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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第1章 私と王様
3/70

崖っぷちな私






トイレを済まして羞恥心から何とか立ち直り、袋を漁りながらラジオを点けてみる事にした。


何処かのラジオ放送局の電波を拾って使用言語を聞けばある程度の情報が分かるかもしれない!


しかし一つ問題がある……ラジオなんてハッキリいって初心者。


「ラジオなんてどうやって使うの? スイッチを入れるだけで良いんだよね」


昨今、情報源は携帯があれば十分な時代…ラジオの利用者なんてどれだけいるんだろう?

取敢えず、スイッチを入れてみると変なノイズしか聞こえない


ガッーーーッガガガッーーーーーー


どうやらスイッチを入れただけでは無理なようなので説明書を読むしかないようだ


面倒くさ……


ラジオの入っていた箱から説明書を取り出して読んでみると割かし簡単な物


どうやらこのダイヤルを回して周波数を合わすようだけど、AM?FM?何それ???


よく分からない事は無視してダイヤルを少しづつ回しながら周波数を探る


ガガガキュ―――――キィ―――――ギイイ――――ガッガーーーーー


10分程粘ってみるけれど全然合わない、もしかして放送局もない辺鄙な場所なの?


でも眼下には大きな街並みが見える。


ラジオは本来の役目を果たさず、嫌なノイズしか聞こえない


ガガガッーーーーガガガッーーーーガガガッーーーーガガガッーーーー


うるさい!!


使えない、使えない、 内の課のリストラ寸前の課長より使えない


うるさい雑音が課長を連想させる


この間のミスを私のせいにして皆の前で怒鳴られた事を思い出してしまい、ムカついたのでラジオをおもむろに掴みあげて、課長の顔を思い浮かべ


「このアナログ頭の役ただず!」


思いっきり地面に叩きつけてやる。


パッコーーーーーン コロコロコローーーーー


ラジオは壊れたかと思ったが、柔らかい地面にバウンドしながら転がりとうとう崖から落ちてしまった。


まるで未来の課長のよう


少しだけ罪悪感が湧く


確かに課長は嫌いだったが、業績不振で内の課から一人リストラ者が選ばれたのが課長だったのだが……今思えば50代で失業で妻子にも逃げられる予定の可哀想な親父


もう少し優しく……?……いや待って何かに引っかかるのは何?


会社、そう会社だわ


昨晩は火曜日で今朝は水曜日!!!


無断欠勤してしまう~~~~~


どうしよう、携帯が無いから会社に連絡が出来ないと言うより、ここから帰れるかすら分からない状況


このままでは、リストラされるのは私なの!!!


あの口ばかり達者で仕事が出来ないチビでデブで唯一髪がふさふさなのが取り柄の親父の代わりに私がリストラなの??


「あの課長を救ってしまったの!! 嫌ーーーーーー」


せめてダンディーなおじ様ならまだ許せたけど


あいつの代わりなんて~~~~


此処へ来て何度目かの絶望感が襲う


順風満帆の平凡人生がこんなに儚い物だったなんてしらなかった。


今は青い空を茫然と見るしか無かった。


空はどこまでも青く雲は白い、この空の下の何処かに日本があるはず


「 ………… 」


暫らく空を眺めるしかなかったが、太陽は私の間上まで昇り何時までもそんな非生産的な事をしていても仕方が無いので、取敢えず降りる努力をして見る。泣くのはもう少し努力してからしようと思う


母は子共の頃泣く私に『いい深雪、泣いたからって何も変わらないの、泣く前に考えて行動してそれで駄目なら泣きなさい。そして又立ち上がるのよ!』と事あるごとにスポコンのアニメのセリフのような事を良く言った。


実際泣いたからといって、玩具も買って貰えなかったし、弟の世話も減らないし、お小遣いも増えなかった。家の親に関しては泣き落としは効かないと小さい頃から教え込まれ、大きくなるにつれては可愛い女の子しか男に泣き落としは効かないと思い知った苦い思い出のある私


だから私が泣くのは最後に駄目だと思った時に決めている。


あの課長の陰険な小言にも涙一つ見せ無かった私は女子社員に賞賛されたが、課長には虐めがいのある女だと目を付けられた気がする


だから私は努力して、女子社員のネットワ―クを使い秘書課のお姉さま方に上層部の方々にそれとなく課長のミスなどや女子へのセクハラ、パワハラを小耳に入るぐらいに囁いて貰ったのだ。その成果なのかリストラの筆頭リストに載った。


地味な入社一年の女子社員が課長のリストラに暗躍しているのを知っているのは極一部の女子社員だけ、それだけあの課長が嫌われているだけなんだけど。


リストラ勧告された課長の怒鳴り声も私相手に増えたような気がしたけどもしかして感ずかれていたのだろうか?


ハッ!


思考が課長に戻ってしまった、今はこの山から降りる事が先決!


非常袋から軍手を取り出して手に嵌め、足に包帯を巻き付ける。そして目の前にそびえ立つデコボコした岩山を横に移動しながら下に降りられないか試す事にする。


体力は普通だと自負しているけど岩山を命綱無しで降りられるかな? 先ずは練習として目の前の岩に登ってみる事にした。


「こんな事なら友達に誘われたフリークライミングジムに行けば良かった」


先ずは手で岩を掴みよじ登って見るが軍手だと思ったより掴みずらいのが分かったので指先を救急セットの鋏で切り落としてやってみるとさっきより使い勝手がよかった。


「これなら登れそう」


唯一痩せている事が自慢の私は支える体が軽いので何とか二メートルまで登り次に降りてみただけでかなり体力を使い、喉の渇きと空腹が酷くなってしまう。


グゥ~~~~~~~


「これは体力と食料がある内に何とかしないと確実に餓死だわ……」


レジャーシートを敷いてその場に倒れ込む。


最悪は降りている最中に力尽きて落ちて墜落死、下は森なので木に引っ掛かり助かる可能性はあるけど無傷とはいかないだろうし


どうやら私の選択肢は餓死か墜落死、運が良ければ助かるの三つしかないみたい


グゥ~~~~~~~


危機的状況でもお腹は空くらしい


非常持ち出し袋からパンの缶詰とアルミパックの長期保存米を取り出して、アルミパックの封を切ってから水を注水線まで入れて60分置くだけで五目御飯が食べられるけど時間が掛かるのが難点


パカッ


その間待っていられないのでパンの缶詰を開けて齧り付くとあっという間に胃袋に納まってしまい、水を少し飲む。


「食料は長期保存米が2パックと氷砂糖100g、水がペット2本……」


食料を考えると降りるとしたら明日かも


この際降りた時の食料は考えない事にする。側には大きな街があるので働き口を見つければ何とかなるし、最終手段として体を売れば何とかなるかと思っている。


女として今一魅力に欠けているのは理解してるけど少しは需要があるはず


少し空腹が治まったのでもう一度岩登りにチャレンジする。


生死が掛かっていれば人間努力を惜しんでいられない


今回は3mまで昇りそれから降りてみるが、矢張り降りる方が難しい


これが直角の絶壁なら無理だったけど傾斜がある分足場があって何とかなる。


それを二回繰り返して降りるコツを何とか掴み止めておく。後はご飯を確り食べて寝て明日に備える事にする。


運動の後の冷めた五目御飯は美味しかった!


夜はエビピラフで朝はワカメヒジキご飯を食べ角砂糖は非常用にする事にした。


今は雑念を捨て、岩山を降りるイメージトレーニングに勤しむのだった。










空から落ちて来た可愛いあの娘は見ていて飽きない


表情をクルクル変え、赤くなったり青くなったりしているさまも愛らしい


大きな袋から色々な物を取り出してとても興味深く、銀色の小さな箱から変な音が鳴り何をする物なのかと見ていたが突然、娘は癇癪を起して投げつけ下に落ちてしまたので結局何の道具か分からず仕舞い――後で拾っておこう


その内、何やら余の甲羅を登ったり降りたりと遊び始める……矢張り幼いのだろうか?


そのあどけない姿を楽しみ、早く声を掛けたかったが今のこの姿では無理な話で言葉も通じないだろう。心話を使えば良いのだが余の精神波は大きすぎ人間の少女の精神を壊してしまいかねない


何としても少女と意思疎通がしたいチョングゥイは少女が時折こぼす言葉と自然と漏れ出て来る思念を探り少しづつ言葉を理解して行った。


何といってもチョングゥイは神様、やれば出来る男だが如何せん怠け者で全てが面倒くさいのだから、少女の言葉を理解しようなど天変地異の如く変事なのだった。


少女は遊び終わると食事を始めそれはそれは美味しそうに食べるので、久しぶりに空腹感が襲う


そう言えば最後に食べたのは三ヵ月前に王宮で食べただけで、それも丞相が食べろと煩く言うので仕方なく食べたのだ。


神様なんだから別段食事をしなくても生きていられるのに


「そんな訳ないでしょう! 陛下の場合は食い溜めしてるだけですから!!」


と怒られてしまった。


本当にうるさい奴だが余の代わりに国政を取り仕切ってくれているのであまり無下にも出来ない。


この少女が毎日食べさせてくれるなら毎日三食をきっちり食べよう


『チョングゥイ様、あ~んして』


箸に摘まんだ料理を口に持って来てくれそれを食べる余


パック


『美味しい?』


可愛く微笑みながらそんな事言われたらご飯を何杯でもいけるだろう。


妄想が膨らみあんな事もこ~んな事したくなる。


そして本日二度目の排泄行為!!!!!


誰も見ていないのにやたらと恥ずかしがる姿がなんともいえない


うっ~~~~~~~ 堪らん!!


直ぐにでも押し倒したい!!


我慢が出来ずこのまま少女を王宮に連れて行き余の閨で思う存分味わいたいが……王宮には大勢の男がいるのを思い出す。誰にも見せたくない! 


しかも口煩い丞相が少女に色々干渉してくるのは、目に見えており面倒くさいし、奴は余ほどではないが美形…他の男に気を取られては堪らない


確か後宮には数人の側室がしぶとく残り我が物顔で幅を利かしおり、魑魅魍魎女達の巣くう巣窟などにあんな可憐な少女を連れては行かれない


王宮も危険なので何処か離宮を建ててそこで二人で住めば良いでわないか!


自分の思いに浸っている内に何時の間にか少女は就寝していた。


体には銀色の布のような物が掛けられ袋を枕に気持ちよさそうにスヤスヤ寝息を立て寝ている。


ああ~ 添い寝したい!


余は魂の一部を切り離し人型の幽体になり少女の側に降り立ち、暫らくの間、あどけなく寝る少女の寝顔を堪能してから王宮に向かう。


王都から離れた場所に少女の離宮を建てさせる為に丞相に会いに行くのだ


少女の事を知られないようにどう誤魔化して離宮を建てさせようかと考えながら夜空を飛んで王宮に向かったのだった。





王宮の丞相府の建物を目指すと丞相の執務室からは灯りが漏れており勤勉な男はまだ仕事をしているようだ。窓ガラスを通り抜け部屋に入ると机にしがみ付き一人書類の作成をしているが余の気配に気付いたらしく顔をあげるや否や小言が始まる。


「へっ陛下ーーーー何時お出でに?!! それより何時までぐうたらしてるんですか! いい加減王宮に戻り仕事をして下さい! せめて王宮の玉座に座りながらぐうたらいて下さい! 陛下がこのままなら私も考えがありまよ…丞相の任を辞したいと思います!! 」

凄い勢いでまくしたてるので耳が痛い


どうやらかなり追いつめてしまったらしい


二百年あまり政務を押し付けたのだから無理もないかもしれない


初めはあまりに伴侶を娶れと煩いので嫌がらせの心算で亀の姿で政務を放棄したのだが思いの他快適な生活で二百年もズルズル来てしまった。


見れば若々しかった丞相は、少し老けこんだようだ。


緑の髪にはひと房の白髪が見える。


「余が悪かった。これからは毎日政務を以前のようにしよう」


詫びた途端に驚愕する丞相


「どうしたのですか陛下? ぐうたらし過ぎてとうとう頭に蛆でも湧いたのですか!!」


「五月蠅い! そんな事言うなら亀のままだ」


「冗談です! 本当に政務にお戻り頂けるのですか……」


「余に二言は無い」


「オォー――屈折二百年この日が来るのをどれだけ待ち望んだか…うっううーーー」


突然泣きだす。冷静沈着な男だったと思ったがよる年波には勝てないのだろう…年を取ると涙もろくなると言うしな。


「しかし条件がある」


「条件ですと?」


「政務をするにしても王宮では心休まらず寝れない、王都の側にある湖に離宮を建て夜はそこで休みたいのだ」


「分かりました。それなら明日より直ぐ着手しましょう」


この男がこう言えば大丈夫だろう


「任せたぞ。明日又来る」


それだけ言い残しサッサとあの少女が眠る実体である亀の姿の元に戻るのだった。








残された丞相ルイングゥイは一人考え込む


「可笑しい… これは何か陛下に隠し事があるに違いない」


ぐうたらな陛下が態々私の所に来て離宮を作れなど変な話だ、何時もなら心念を送り呼び付けるのが通常、しかも政務もして離れた離宮へ移動して寝るなど面倒くさがり屋の陛下が考えるなどあり得ない!! 指一本すら動かすのを億劫がるあの陛下が……


「何かあるな」


二ヤリ


仕事のし過ぎで疲れ果てた顔に人の悪い笑みを浮かべるのだった。










持ち出し非常袋は非常持ち出し袋でしたので訂正しまいた。

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