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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第2章 私の王様
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目覚める私と待つ王様





ここは天帝様が治める世界で四つの国に分かれており、その一つ玄武国は亀王様が治める割かし平和なのんびりした国だった。


しかし最近亀王様は元気が無く溜息を付く毎日


その原因は愛しい伴侶になった異世界からやって来たミユキ様が二年も眠り続けている所為で、最初の一年は目覚めるのを楽しみにしながら待っていたが一年が過ぎ月を重ねて行くうちに段々不安になって来たのだ


「何故ミユキは目を覚まさぬのだ…」


すやすやと眠るミユキの黒い髪は既に腰の辺りまで伸びており、それを毎日櫛で梳いて手入れをしている亀王チョングゥイは目を潤ませ泣きたいのを済んでの所で耐えている。


以前ミユキの前で泣いた時に男のくせに泣くなと叱られたからだ


女々しい男だと思われたくないので例えミユキが寝ていたとしても泣く気にはなれない


命の調整には一年あまりだと天帝も言っていたが二年は長すぎるので、もしやこれは天帝の呪い…… 矢張り天帝が婚姻の儀をしたせではないかと疑ってしまう


「こうなったら天帝に直接聞きに行くぞ」


天帝なぞに会いたくはないが背に腹はかえれないのが現状でもう待てない


「ミユキ、待っててくれ…」


そう言って愛するミユキの唇に口付を落とそうとした時だった。


ミユキの瞼がピクリと動いたのを亀王は見逃さない


「ミユキ! ミユキ! 目を覚ますのか!?」


声を掛けると瞼が静かに開き二年ぶりに黒い黒曜石の様な瞳が現れ、その中に自分の顔が映し出され歓喜する。


「ミユキーーーーーーーー!!」


「煩いーーーーー!」


バッシ!!


抱きつこうとすると両頬をミユキの手で挟まれるように打たれてショックのあまり固まる亀王だった。










目を開けるとそこにあるのは超絶に美しい金髪碧眼の男のドアップ


これは夢?


目の前に天使がいるから天国かな?


ところがこの天使は「ミユキ、ミユキ」と私の名を連呼して煩くて、つい黙らす為にぶってしまう


悪気はない


ただ寝起きが悪くて頭が働いていないだけ


天使は目を見開き真っ青になるり今にも泣きそう


アレ?


この天使はもしかしてチョンマゲではないだろうかと漸く思い当る。


確か天帝に婚姻を結んで貰ってから直ぐ眠気が襲ったのを覚えているが、今一状況がつかめず取敢えず謝ろう


「ゴメン~ チョンマゲ寝ぼけちゃった」


結婚したての夫の顔を忘れてしまうなんて若年性のボケだろうか


誤魔化すように両頬にある手で頭を撫でてあげると途端に頬を染めて喜ぶ可愛い夫は寝ている私にガバリと抱きついて来る。


エッ!?  このまま初夜!!!


結婚したんだから何時でもOKだけどエチケットは守って欲しい


「こら!チョンマゲ、するならお風呂に入らせてよ。そうじゃないと離婚よ」


とても新婚の花嫁の言葉ではなく色気もあった物で無いが何事も最初が肝心


……最初では無いけど


離婚の言葉に驚いた様に飛び跳ね私から離れる。


「ミユキは風呂に入りたいのか?」


「…そりゃあ…やるんならお風呂に入って体を綺麗にしたいのは当り前でしょ… /// 」


全く女になんて恥ずかしい事を言わせるんだろう


恥ずかしさの余り真っ赤になるとチョンマゲは目をキラキラさせ


「抱いてもいいのか!!」


嬉しそうに聞き返して来るが、ロマンチックとは程遠い雰囲気で私とチョンマゲじゃ仕方が無いような気がするので諦める。


「/// 夫婦になったんだからいいよ……でもお風呂に入ってから」


俯いてもじもじしながら答えると


「では直ぐに入ろう!!」


「えっ!」


それからのチョンマゲの行動は早かった。


私をベッドから抱きかかえてお姫様抱っこするや否や瞑道を開いて広い大浴場に直行し寝巻きを手品のように一瞬で脱がして何時の間にかお互い全裸で湯壺に浸かっている


恥じらう暇も無い


しかも私はチョンマゲの膝の上


有り得ない!!!!!


「ちょっと 何で一緒に入ってるの???」


確かにお互いの裸は既に見ているが貧相な体の私には恥ずかしい事この上ないのよ!


せめて胸がもう少しあればと恨めしい


「漸く目を覚ましたミユキともう離れたくない」


薄っすらと目に涙を浮かべる真摯な顔のチョンマゲ


「漸く??? 」


どういう事だろうと首を傾げると自分の頭がいやに重い事に気付き、よく見れば髪の毛が異常に伸びて湯船の中でワカメのように揺らいでいた。


「何でこんなに髪が伸びてるの!!??」


「ミユキは向こうの世界で婚姻を結んでから二年近く寝ていたのだ…余は寂しくて寂しくて堪らなかった」


そう言って抱きついて来るがお互いスッポンポンで素肌が密着


恥ずかしさより二年も寝ていた事に驚愕


「二年!!! 何でそんなに寝てたの」


「実は…余も忘れておったのだが、神族と人間が婚姻を結ぶ時に重い命を受け取る人間はそれを受け取る為の調整が必要になり眠りに就く。 その命が重い程長い眠りが必要でミユキの場合二年近く掛かったのだ」


成程…


私には向こうの世界で天帝と会ったのがついさっきの様に思えるけど二年も経っていたのかと納得


プチ浦島太郎気分


「そうか……チョンマゲ待たせてゴメン。これからはずっと一緒にいよう」


ぐうぐう寝ている私を二年も待っていたのかと思うと申し訳ないような気がした。


普通の男なら他の女に目移りして捨てられそうなものだけどチョンマゲは一途に待っていてくれたかと思うと嬉しかった。


「ミユキ~~~~~」


そのままチョンマゲはキスをしてくるが素直に応え受け入れ、私も腕をチョンマゲの首に手を回すと眩暈がするような深いキスをされ意識が飛ぶほど…アレレ? 


よく考えてみれば二年間寝たきりでお風呂に浸かるのは体力的にかなり消費する上にキスなんて呼吸しずらい行為をすれば頭がクラクラするのは当り前だったのだ


ゴメン……チョンマゲ


相手を出来そうもない……


そのままブラックアウトする私だった。









ミユキが目覚め舞い上がり、その上 抱いて良いと許されて浴場だと言うのを忘れ堪らず口付をして甘い唇を味わうが首に回されていたミユキの腕が外され湯の中に崩れ落ち様子が可笑しい


離れがたく唇を離しミユキを見ると真っ赤になり気を失っていた。


「ミユキーーーーーーー」


急いで湯船から上り急いで手当てをするべく寝所に向かう


人間が脆いというのを忘れがちになってしまう


幾ら命を分け合っているからといってミユキが神族のように超人的体や神力を持つ訳では無く人間のままなのだ


折角目が覚めたら丞相達に知らせ盛大に祝おうと思っていたのに


余の所為で台無し


ミユキの体から水気を取り去り新しい衣装を着せてから寝台に横たえさせると神力を流し込もうとミユキに覆いかぶさり口付をしようとした時


ズッゴン!!


脳天に痛みを感じ振り返ると凄い形相の丞相が立っていた。


この部屋には結界を張ってあるのだが瞑道を使える丞相には自由に出入りできるし許していたのが仇となったようだ


「何をするのだ!!」


「何をしているのですか、そのようなはしたない恰好で!」


そう指摘され自分が衣服を着ておらず全裸なのに気付く


「いやこれは」


「幾ら飢えているからと言って寝ているミユキ様を襲うなど獣ですか!! 私はそのようにお育てした心算はありません!」


お前に育てて貰ったはずなかろうと反論しようとしたが止めておく。


思えば子供の頃から甲斐甲斐しく母親のように世話をしていたので強ち間違いとも言えない


「余とてそれ位の分別はある! ミユキが湯にのぼせたので介抱の為に神力を注ごうとしただけ」


「ミユキ様が目覚められたのですか!!」


「つい先程、だが湯浴みをしたいと言ったので一緒に入ったのだが体が付いて行かなかったようだ」


「バカですか陛下! ミユキ様は人間なのですから当り前です」


「余は王だぞ、バカはなかろう」


「バカで十分です。それより正妃様がお目覚めになりおめでとうございます陛下。早速ミユキ様付きの侍女を付けましょう」


丞相は嬉しそうにいそいそと扉から出て行こうとするので慌てて呼び止める。


「待て! 侍女はいらん」


「では一体誰がミユキ様のお世話をするのです」


「余がする」


「それでは私は侍女の選定がありますので失礼します」


全く聞き耳を持たないように余の言葉を聞き流して部屋を辞していてしまう


「おのれ~~ 丞相め余を何だと思っておるのだ!」


本当に腹の立つ奴だ


暫らくの間はミユキと部屋に籠もり愛を深めるべくあんな事やこんな事をしたかったのに侍女がいては邪魔


手際の良い丞相は今日中には侍女を連れて来るのが予想でき


ささやかな余の野望は潰えてしまった。


ミユキはまた寝てしまったが今度は直ぐに起きるのが分かっているので目覚めるのを楽しんで待つのだった。





アルファポリス第4回ファンタジー小説大賞に参加してます。宜しかったら投票お願い致します。目指せ40位だったのですがすでに無理そう……ですが地道に頑張ります。

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