契約の指輪と私
王様の足が折れてしまい石になった足首が転がっているのを見てしまい卒倒してしまう。
ハッキリ言って私はスプラッター系はうけ付けないの
せめてもの救いは血が出ていない事だけど私には刺激が強すぎ意識を失う。
「深雪を伴侶にするの~」
「勿論だ」
自分の声(天帝)王様の会話で目を覚ますと何時の間に自分の足で立っている王様に抱き寄せられていた…流石神様、自分で治療したの?!
「いいの~確実に寿命が半分になる」
寿命が半分???
「ミユキを得る為なら寿命ぐらい幾らでも減っても構わん」
なんだか王様の寿命が減ると言う物騒な話
「ちょっとそれは何の話し!! 寿命が減るってどういう事よ……!!」
思わず二人の会話に割り込むと天帝が楽しそうに事の詳細をご丁寧に教えてくれた。神様の婚姻てとんでもない無いもの、命を分け合うなんてどれだけ重いのよーーー
しかも私の寿命が千五百年なんてあり得ない!!
軽い現代人の私にはあまりにも重すぎる事実なので先の自分の言った事直ぐさま撤回させて貰う
美形すぎる顔にその地位でさえ私には重すぎるのに更なる加重に耐えきれそうにも無いよ……しかしそう言った途端捨て犬のような目で私に綴って来る王様
捨て犬は二度と拾わないと心に誓っていたのに
思い起こせば小2の春だった。空き地に捨てられていた真っ白な子犬を兄と一緒に見付け一目で気に入り飼て貰おうと家に連れ帰ろうとすると「母さんが居るから諦めろ」とドライな兄の忠告を無視し家に連れ帰りお願いしてみると「いいわよ」と母は簡単に許可してくれた。
しかしそれには条件があった。「深雪が犬を飼うんだから母さんは一切面倒を見ないからちゃんと世話をするのよ。朝と夕の散歩とご飯だけはチャンと守るの、もしそれを一日でも破ると犬は保健所行きよ」私は大丈夫だという自信があり飼う事にしたのだが兄は最後まで止めた方がいいと忠告した。
それから私は犬にシロと名付けて一生懸命世話をしたのだけれどその冬私はインフルエンザに罹り高熱で寝込んでしまい一日だけシロの世話を兄に代わって貰ったのが母にばれてしまった。
「深雪、母さん言ったわよね。一日でもさぼったら犬は保健所行きだって」
優しい顔で恐い事を言う母
「でも私病気だったもん! さぼりじゃないよ…」
しかし母にそんな理由は通らずまだ熱が引かない私が寝ている内にシロは保健所に連れていかれてしまった……内の母はかなり芯の通った人で自分の意志を曲げない―どんなに自分が不当でも、幼心に改めて母の恐ろしさを思い知った日だった。
泣きじゃくる私に兄は言う
「俺も幼稚園の時に子猫を拾って同じ様な事されたんだ…」
ぼそりと呟く兄に同情と殺意が湧いた…それを先に言え!!!!!
多分、母は生半可な決意で命あるものを拾うなと教えたかったのだと思いたいがその真意は知らない――否、知ってはいけないと本能が警告したのだ。
地味で平凡そうに見える母は仮の姿で実は地球外生命体では無いかと小学生の時は信じていた。
それだけ破天荒な母なのだ。
王様の目は捨てないでと訴えている
そう一旦拾うと決めたんだから最後まで死ぬ気で飼うしかないのよ!!
「ふ…… 私ってやっぱり捨て犬を見捨てられないのよね……」
「捨て犬???」
母の教え?とシロの犠牲を無駄にしてはいけない、こうなったら最後まで面倒を見るのが筋 惚れた弱味
もう一度王様を受け入れる事にすると大輪の花のように嬉しそうにする王様
う~~ なんて可愛い男
「有難うミユキ。絶対に幸せにする」
こんな綺麗で可愛い旦那を貰えて十分幸せだがこれだけは言っておく。
「うん!、でも私に飽きたら殺してね」
「なっなにを言いだすのだ!!」
「だって千五百年も生きるんでしょ…その間気持ちが変わらないなんて人間の私には信じられない」
そもそも王様の愛がそんなに続くのか疑問
愛なんて移ろいやすいものなんじゃないだろうか
千五百年も一緒に居れば色々あるだろうし心が離れることだって可能性はある。
多分私が王様に捨てられたら生きてる自信ないよ。
「どうすれば信じてくれる?」
「今は信じてるよ だけど永遠は信じられない」
だって私は人間だから神様の王様には理解できないのかもしれないが自分の正直な気持ちを王様に言う
でも何時か永遠を信じられるようになったらいいとは思っている。
だけど王様と私はまだ始まったばかり、ゆっくり分かりあって行けばいいのだと考えている内に天帝が不穏な行動に出て来る。
「確かに永遠に続く想いなど人間には難しかもね~」
静観していた天帝がしゃしゃり出て来る
「関係無い者は黙っておれ!」
王様が噛みつくように言う。
「あら~ それは無いんじゃない? 二人が巡りあったのは私のお陰よ。そして私は天帝で絶対者。 信じる信じないなんて鬱陶しいから二人とも消して上げましょうか」
私の声でおどけた様な口調ながら何処か冷たいものを孕み、そして 私と同じ顔とは思えない程に狂気を帯びた顔が此方を見つめゾッとする。
何かが天帝の癇に障ってしまったようだ。
王様が長い金の髪を逆立てるように警戒し、私を背後に隠す。
なに―これってかなりヤバいの……
確かに私にさえ天帝からは黒い禍々しいオーラを感じ、神様と言うより魔王!?。
「ね~深雪 チョングゥイは絶対諦めないタイプだから信じらんないなんて生チョロイ事言ってるならこの場でチョングゥイを殺してあげるよ~ それも深雪が死ぬ? やっぱり二人一緒がいい?」
なにそれ!
「誰がそんな事を願ったのよ!! 第一 長い時間を生きている神様のくせに少し気が短すぎない!!」
「ミユキ止めよ! 天帝を刺激しては危険だ!!」
王様が真っ青になり私を止めようとする。
「黙って殺されるより言うだけ言って殺された方がマシよ!! そもそも永遠なんて本当に存在するの! 神様は心変わりをしないの? でも人間は違うわ人間は常に変わって行くし限りある短い命しかないのに永遠なんて信じられる訳無い。 そんな私に千五百年もの途方も無い時間の中で何も変わらず有り続けるなんて奇跡にしか思えない! 私は人間でそれ以上でもそれ以下でもない神なんかじゃない。 だから私も少しずつ王様を信じれるように変わっていきたい…… 」
「ふ~ん で結局どうなる訳?」
「知るか! そんなのやってみないと分かんないでしょうが…これから二人で未来を築いて行くのよ。例えそれが不幸になろうが幸せになるかなんて二人で決める! あんたなんかに決められたくないわ」
「ミユキ!!」
王様が嬉しそうに名前を呼ぶが
「成程… 深雪は違うんだ…… 」
無感情に言い一瞬虚ろな目をした。
違う?? 誰と違うんだろう??
「でもやっぱり二人はムカつくから死んでね~~」
天帝がニヤリと悪役のように顔を歪め目が光ったかと思うと突然体が動かなくなり王様も同じように動けないようで声も出せないようだ。
「チョングゥイお前がどお足掻こうと私には適わない。諦めて深雪共々その首を私に討ち取られてね~」
そう言うと日本刀が何時間にか握られている。
「郷に入れば郷に従えて言うから、首を斬ると言えば日本刀よね~」
その諺は今使うのは違うよーーーと突っ込みたいが声が出ない。
私の姿をとったままの天帝が良く切れそうな日本刀を振り上げ、尋常じゃない目を見てこいつはマジだと悟りながら、なにも出来ないのが悔しい
せめて泣くもんか
私には王様がいる
一緒に死ねれば本望よ!
「それでは、お命頂戴つかまつる!」
もしかして時代劇に嵌ってた??
絶対絶命なのに突っ込んでしまう自分が嫌
天帝は振り上げた日本刀を一気に振り下ろしもう駄目だと思い目を瞑る。
ズッザッザーーーーーーーーーーーー
凄まじい刀が空を斬り裂く音がしたが私は何の痛みを感じず、もしや王様が先に斬られたのかと慌てて目を開くとニコニコと笑う私のドアップが!!!!
「なっなっ何????」
「やっだ~~~~ 本気にしたの深雪~~ 可愛い~~~~」
「エッ?????」
そして自分自身に引き寄せられ抱きしめられる。
後を見れば凄い形相で怒っている王様の顔はチャンと胴体と繋がっているが動けないようで今だ天帝に体を縛られている模様
「へ~ ロングも似合うのね。 今度伸ばしてみようかしら~」
私の着け毛を触ったり体をベタベタ触られ呆気にとられて成すがまま
「それにしても、お化粧が崩れて大変よ 今綺麗にしてあげる~」
そう言いなが引き出しから化粧道具を取り出しクレンジングジェルで化粧を落とされ洗面所兼お風呂で顔を洗わされる。
「一体あんたは何がしたいの!」
「お化粧~ 嫌なら殺すよ……」
と自分の顔で凄まれれば言う事を聞くしかない。
読めない……性格が歪みまくって何処まで本気か冗談か掴みにくい
なんて疲れる性格なの!!
そして王様が立ちつくす前でお化粧タイム
「ここの世界は物資が豊富ね~ 化粧品も種類が多すぎて最初は戸惑ったけど今ではプロ級よ」
そう言えば天帝の化粧は派手すぎす地味すぎないナチュラルメイクながら小さな目をひきたて眉山も綺麗に引かれて少ない睫毛にもマスカラが塗られてカールしていた。私なんてファンデーションと口紅で簡単に済ましてたのに
「何でわざわざ化粧?? 貴方ならもっと美人に化けれるんじゃないの」
「バカね~ この地味な顔を如何にメイクし美しく見せるかが楽しいんじゃない~~」
何気に貶してる!
「ねっね~ この夏の新色リップ これがすっごく可愛いの~ 見て見て」
まじ女友達ののり
もしかして多重人格者
そうして差し出されたのはピンク系
何時も私はオレンジ系をチョイスしてるので付けた事が無いというかトラウマの所為なんだけど…そんな事を知らない天帝は問答無用で慣れた手つきで塗る。
「自分の顔に化粧するなんて変な気分~」
「違うーーーー 私の顔よ!」
「ほ~ら 可愛くなったわよ」
手鏡を差し出され映し出された私の顔にピンクのルージュは確かに似合っていた。
「ピンク系は避けてたけどいいかも…」
しかし天帝は私以上にこの世界に馴染んでない?
私になり済ましアパートに住み会社まで行って、化粧は私より上手いしブランドの服まで着て私より上手に生きてる感じで本当の私が偽物のようだ!!??
まるでこの世界の自分が乗っ取られたような喪失感を感じ、新たな疑惑がわく
「もしかして最初から私になり済ます為に態と落したの?」
「それは違うわ、本当に偶然よ。 流石の私も異世界の人間を巻き込む気は無かったのよ~ だから態々戻ってあげたんでしょ~~」
「だったら連れ戻してよ」
「え~ チョングゥイが珍しく人を助けたから面白い展開だと思ったの~ ゴメンね~ せめてものお詫びに非常持ち出し袋を取りに行ったんだからねっ」
全く悪びれない様子だが王様が私を助けた????
私を助けたのは岩山から落ちた時なんじゃないの??
「えっ 王様がわた 「メイク完了! チョングゥイとお幸せにね~~」 エッ!!」
天帝の凄い力で王様の方に突き飛ばされると体が自由になった王様に抱きとめられると同時に抱きしめられる。
「ミユキーーーー 心配したぞ! 早く危険な天帝から離れ余の世界に帰ろう!!」
「え~ もう帰るの…」
元の世界に戻りまだ数時間、王様のお嫁さんになる覚悟はしたけどせめて2.3日は留まっていたい
「天帝の側など命が幾つあっても足りぬ」
「そうよ~ また何時気が変わって殺したくなっちゃうかも~ 深雪の代わりはチャンと務めるから安心して向こうで一生終えちゃいなさい~」
さっきの殺意は本気だったて事!!
何が私の代わりよ! 私の平凡な人生を返せ!と叫びたいが王様を選んだ手前止めておく。
「う… なんか複雑…… 家族に酷い事しないでよ」
「この世界では大人しく人間してるわ~ 世界征服なんかしないし人も殺さないわ~」
世界征服……本気を出せば出来るの!? いまいち信用できず心配
「最後に家族に会っちゃ駄目?」
王様を見上げ頼んでみる。 両親と兄弟に一目会っておきたい 母にはあまり会いたくないけどもう会えなくなると思うと会いたくなるから不思議
「別に構わぬ。 余もミユキの御両親に挨拶せねばならんだろうから」
もしかしてドラマで見るような娘さんを下さい的なーーー ///
「有難う! 王様」
「ミユキ~」
ところが天帝が反対して来る。
「駄目よ! あんた達は早く帰るのよ…チョングゥイは気付いてないだろうけどこの場を安定させるのに私は結構力を使ってるのよ… 神圧の大きいチョングゥイがこの世界に入り込んだせいで歪が出来てそこから世界が崩れ始めるから長時間の滞在は無理、私のように神圧を下げてからまた来ることね」
「そうなの?」
「すまぬ… 天帝の言う通り一旦戻った方が安全なようだ 」
「そっか… でももう一度連れて来てくれる?」
「ミユキが望むなら何度でもいいぞ!」
「本当! 大好き王様!!」
「ミユキ~ 余も愛しているぞ!」
お互い抱きしめ合い見詰め合い甘い雰囲気が漂い始めるとお約束のように天帝が邪魔する
「イチャ付くなら帰ってからにしてよね… それと頻繁来られても世界が歪むからせめて年に一度だから~~」
つまり今度来れるのは1年後!!
でも私のせいでこの世界が壊れてしまったら大変なので我慢するしかないだろう
「分かった…… それではミユキ戻ろう」
「うん…… 」
そしていよいよ帰ろうと王様が瞑道を開けようとすると天帝が呼び止める。
「ちょっと待ちなさい」
「なんだ先程から帰れと言ったり待てと言ったり」
「どうせならこの場で婚姻を結んでいきなさい」
「この場で?」
「天帝である私の前で結んだ方がより深く結ばれ強い契約になるはずよ~」
「それも一理あるが…」
契約? 私の世界のように婚姻届に署名でもするんだろうか
「どうやって婚姻を結ぶの?」
「簡単よチョングゥイの契約の指環を嵌めて祝詞を言うだけ」
指輪を嵌めるのは此方と同じだけどえらく簡単
「それだけ」
「そうよ~」
「だが矢張りミユキとの婚姻は国を上げて盛大に祝いたいので向こうでする」
王様の言葉で一気に血の気が引く
盛大に!!
それは嫌だ!
こんな綺麗な男と並んで大勢の人間の前で式を挙げるなんて考えただけで眩暈がする。
「ま~ なんて貧相な花嫁様」
「まさかあのような者が陛下の!?」
周囲からあんな声やこんな声が空耳のように聞こえてきそうで、きっと私は被害妄想に陥り精神を病んでしまう
恐ろしい
それだけは阻止しなければ
後宮に入れば滅多に公式の場に出るのは少ないだろうから精神的ダメージは少ない方がいいに決まっている。
「王様! 私は今直ぐがいいわ! 早く王様と婚姻したいの!! それに私の世界ではじみ婚が流行りだから派手婚は時代遅れよ」
なんとか簡単に済ますために王様にお願いする。
「余は正式にしたいのだが…」
渋る王様を何とかするのにあの名前で呼んでみる。
「お願いチョンマゲ 早く結ばれたいの…」
チョンマゲの意味を知ったらどんな顔するだろう――― 教えないでおこう。
「!! /// ミユキがそこまで言うなら!」
そう言うと、王様はマジックのように掌から金の指環を取り出すが、シンプルな金のリングだった。
契約の指環だからもっとデザインの凝った物を想像していたので少し以外…右手にしている翻訳機のブレスレットの方が余っ程高価そうだが結婚指輪なんて王様がくれるなら何でもいい、
「本当はチャンとしたかったのだが…左手を出してくれ」
私は左手を差し出すと王様がその手をとり薬指に嵌めようとする。
「余の伴侶になってくれるか ミユキ」
「はい喜んで /// 」
何も考えず返事をすると何処か居酒屋の様な応対になってしまったが致し方ない。
そして王様が真剣な様子で指環を嵌めてくれる。
これで終わり??
命が結ばれた割には何の変化も無く無く拍子抜けしていると天帝が私達の手をとる。
「これより亀王チョングゥイと橘深雪の為に祝詞をささげよう」
天帝は厳かに違う言語で呪文を唱え始めると指環が発熱し、その熱が全身を包み込み一瞬火に飛び込んだような錯覚を覚える。
「ΣΘΞΔΣΦΨ…ΨΡΩΒ…??αΧζΠ … αθΘΞΔΣΦΨ……α……ΣΦΧθΞΔαΧζΠ 」
「あっ熱い」
呪文が終わると倒れそうになるのを王様が支えてくれる。
「ミユキ 大丈夫か」
「うん 一瞬熱かっただけ……終わったの」
「指環を見よ」
「あれ 指環が変わった」
王様に促され指環を見るとシンプルな金の指環は亀の調金の施された物に変化していた。
「おめでとう深雪 これで貴女はチョングゥイの妻よ」
「 妻 /// 」
とうとう私も人妻
なんだかチョッと恥ずかしいが目の前で微笑む天帝が、こんなに素直に祝ってくれるのが引っかかる。
そう思っていると突然眩暈を感じる
「あれ……?…… 」
「ミユキ!!」
王様助けてと言おうとするが、次の瞬間王様の呼び声を最後に意識を失ってしまうのだった。