚ますうと直ぐにやって来るフーラン
「お早うフーラン」
そして何時ものように抱っこして貰い風呂場に連れて行かれ体を洗って貰うけど既に恥じらう元気すらない私
一応チョンマゲが出勤?する前に神力を注入してついでにキスマークも消して貰っている。夜毎付けられるキスマークは上から重ねられマジきもい状態だったので、キスマーク禁止を言うとあっさり私の体からキスマークを消し去ってからもう一度付け直すイタチごっご……
でもあのキスマークだらけの体をフーランに見られる事は無くなったのがせめてもの救い
そして着せ替え人形のよう服を着せられてからまた抱っこして移動
チョンマゲに見られると煩いけどご飯を食べるまで歩く元気すら無い
「大丈夫ですか王妃様」
「お腹すいた…… 」
「昼食は既に用意してますので存分にお食べ下さい」
先に食べればいいんだけどどうしてもお風呂が先なのは譲れない
フーランに抱っこされ廊下を行くと久しぶりに管理人さんの頭が見えるのでつい声を掛ける。
「あっ 管理人さん久しぶり~ 」
相変わらず跪いていて顔が見えない
「王妃様! ご無礼をお許しをー 直ぐ消えますのでご容赦を」
「……フーラン管理人さん何いてるの?」
「恐らく許可なく王妃様の側にいる事言ってるんだと思います」
「ええ~ 側を通るのも駄目なの」
「はい、しかも男など言語同断で許可なく王妃様の視界に入る事すら許されません」
「面倒くさいな…今許可するから顔を上げて」
ハッキリ言って管理人さんの顔に興味があった。 何時も顔を床に付けてるから顔を一度も見ていない、人間見れないと思うと寄り一層見たくなるもの
しかし中々顔を上げてくれない??
「マッカーサングゥイ、王妃様が御所望だ顔を上げよ」
すると飛び上がらんばかりに顔を上げると顔は真っ青
だが矢張り美形だった。茶色い髪に赤い瞳のジャニーズ系
可愛い美少年タイプ
しかも今にも泣きそうに目を潤ませて何とも保護欲?守ってあげたくなちゃうような子
しかしマッカーサーなんて厳ついサングラス掛けてパイプを咥えた歴史上のおじさんのような名前で似合わない
ジャニーズ系だからマッキーが良いわ!!
「マッキー そんなに畏まらなくてもいいのよ~ そうだご飯一緒に食べましょう」
「「 マッキー?? 」」
チョッと砕けすぎかな?
でもマッキーがピッタリ
「王妃様なりません。陛下以外の男と食事は色々問題がありますのでお控えください」
相変わらず硬いフーラン
「そうなの… 牡丹の君も遊びに来れ無いって言うし、深紅の薔薇の君も当分は会えそうも無いから、偶には他の人と話したかったのに 」
「王妃様……」
「そうだ―!マッキーが女になれば良いんだわ」
「「 ハッ!!? 」」
「チョンマゲもルインさんも女に成れるんだからマッキーもなれるでしょ?」
ところが青い顔で首を振る。
えっ無理なの?
「恐れながら体を変化させるのはかなりの神力を必要としますので私もですがマッカーサングゥイも無理で御座います」
あの二人ってそんなに凄いんだと改めて感心する
「じゃあ 女装でいいからお願い一緒にご飯食べて」
綺麗過ぎる人ばかりでマッキーぐらいの可愛いタイプは珍しい
そう……マッキーは癒し系
オドオドしたところも美形らしくなくまるで小動物ような愛らしさがあった。
そしてとうとう二人は折れて私の願いは叶えられたのだった。
そしてマッキーの女装はなんの違和感も無い!
可愛い美少女でとても成人男性とは見えないのがチョッと気の毒なくらいだ
衣装は私のを貸してあげると言ったのに丁重に断られ、フーランと同じ侍女用の着物で白い着物に紺色のひだスカートのような物を着ていてとてもシンプル。
位が高い者だけが着る内掛けは二人は着ていないがその内にヒラヒラエプロンを着せようと企んでいる。
メイドさんポイでしょ?
何時ものように美味しくご飯を食べているけどヤッパリ一人
王妃の私と同席するのは憚られるらしいのでお給仕をして貰う事にしたのだ
女装で恥ずかしくプルプル羞恥心に震える美少年
癒されるわ~~
このまま侍女にしたいくらい
「マッキーはこの離宮で働いて長いの」
「はい/// この離宮が完成してからなので一年半になります」
「一人でこんな広い離宮を管理してたんでしょ。大変そう」
「いえ、ここの者達は良く働いてくれますので私は指示をしたり帳簿をつけたりするぐらいでしたので」
頬を染めモジモジするしぐさは女の子
生まれる性別を間違えたんじゃないだろうか
それに対しフーランは男性的でカッコいい騎士のような女性
面白い組み合わせ
このまま侍女に成って欲しいかも
でも女装なんて男の子には屈辱的だよね……悪い事したかな
「ゴメンねマッキー 無理に女装させて。 今度はチョンマゲに許可を取ってお茶でも飲みましょ」
「いいえ! 滅相もありません。王妃様が喜んで下さるなら何でも致しますが同席だけはご容赦を」
「そお…… なら今度湖の周辺を散歩したいから案内をお願いするわ」
「はっ…… はい ですが私は」
何故か下を向いてしまい暗くなる
代わりにフーランが説明してくれる。
「この者は先日のミュンチュングゥイ様の一件で責任をとりこの度、職を辞することに成っています」
「……」
「えっえ! そうだったの!?」
初めて知る事実
深紅の薔薇の君の事件は色々と後を引くけど結構旨くおさまったと思っていたのにそんな被害者がいたなんて知らなかった、マッキーだけが辞めさせられるなんて不公平
「ルインさんに言って何とかして貰うわ」
「王妃様お止め下さい。私はこのまま此処を辞めた方がいいのです」
「なんで?」
「私がこのまま此処に居ては何時かまた迷惑をおかけしてしまいます」
「迷惑? どちらかと言うとマッキーの方が迷惑受けた方じゃ」
「違うんです。ミュンチュングゥイ様が王妃様の元に押し掛けたのは私が父に教えた所為なのです。 そんな私が王妃様の側に居ればまた父が接触して来て色々聞き出そうとするはず」
なんか訳有りの子のようだけどとても素直で良い子そうだ
この場合は父親に問題があるのだろう
何やら政治的匂いがするのでどうしよう
う~~~~~ん
「ここを辞めてどうするの」
「はい、一応教師でもしようと思っています」
教師か
なんだか生徒に虐められそう、悪ガキどもに授業妨害に遭ってオロオロするマッキーが容易に想像できてしまう。
中学生の時に気の弱い英語教師の若い先生がヤンチャな生徒の標的に成り授業妨害でPTAの問題になり数か月で辞めて行ったけど一部女子には惜しまれていた。
一部の女子とは腐女子達、憐れな英語教師は腐女子達の妄想の糧にも成っていたのだった……ヤンキー攻め教師受け萌えと友人が騒いでいたっけ
私もその友人作の小説を読んだけど英語教師は現実より凄い目に遭っていて悲惨だったけど最後はヤンキ―のリーダとハッピーエンド
どんな展開!!と思ったけど友人には言えなかった。
マッキーそんな不条理な目に遭いそうで心配
いや絶対そう言うタイプ←単なる決めつけ
手元に置いて守ってあげたくなる。
母性本能をくすぐるのだろうか
「じゃあ私の家庭教師をしなさい」
「滅相もありません……私のような者が王妃様のお側にいられません」
しかもフーランまで止めに入る。
「王妃様、男が側に仕える事は許されておりませんし家庭教師の件は丞相様が至急手配しております」
「だって手配するのにも人選が必要だとか言って中々決まらないじゃない」
「もう暫らくのご辛抱を」
「それならマッキーが女の子に成れば良いんでしょう?多分チョンマゲに頼めばしてくれるわ! 後はマッキーのやる気次第」
「私のですか」
「そう。 親と縁を切って別人に成るのよ、そして女性に成って名前もマッキーに改名後私の家庭教師となれば問題無いはず」
我ながらなんて良いアイデア!
「別の自分」
何やら考え込むので興味はあるようだ
そうよ変身願望て誰にでもある。
特に自信の無いタイプはそういう意識が強いはず
「良く考えて見て、親と縁を切るのも性転換するのもかなりの覚悟が必要で直ぐには決められないだろう」
ところが私が言い終わらない内に返事をする。
「成ります!」
今までの態度とは正反対に即決してしまうので驚く
「エッ!! いいの!?」
親と縁を切るのを即決させる親ってどんな奴!
私も過去何度も破天荒な母親と縁を切りたいと思ったけど実行はしなかったわよ
「はい、陛下がお許しに成るなら宜しく願い致します」
ガッバ!
そしてまた凄い勢いで平伏する。
「良いわよ。でも私の家庭教師に成るんなら平伏禁止よ」
「はい王妃様」
オズオズと立ち上がり頭を下げる。
これ位は仕方ない、なんと言っても私は王妃様と言う立場
ヤッパリ対等に話そうと思うと牡丹の君か深紅の薔薇の君しかいなさそう
ああ~ 牡丹の君に会いたい!
それより今夜どうやってこの件をチョンマゲに納得させるか考えるのだった。