王様とお預け
漸くミユキを手に入れ向こうの世界に戻ろうとすると天帝が婚姻を急かして来る。
確かに早く名実ともに伴侶になって欲しかったがミユキにはもっと豪勢な式を挙げてやりたいし、余にとっても記念すべき日にしたいのだ。
だが何故かミユキが婚姻に積極的になる。
嬉しい事だがこの場でするにはあまりにも侘しい場所
しかもこの狂神の前で挙げるなど縁起でも無い
きっと良からぬ事が起こるに違いないと避けたかったが
「お願いチョンマゲ 早く結ばれたいの…」
「!! /// ミユキがそこまで言うなら!」
ミユキにこれ程乞われたら断れなかった。
そして婚姻を結ぶべく契約の指環を取り出す。
「本当はチャンとしたかったのだが…左手を出してくれ」
ミユキはほっそりとした白い左手を差し出すと優しく手をとり指環を嵌めるべく持ち返る。
「余の伴侶になってくれるか ミユキ」
「はい喜んで /// 」
ミユキが頬を染め目を潤ませて返事を返してくれるが、どうせならもっと豪華な衣装を着せて宝飾品で飾り立てた一世一代の婚礼衣装を着せたかった。
だがミユキの願いは何でも叶えてやりたいので仕方が無い
そして契約の指環を発動するべく天帝が余とミユキの手をとられるとゾッーとする。
本能的に恐怖が湧くのはどうしようもない
「これより亀王チョングゥイと橘深雪の為に祝詞をささげよう」
天帝は厳かに違うと神語の祝詞を唱え始めると余とミユキの命を繋げる道が開き徐々に時間を掛けミユキに余の神核が移って行くのだ
……ん!? 何か大事な事を忘れている様な気がする…
「ΣΘΞΔΣΦΨ…ΨΡΩΒ…??αΧζΠ … αθΘΞΔΣΦΨ……α……ΣΦΧθΞΔαΧζΠ 」
「あっ熱い」
道が開いた時の衝撃を感じ体がよろめいたので抱きとめる。
「ミユキ 大丈夫か」
「うん 一瞬熱かっただけ……終わったの」
「指環を見よ」
「あれ 指環が変わった」
契約の指環の力が発動した証に亀の意匠の施された指環に変化していた。これで余とミユキは伴侶となり誰もミユキを害する事は出来ないのだから取敢えず安心だ。
「おめでとう深雪 これで貴女はチョングゥイの妻よ」
「 妻 /// 」
ミユキが余の妻!! なんといい響き
帰ったら早速、後宮であんな事やこんな事をやり尽くさねば!!
「あれ……?…… 」
急にミユキの体が崩れ落ち意識を失くしている!?
「ミユキ!!」
何が起こったのだ!!
余の伴侶になったミユキは外傷はおろか病にすら罹らない体のはず
「あらら~ もう始まっちゃったの~ 」
「どういう意味だ。 そなたがミユキに何かしたのか!!??」
天帝はニヤニヤと笑う
「私では無くチョングゥイ、お前自身の所為だよ。 流石に亀王の神力は桁はずれね~人間のミユキにはかなり重い命、その命を調整するのに一体どれだけの時間が必要かしら?」
「!!」
天帝の言葉で自分がとんでもない事を失念していたのだ
神族と人間が婚姻を結ぶ時大きな弊害が起こるのだ――命の重さが違いすぎるため人間側に大きな負担が掛かるのを軽減する為に深い眠りに入り神核を受け入れて行くのだがその差があればある程調整に長時間かかる。
ここ数百年神族と人間の婚姻が無かったのですっかり忘れ去っていた事実
つまり当分いちゃいちゃも初夜もお預け!!!!!!!
「ミユキーーー 起きてくれ!!」
体を揺すれど一向に目を覚ます気配が無い
「チョングゥイの伴侶であるミユキは人間だから一年以上は目を覚まさないんじゃないかな~~~」
如何にも楽しそうに嫌な予想を言う天帝
「己ーーこの事を知って婚姻を急かしたなーーーーー!!」
「確かに勧めたけど~ 急かしたのは深雪よ~~ プップップップーーーー」
その通りだが、忠告しても良かったはずだ!
なんと忌々しい神だ
しかし反撃したくとも力が違いすぎるので此方の身が危ないのだ。
精神衛生上もこれ以上天帝の側にいるのは良くないのでサッサと帰るしかない
スヤスヤと眠るミユキを横に抱き上げて瞑道を開け笑い転げる天帝を無視して狭間に入ろうとすると
「深雪を大事にするんだよ~~ 」
珍しく天帝がまともな事を言う。どうやらミユキは天帝に気に入られてしまったのだろう……厄介な相手に好かれてしまい不快だがそれだけミユキが魅力的なのだ。
「言われずとも…ミユキを幸せに出来るのは余だけだ」
そう言い捨て振り返らず瞑道を潜り向こうの世界が閉じると漸く緊張が解ける。
天帝がいては気が休まらない
それだけ恐ろしい相手だ
それより問題はミユキ……天帝が言う通り一年は眠り続けお預け状態
矢張り婚姻は玄武国で盛大に挙げる事にすれば丞相が忠告してくれた筈、そうすればもう少しいちゃいちゃしてから婚姻を結んだのに
「折角ミユキが伴侶になってくれたのに」
二人の幸せな未来は当分お預けになってしまった亀王は闇の世界を愛しい伴侶を抱きかかえ元の世界に戻るのだったがその後姿は哀愁が漂っていたのだった。
玄武国は平和な国
争いも少なく人々ものんびり割かし幸せに暮らしている。
最近の王都では亀王様が亀の姿にもならず真面目になった噂で持ち切り。
なんでも可愛い正妃様をお迎えして張りきっているとか
しかし不思議なのは民に王妃様をお披露目しない事
あまりに王妃様を愛するせいで後宮から一歩も出さず誰にも見せないように閉じ込めているとか
きっと直ぐにでも御子様が生まれるだろうと多くの者達は期待したが一年経ちもう直ぐ二年経とうとするが懐妊の噂は一向になく、亀王様の溺愛が過ぎるのだろうと噂した。
だがその実情は大いに違っており王妃様は眠り続けていたのだ。
その傍らで亀王が王妃に甲斐甲斐しく世話をして暮らしており片時も離れないのが実情
政務は仕方なく午前中だけこなしているが、以前に比べれば格段に真面目になったので丞相も少しは肩の荷が下り喜んでいるとか
後は王妃様が目を覚ませばもっと幸せが訪れるのではないかと王宮中の人々が待ち望んでいる。
勿論最も待ち望んでるのは亀王様
きっとそれももう直ぐ訪れるだろう
王妃様が目覚める時
それは亀王様と王妃様の新たな話が始まるだろう……
一応完結設定にしますが9月には続きを書きたいと思います。
これまでお気に入り登録及び評価有難うございました。
謹んでお礼申し上げます。
しかし、微妙な終わらせ方で申し訳ありません…私の書く主人公の内二人が冬眠中でラブラブとは程遠いので続編ではイチャラブにさせたいです。
ここまでお付き合い頂き有難うございます。続編も宜しくお願いします。