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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第2章 私の王様
30/70

普通な私と騎士な侍女







危なかった…もう少しでチョンマゲに流さられてしまいそうになってしまった。


腹が立つ事にキスのテクニックも半端無くプロよ!!


一体どれだけの数をこなして来たんだろうか


何せ側室が十八人もいたんだから


チョンマゲのどスケベ!!!


「王妃様 今日の御衣裳は此方で宜しいでしょうか」


そ言いながらフーランさんが何処からか持って来たのはピンクの内掛けで白い菊の花があしらった物で子供っぽいような気がするけど折角用意してくれたので着るしかない


この世界に来てからピンクを着せられる事が多いので拒絶感は薄らいできた


そもそも決して嫌いな色ではなくどちらかと言えば憧れの色


「それで良いです」


「ご希望がおありなら遠慮なく仰って下さいませ」


ニッコリと優しげに微笑みにうっかり見惚れてしまう。


フーラン…さんを一目見てこの人は白百合の君だと瞬間思ってしまった。


先ずはその真直ぐに伸びた美しい銀糸のような髪は穢れた物を寄せ付けないように神々しい輝きを放ち、切れ長な目にはアメジストのような美しい紫色の瞳が光り凛とした意志の強さを感じる。薄い唇はなんとなく無機質に感じるがそこから発せられるテノールな声に痺れてしまう。


宝塚の男役をすればトップ間違いなし!! しかもノーメイクでいける。


男っぽいとは違う凛々しさが漂い、姫に仕える女騎士というイメージがピッタリと嵌るのだ……こんな綺麗な人が私の侍女なんて初めて王妃になって良かったと思えた。


でも知らない人が見れば絶対に王妃と侍女を取り違えるのは確実だ


牡丹の君と言いなんて美形ばかりなんだろう


かえって自分の普通さが個性に思えて来る……


「それじゃあ一つ良いですか!」


「はい、何なりと」


「貴女の事を白百合の君と呼んでも良いですか!?」


白百合の君は目をパチクリとさせ押し黙る。


どうしよう…引かれてしまったのだろうか、牡丹の君は喜んでくれたから調子に乗ってしまっていたのかも知れない


「とても美しい愛称をお付け頂き嬉しいのですが、私めは王妃様の侍女ですのでどうか名前でお呼び下さい」


「では、フーランさんでもいいですか」


「侍女に敬称は無用ですのでフーランとお呼びを」


恭しく頭を下げそれしか受け付けないというような拒絶を感じ諦める。


王妃と言う立場は存外孤独なのかも


徐々にこの美人侍女を攻略して行けばいいのだ


何しろこれから長い付き合いになりそうだしルインさんが選んだ人だから悪い人では無いはず、恋愛シュミレーションだと思い楽しもう


念のため言っておくが恋愛シュミレーションをしたのは弟のお勧めを一度しただけ、女の私が二次元の可愛い少女を落として行くのは中々面白かったけど危ない世界に嵌りそうで封印した。


何しろ彼氏も出来ずに男がする恋愛シュミレーションに熱中する女なんて悲しすぎるよ~~~


こうなったら侍女には色んなタイプの美女を集めリアル疑似恋愛シュミレーションをしようかと閃く


どうせ王妃をするなら楽しまなくっちゃ!


「フーラン それじゃあ着替えを」


「はい王妃様」


着替えを手伝て貰うのはリューリンちゃんで慣れているが私の裸を見られるのは羞恥心が湧く。何しろ胸の無いのが主な原因


人並みにあればこうまで恥ずかしく無いんだけど


牡丹の君のようなスタイルなら見せびらかさんばかりに晒すんだけど


そう言えばリューリンちゃんはどうしているんだろう、アレから二年経ったんなら一六歳で結婚適齢期…無事結婚できただろうか。私の侍女になりお給金がアップしたと喜んでいたのに私が居なくなりお給金が下がってしまったのではないかと心配になる。


ルインさんに次にあったら絶対聞かないと


まだ結婚していないなら、また侍女をして貰いたいかも


着替えが終わると次は髪を結って貰う。両サイドをふっくらと盛りトップに上げて留めから可愛い小花の髪飾りをあしらい、耳には桜の花が三つ連なったデザインのイヤリングを着けられる。


もっと派手に装飾品を着けられたらどうしようかと思っていたけどこれなら許容範囲


「お化粧は薄くて構わないので」


「はい 王妃様のお肌はお美しいですから紅だけに致しましょう」


おおーー誉められてしまった!!


うがった見方をすればそれしか誉める所が無いのかも


私のような普通の人間が王妃なんて嫌じゃないんだろうか


いまいち読めないのよねフーランは


フーランの美しい顔を間近で堪能しながら見詰めていると少し頬を赤らめる。


おや…照れてる?


これだけ綺麗なんだから見られるなんて慣れていそうなのに…気のせい?


「お疲れ様です。これで宜しいでしょうか…とてもお可愛らしいですよ」


そう言ってフーランが鏡を出し来るので思わず自分の姿を見てしまう。


うっ!


二年前と変わらない自分の顔


さっきまで別次元のような美しい顔を見ていたせいでそのギャップにのた打ち回りたい衝動をおさえ、思わず落ち込んで俯いてしまう


これは何の罰???


深雪! こんな事でくじけちゃいけない! これからこんな事が死ぬまで続くんだから一々落ち込んでいちゃ駄目よ!


そうよね私は王妃なんだから毅然としないと!


そうよ!負けちゃ駄目よ。


こうなったらトコトン美女を集めて私のハーレムにしてやる!


ある意味自虐的な決意する。


「王妃様…何処かお加減でも悪いのですか」


心配そうにフーランが聞いて来るが心の中で応える。


はい顔が……


流石に声には出来ない。


自虐モード続行中な私


「ちょっと眩暈がしたけどもう大丈夫です……」


「それなら宜しいのですが、では別室に食事が用意してありますので此方に」


眩暈がしたと言った所為か私の手を取り立ち上がらされ、そのまま移動するのだがフーランは背が高く多分180㎝くらいで姿勢もいいので騎士にエスコートされるお姫様気分


チョッと衣装が重いのが難だけどこれからは毎日こんなに仰々しい恰好かと思うと気が重いがその内慣れるだろうか?普段は寝巻きのような一重の着物で過ごしたい。


長い廊下をエスコートされ通された部屋には既にチョンマゲが座っておりテーブルには美味しそうな朝食が所狭しと並べられている。現金なもので食事を目の前にした途端お腹が無性に空いて来るから不思議


「チョンマゲお待たせ」


「ミユキーー!」


私を見るや否や瞬間移動のように私の前に来て抱きしめて来る。


ムギュ~~


「なんと可愛い~~  侍女に変な事はされなかったか?」


変な事??


「何かされる訳ないでしょ。 それよりご飯食べようお腹すいちゃったから離してよ」


「うっう ミユキが冷たい」


「さっき変な事したからでしょ」


フーランは女性で私に何をすると言うんだろうか、男だとしても私に不埒な事をする気にはなら無いでしょ…恋は盲目だと良く言った物だ


だけどチョンマゲは私を離そうとはせず抱き上げてお姫様抱っこをしてそのまま椅子に座る。


「ちょっと! この体勢は何!? 恥ずかしいから止めてーー /// 」


部屋には至って冷静な顔をしたルインさんとフーランが控えているが止めようとはしない。


見てないでどうにかして欲しく、ルインさんを見るが視線を逸らされ無視を決め込むよう


何時もは平気でボカスカ殴ってるくせに、絶対に何か裏取引をしたに違いない


フーランはチョンマゲに何か意見するなんてとんでもない人間だろうし自力で何とかするしか無いよう


「だって余は寂しいかったのだ…二年間もミユキが寝ていたからもう片時も離れたくない」


かっーーーーーーーーーーー ///


なんてストレートなの


恥ずかしさで頭に血が昇り思考回路がショートしてしまい恥ずかしいお願いを許してしまう。


「今日だけよ /// 」


「ありがとうミユキ!  それでは早速ア~~~ン 」


「はぁ??」


それはどういう意味?


いえ…分かっているけどこの際スル―したい!


「余はミユキに食べさせて貰うのが夢だったのだ…… 」


綺麗な瞳を潤ませてそう言われたら無下には出来ない


うっ…… 毒を食らわば皿までもと言う諺がある。


この場合悪事では無く羞恥プレイだけど


そしてチョンマゲの希望通りに食べさせてあげるが恥ずかしいのは最初の頃だけで食事に夢中になると平気になってしまう


「これ凄く美味しい! チョンマゲも食べてみて」


といいながら同じ箸を使いチョンマゲに口に持って行くと美味しそうに食べてくれる。


「うむ 確かに美味しい」


「でしょ!」


私がこんなラブラブ新婚夫婦をしてしまうなんて思ってもいなかった


矢張りチョンマゲのスキルが高いせいだろうか


そうやって楽しみながら二人で料理を完食するのだった。











―侍女の呟き―


私はフーラングゥイ、亀族の中でも下位の出自ながら神力の高さから武官を目指し軍に所属していたのですが出自の低さから出世は望めないもののそれなりに満足した日々を過ごしていました。


そして突然に丞相様より直接お声を掛けて戴き王妃様の侍女をさせていただく事になり有り難く拝命したのですが護衛では無く侍女? 不遜ながら聞き返してしまいました。


「王妃様は人間でしかも此方の世界の者では無い普通の少女」


「異界のお方なのですか!!」


噂では大層お美しい女性で亀王様が溺愛するあまり後宮に閉じ込めて誰にも触れさせない程。そして亀族の姫では無く人間だとは聞いていたがまさか異界からいらっしゃったとは……どおりで出自も容姿も不明な訳だと納得する。


「各府の長官達は知っていますが王妃様は陛下との婚姻を済まされ二年間眠りに就いて今日漸くお目覚めになったのですが信用のおける侍女が見つからず取敢えずそなたにやって貰いたいのです」


命の調整に二年! 流石に亀王様だと神力の高さに今さらながらに畏敬の念が湧く


「仰せとあれば。 しかし私は武官であり王妃様に満足戴ける程のお世話が出来るか不安なのですが」


「それは大丈夫。王妃様は気さくな方故に我儘は言わないだろうし、そなたには護衛としての任もやって欲しいのだ。王妃様が目覚めた事を嗅ぎつけ近づこうとする不届きな者を見張れ、特に下働きの者に注意をせよ」


多分此方が本来の役目なのだろう


王妃となればその権力のおこぼれに預かろうと蟻のように群がるのは目に見えており、その側近や侍女となれば選定が難しい


私は下級亀族の出で出身血も王都から遠い州の出で白羽の矢が立ったのだろうと納得する。


「それと王妃を見ても驚かないように……そして後宮での事は決して外部には漏らさない事。 そなたの職務に対する誠実な姿勢は定評があるので期待しています」


「勿体ないお言葉有難うございます。 誠心誠意王妃様にお仕えする所存です」


それから直ぐに後宮に連れてかれたのには驚いたが、その日は邪魔だと亀王様に追い返されてしまい王妃様を溺愛している噂が真実だと知る。


後宮を後にしながら、あの麗しい亀王様に愛されるとはどんなにお美しいお方なのだろうかと期待していると


「余り期待し過ぎて顔に出しそうなので忠告しますが王妃様のお顔は普通ですから。そなたの趣味に沿えないと思います」


「丞相様……」


私の性癖を知られていた事に蒼白になる。


「悪いとは思いますがそなたの事は全て調査済み。同性が恋愛対象であるからこそ選びました」


「宜しいのですか」


「王妃様に手を出さなければ良いのです。異性愛者の侍女を付けた場合の方が問題、王妃付きの侍女となれば陛下との接触が避けられずその場合必ず陛下に懸想するでしょう。そして普通顔の王妃に比べ自分の方が美しいと思った侍女がどういう行動をするか想像がつくでしょう」


「はい」


亀王様に取り入ろうとするか、王妃様に嫉妬の余り危害を加えるのが容易に想像できる。確かに一度だけ御拝謁した亀王様のご尊顔は想像を絶する美しさだった。


しかしその亀王様の王妃様が普通顔??!!


丞相様が嘘を言っている訳でなく真実なのだろう


どんなお顔の方であろうと誠心誠意を持ってお仕えしようと心に誓うのだった。








翌朝早速王妃様にお目通しになった時は丞相様の言われた通りの普通の少女だったがその黒い瞳と髪に驚いてしまう。生まれてこのかた見た事の無い珍しい色合いで神秘的に映り興味が湧く。


そして亀王様の美しさに慄いてしまう……正に究極の美、此処まで美しいと引いてしまうのは私だけだろうか?


「貴女の事を白百合の君と呼んでも良いですか!?」


小さな瞳をキラキラとさせ聞いて来る王妃様


白百合の君!


何とも美しい響き


侍女ごときに愛称を付けてくれるなど有り難き幸せなれど主従のけじめは付けなければならないので丁重に断らせて貰うが、気分を害さないかと思ったがフーランと呼んで下さりホッとした。


成人前に高位の亀族の姫の元で行儀見習いに出されていたのだが、その姫は美しいが性格が高慢で我儘のため苦労した。それに比べ王妃様は素直で可愛らしお方で良かった。


そしてふっくらとした可愛い唇に紅をさしているとジッと見られドギマギしてしまう


どうしたのだろう


私の好みはふくよかな肢体の気の強そうな女性


王妃様とは正反対のはず


きっと子犬のような穢れの無い黒い瞳に中てられたのだ。


だがこのように可愛い女性もよいかもしれないという気持ちが湧いて来る。


そして小さな可愛い王妃様の手を引き食堂にお連れした途端に背筋がゾクリとして亀王様を見れば凄まじい殺気の籠った目で射抜かれ素早くお手を離し後ろに控える。


直ぐさま王妃様を抱き締めながら私を睨んで来る目に浮かぶのは嫉妬


恐ろしいーーー 


睨まれている間生きた心地がしなかった。


自分でもよく気を失わなかったと感心してしまう。


そして目の前で繰り広げられる亀王様と王妃様の甘甘ぶりに茫然とするしかない


さっきまで私を睨んだ亀王様とは別人で王妃様を膝に乗せながらだらしが無く鼻の下を伸ばして、王妃様の手から食事をお取りになる亀王様。


亀王様がこんなお方だったとは…… 


王位に就いた時は不正や意に介さない臣下を全て粛清した王だとされ、近年では亀の姿をとり政務を放棄していたが、何処で知るのか謀反を企てようとする亀族を容赦なく自らの手で討ち取る絶対君主として恐れられているとはとても思えない


丞相様はまるで意に介して無く平然としたお顔


確かに此処での事を外部には漏らせないと納得する。


しかしある意味王妃様も凄い


亀王様を目の前にしながら萎縮されず、亀王を非難するような言葉を平然と仰るので亀王様の悋気に触らぬかと気が気では無い


これまでこのような口をきくなど王妃様しかいないだろう


普通の者なら確実に打ち首だ


それだけ王妃様は愛されているのだと思い知る。


もし私が王妃に手を出せば瞬時で首が飛ぶのが容易に想像できる。


もしかして王妃様を膝に乗せいちゃつくのは私への布石なのだろうか


手を出すなと言う


そして仲睦まじいお二人を見て私もこんな可愛い恋人が欲しいと思うのだった。












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