深紅の薔薇の君は女王様
私の目の前には殴りこんで来た時とは打って変わっり、お上品にお姫様ぜんとした深紅の薔薇の君
見た目は三十代前半でとうがったており実際の年齢は不明ながら牡丹の君よりは年上でしかもチョンマゲより年上にも見える。
私が勝てる点と言えば正に若さと性格の良さだけって感じ
だけどお色気むんむんの妖艶な美女だけど私は牡丹の君の方が好み
なのでルインさんの女性の趣味の良さは感心したけどチョンマゲは服のセンスといい女の趣味も今一残念…… うっ!…だから私なんだろうか……落ち込む。
私もお茶を飲みなが値踏みするが相手もその腹そこを見せないような表情で私を観察しているようだ。 被害妄想では無く絶対バカにしてるのは分かっている。
「王妃様は異世界の方だと我が父より聞いたのですが異世界ではかなりの家柄のお生まれですの?」
「至って庶民の出ですが、私の暮らしていた国では亀族のような貴族もいませんし政治も一般庶民から選挙と言う制度を取って庶民が選出した人間が国を統治してるんです」
「人間だけの世界でしかも王が居ないなど野蛮な世界です事…どうせ獣の皮を着て地を這いずりまわっていたのでしょ」
何を持って野蛮? 文明でいえば私の世界の方が発達していると反論したい
「確かに神族のような力はありませんけど私達人間には知恵がありましたので馬より早く走る乗り物や鳥のように数百人を乗せて飛ぶ事が出来る乗り物を造り出せました、四十階建ての建築物が建ち並ぶ科学の発達した世界です。特別な力を持ってなくても人間はそれを補い進化して行く力があるんです」
そう反論するとムッとし不機嫌な顔をする。
「ま~ それでは王妃様はそれらをお創りになる事が出来るのですね。 素晴らしいですわ。是非此方でも造って下さいな」
「それは出来ません」
「それでは、なんだか眉つばのようなお話ですわね」
「一人の人間がそれを造り出すのは不可能です。特殊な知識や技術が必要で部品一つづつを専門の者達が造っていき分業で組み立て一つの物を分業で製造していますから。例えば深紅の薔薇の君が着ていらっしゃる衣装を造るにしても糸を紡ぎ染め織り上げてから縫い子さん達によって仕上げられるように何人もの人の手を経て造られています。それに私の向こうの世界でしていた仕事は建築資材を扱う会社でその経理の一部を任されるだけでしたから、空を飛ぶ乗り物を造れといっても無理です」
「なんだか言い訳がお上手なのですね。出来ないなら出来ないと正直に言えばいいでわないですか」
きーーーー ムカつく!!
こういう相手はいくら言っても疲れるだけなので流すのが一番だと心に言いきかせる。
「そうですね確かに私は一人では何にも出来ない人間です。だから色々な人に助けて貰ったりしながら王妃を務めて行きたいと思います。ですので庶民の出の私は王妃が何をしなければならないか分からないので深紅の薔薇の君にも教えを乞いたいと思っています」
かなりへりくだり下でに出る。
王妃としての威厳はどうせ地を這っているんだからどうでもいい
「王妃の仕事と言えば陛下の為に常に着飾り女としての務めを果たし子を産めばいいのです。公式の場でも陛下の横に控えて華を添える存在ですが、その点王妃様は少々……」
そう言いながら私の顔や体をチラチラ見やる。
どうせ華の無い顔に体ですよーー
しかし王妃様ってそれだけの存在なの
日本の王様つまり天皇は象徴でしか無いけどその皇后様も一緒に色々な慰問活動や外交を行っていた気がするし、偉ぶった所も無い優しそうな天皇御夫妻
イギリスのダイアナ妃なんて慈善事業に世界中を駆け巡り福祉に力を注いだ皇太子妃の例もあるからそんな王妃を目指しても良いかもしれない。政治的な事に口を出すとルインさんに睨まれそうだし
だけど何処の王室も出産にかなり神経を尖らせ重要事項
「矢張り子を産むのは重要なんですか」
「当り前ですわ、陛下程の巨大な力をお持ちになった王は歴代の中でもおりません。その血を受け継ぐ御子様は必然と素晴らしい力が期待できますから次期亀王となるのは必至ですわ、だからその伴侶となる女は神力の高い由緒正しい亀族から選ばれるべきなのですが、残念な事に人間をお選びになってしまった以上は御子様に期待は出来ませんわね」
如何にも私をチラリと見て残念そうにする
王妃である私に失礼な態度
幾ら美人でもこんな性格の悪い女は御免こうむりたい
チョンマゲが王妃に選ばなくて正解だわ!
そう言えばチョンマゲに子供はいなかったの!?
十八人も側室が居たなら子供も何人もいそう
「そう言えば深紅の薔薇の君か他の側室達の間には子供はいないのですか」
すると途端に顔を赤らめきついめの声で言う。
「そんな事も知らないでよく王妃の座に就きましたのね! なんて厚顔無恥な女」
此方が下でに出ていれば何処までもつけあがって行くようで
私もいい加減堪忍袋の緒がきれそう。
こっちだって色々事情があるのよ、オバサン!!
少しぐらい挑発しても許されるはず!
「申し訳ありませ。何しろこの世界に落ちて直ぐ熱烈に求婚されて婚姻を結だ瞬間二年間も眠りに就き目覚めたばかりなのですが陛下に朝も夜も無く求められこの世界知る暇も無く」
一応頬を染めて俯く
途端にガチャッとカップの割れる音
顔を上げると嫉妬で鬼の様な形相で手には割れたカップが握り潰されている。
ヒィェーーーーーーー! 恐い
陶器のカップを握りつぶすなんてどんな握力!!
チョッと遣り過ぎた!?
危ないと感じたのかフーランが間に入る。
「ミュンチュングゥイ様、お加減がお悪いご様子なので今日の所はお引き取り下さい」
フーランは深紅の薔薇の君の腕を持ち上げ立たせようとするがその手を打ち払う。
パッシ!
「無礼者! そなた如きが妾に触れるな」
おおー 流石女王様!
そう言って深紅の薔薇の君は立ち上がり私を見降ろすようにして捨て台詞を言う
「妾はそなたを王妃など認めぬ! そのような貧弱な顔と体では直ぐに飽きられ陛下も目を覚まさられるであろう、そして何れ側室に返り咲き陛下の御子様を宿すのは妾じゃ!」
ぐっさりと胸に激痛がまたしても走る
私が気にしている事を言われ二の句が告げれないが、此処で傷付き黙っていてはこれからやって行けない
本当は仲良くしたいんだけど
私も頭に血が昇り口を止められない。
売り言葉に買い言葉
「確かに平凡な私ではその可能性があるかもしれませんが、その場合若くて気立ての良い姫を側室に迎えて戴くよう陛下に進言しますわ」
その言葉が言い終わるや否や目の前が真っ赤に染まり部屋全体が炎に包まれた。
かっ火事だーーーー!
初めて見る生の火事
慌てて立ち上がろうとするとフーランが私を抱き上げ飛びず去り壁際に置くとそのまま剣を握り炎に突っ込んで行く姿は勇ましいがこのままでは大火傷を負ってしまうし、深紅の薔薇の君はどうなってしまったの!!?
「フーラン!」
ところがさっきまで轟々と燃え上がる炎はフーランが飛びこんで直ぐに消え去り、現れたのはフーランにより取り押さえられた深紅の薔薇の君、両者とも無傷な様でホッとする。
深紅の薔薇の君はフーランにより気を失っている様で床に倒れているがフーランは容赦なく何処から取り出したのか銀の鎖を体に巻き付け終わると私に跪いて詫びて来る。
「申し訳ありません。 この痴れ者の攻撃に御身を晒してしまいなんとお詫びすればよいか」
「攻撃?? まさか今の炎は深紅の薔薇の君が私に!!」
「はい、もし王妃様に伴侶としての不可侵の力が働いていなければ今頃火達磨になり息絶えておりました」
神様だけあって炎を出すなんて流石だけど
本気で私を殺すきだったと知りゾッとするがそこまで追い込んでしまったのかと反省
遣り過ぎちゃった…オバサンに年齢を言ってはいけなかった。
「ところで、不可侵の力て何?」
「はい、陛下の伴侶となったお方には誰も傷一つ負わす事は不可能なのですが私も油断してしまい如何なる処分もお受けいたします」
初めて聞いた私の体の性能!! 凄いと喜んでばかりはいられず
思いつめたよう目を伏せ続け声も低く思いつめている様子
なんだかこのまま切腹でもしてしまいそうな勢い
私の所為でそこまで責任を感じるなんて冗談では無いので急いで止める。
「フーランは悪くないから! 深紅の薔薇の君をお茶に誘ったのは私だし挑発して怒らしたのも私だからフーランは悪くないのよ」
「ですがこの事は丞相様に報告し処分を受ける所存」
フーラン頭が固すぎ
待ってよ…フーランでさえ罰を受けるのなら深紅の薔薇の君はどうなってしまうの!?
「深紅の薔薇の君はどうなるの…」
「王妃様を殺そうとしたのですから陛下に対する反逆者。 直ぐさまに打ち首及び親族も唯では済まないでしょう」
うえ~~ん マジですかそれ
一般庶民の私ならこうまで大袈裟にならないはず
今さらながらに自分の立場を自覚してしまうが今さら遅い
此処はフーランに黙っていて貰うしかない
「物は相談だけど今の事は無かった事にしましょう! 私は怪我をした訳じゃないしー 未遂だから三人が黙っていれば問題ないわ」
ニッコリと営業スマイルでフーランにお願いするが無情にも侵入者に一刀両断されてしまう。
「そうわいきませんよミユキ様」
背後から聞こえるルインさんの冷たい声
「「 !! 」」
振り返ると、まるでタイミングを計ったように現れた
「げっーーー 何故ルインさんが居るの!?」
何時の間にか背後にルインさんが立っている。
何時も音も気配も無く現れるから心臓に悪い今さらながらの登場のしかた。多分瞑道を潜って来たんだろうけどチャン扉をノックして入ってよ…
「丞相様… この度の不祥事いかような処断でも受ける所存です」
「駄目! フーランは悪く無いの」
「フーラングゥイを処分する心算はありませんから御安心を。 それよりあのミュンチュングゥイを一瞬で倒すとは流石です。これからも気を緩める事無くミユキ様にお仕えなさい」
処分なしと聞き安心するが、ルインさんの言葉を聞けば深紅の薔薇の君は結構強いんだろうか?
「寛容なお言葉ありがとうございます」
「それより問題はミュンチュングゥイ。陛下の留守を狙いミユキ様を訪れるなど言語同断、しかもミユキ様に炎を向け焼き殺そうなど父親共々責任を取って貰うしかないでしょう」
そう言い冷たい眼差しを意識の無い深紅の薔薇に向ける。
本気だ
「まさか打ち首て事は無いよね」
「それが妥当かと。残りの縁者も王都を追放し流刑地で過ごして貰う事になるでしょう」
私の世界では信じられない処遇!
裁判を受け法律に定められた刑を受けても最高刑は死刑
親族まで及ぶなんて理不尽
そこまでの罪なんだろうか
「其処までしなくても良いんじゃない? 未遂で終わったんだし」
軽い調子で取り入ってみるが
「そんな事をすればミユキ様が侮られこれからも足下をすくわれる事になります。それに今回ミュンチュングゥイがこの離宮に来たのも計画的。 王宮で問題を起こさせ陛下をミユキ様から引き離したのですから、目的がなんだったにしろミユキ様に刃を向けたのは事実でこの決定は覆せません」
キッパリと言い捨てる。
流石に悪女は侮れないけど、命まで奪いたく無い
「ルインさんの冷血漢! 命まで取る事無いじゃない。深紅の薔薇の君を挑発し過ぎた私も悪いんだから許してよ」
と泣き付いてみと、思わない所から私の行為を無駄にされる。
「そなたの情けなど妾は要らぬ! このような憐れな姿を陛下に晒すくらいならこの場で首を切り捨てるがよい!」
何時の間にか気が付いた深紅の薔薇の君はその豊満な体を鎖で縛られると言う倒錯的な体を横たわらせ私とルインさんを睨みつける。
庶民の情けは無用とばかりな女王様
貴女はそれで良いだろうけど庶民な私には夢見が悪すぎますからなんとしても阻止させて貰います。
「この者もそう言っておりますから、良いではありませんか」
「駄目! そんな事をしたらチョンマゲに私の裸を見た上に触った事を言い付けてやるから」
途端に顔を青褪めさせるルインさん
「何を仰るんですか! あの時の私は女性体ですから何の問題もありませんし、触れたと言っても体を拭いただけ」
このうろたえぶりからもうひと押しだと確信
「チョンマゲにそんな言い訳が効くかどうか試しに言ってみようかしら~ それと…牡丹の君にも言っちゃおうかな~」
牡丹の君の名を出した途端にガックリと膝をつくルインさん
「クゥ… 此処でこの者を許して後々後悔しても知りませんよ」
「この場合深紅の薔薇の君を殺しちゃう方が後悔するから」
「分かりました。ミユキ様のお好きなように…… ですがそこの二人、今の話を余所に漏らせば命はありませんから覚悟して下さい。次はミユキ様の言葉は聞き入れませんから」
「うんいいよ。この事が漏れたら二人の命乞いはしないわ」
私もルインさんが最大限譲歩してくれたのが分かるのこれ以上我儘は言えないし、フーランはともかく、深紅の薔薇の君がそこまでバカな女なら庇う必要は無く自業自得で良心も傷まないよ……多分
しかし深紅の薔薇の君は納得いかなかい様子
「人間ごときに憐れ身をかけられるなど妾の恥、そなたが殺さぬなら自害するだけじゃ」
そう言うと鎖を引き千切ろうと狂女の如く暴れ出す
「何故切れぬ! 妾は高位の亀族の姫、一介の虎族の女の戒めなど」
「いい加減にしなさいミュンチュングゥイ。ミユキ様に助けられた命を大事にしなさい」
「己……丞相… 妾を利用するだけ利用して後宮を追い出した佞臣が。その女を使い陛下を意のまま動かそうとしておるのじゃろ!」
それは有り得ない気がする。どちらかと言うとチョンマゲの被害者?
「利用していたのはミュンチュングゥイそなた。 そもそも娘を王妃に据え私を追い落とそうとしてるのはそなたの父親で、この件に父親である大理府長官が一枚かんでいるのは分かってます。一族共々路頭に迷いたくなかったら大人しく屋敷で余生を暮らしなさい」
余生!?
まるで深紅の薔薇の君がもう女の盛りを過ぎた様な失礼な言い方
確かにオバサンだけど十分若くて美しい熟女!!
「ルインさん! 女性に対して余生とは何ですか。 深紅の薔薇の君は確かに性格は悪いですけどこの弾けんばかりの豊満な体に妖艶な美貌をこのまま腐らせるなんてもったいない事を言うんです!」
「えっえ~~??」
私が食ってかかると目を点にするルインさん、ところがあの気の強い深紅の薔薇の君が泣きだしてしまう
「口惜しい…… 人間ごときにバカにされるなど…… うっうっうう……」
そのまま泣き崩れてしまう
少々言い方が拙かったよう
しかもこんな縛られるなんて屈辱的姿に女王様も気が弱くなってしまったのかも
絶対に縛っても縛られる立場なんて似合わない
「フーラン 深紅の薔薇の君の鎖を解いて上げて」
「しかし」
「解いて上げなさい」
ルインさんの言葉で深紅の薔薇の君を縛る銀の鎖が一瞬で消えてしまう。
これが神力何だろうけど私にはマジックのよう
私は恐れず近づき深紅の薔薇の君が床に泣き伏せるのを頭を怒られそうだが撫でてあげる
拒否されると思ったけど泣き続ける深紅の薔薇の君は気付いていないのかもしれない…
「深紅の薔薇の君には涙は似合いません。貴女は毅然と咲く薔薇のような女性なんですからこのままは枯れてしまうのは早すぎます。そもそも陛下は私のような普通顔の胸の無い女が好みなんですから深紅の薔薇の君のような美しい人が選ばれるはずが無いんです」
「陛下の好み……」
「振り向かない男を追い続けるなんて美貌の浪費。このままでは美しさは老い衰えるばかりで勿体ないです! そこまでの美しさは財産、それを維持し続ける為にも若い前途ある亀族の男を捕まえ婚姻を結んでその美を永続させて欲しいのです。親の思惑に振り回されて自分の人生と美しさを浪費していいのですか」
「美しさの浪費」
深紅の薔薇の君は漸く私と目線を合わしてくれるが涙で潤んだ赤い瞳は婀娜っぽく普通の男なら瞬殺! 若くは無いけど年増の色気は凄まじい
「 /// そうです! 今の深紅の薔薇の君をみれば全ての男共が平伏しその美しさを讃える事間違い無し! 私が男なら深紅の薔薇の君を女王様とお呼びしたいくらい」
「妾が女王… /// 」
「はい! 深紅の薔薇の君は正に女王様がピッタリ! この世の男共の女王様になって下さい」
「……」
すると暫らく沈黙が続き考え込むが、その情熱的な赤い瞳に新たな情熱の灯が灯るのを見る。
そして突然、すっくりと立ち上がり私を見降ろす姿は正に女王様
「確かに私の美しさを理解できない陛下など妾から捨て去り、王妃様に差し上げますわ」
本当に地で女王様気質に惚れぼれ
「それでこそ深紅の薔薇の君」
そしておもむろに踵を返し扉に向い帰ろうとするので声をかける。
「今度お茶会にお誘いしても良いですか」
するとピタリと立ち止まる。
「仕方がありませんわね! 王妃様がそこまで望まれるなら行って差し上げても良くてよ /// 」
そう言いながら耳は髪のように真っ赤
これぞ女王様ツンデレ?!
「はい! その時は是非深紅の薔薇の君の美しさを堪能させて下さい。待ってますから」
「その時は妾の美しさに平伏すがいいわ」
「はい!」
良かった女王様は自信で満ち溢れていなければ
SМは嫌いだけど女王様プレイ?は楽しい!!
そんな私達を唖然と見詰めるルインさんとフーランに全く気付かない私は手を振り深紅の薔薇の君を見送りながら
もしかして私って深紅の薔薇の君を攻略しちゃいそう??
などと呑気に思うのだった。