余とミユキと……
瞑道の暗闇をミユキを抱き上げながら進む中、恐いのか抱きついてきたり自然な会話も出来た。
ああ~~何て幸せなんだろう
矢張り女になったのが正解だった!!
天帝の気の流れを辿りミユキの世界は簡単わかり、そうして着いたミユキの世界に来ると満面の笑顔で余に抱きつく
「きゃぁ~~ 有難う王様!! 」
「 /// ミユキ~~!」
だが余はミユキの本心を浮かれまくって全く気が付いていなかった愚かものだった……
狭間を開いてミユキの世界に入り込むとそこは狭い物置のような場所で小さな簡素な寝台と箪笥に奇妙な箱が並んでいる。
寝台の上に座ると何やらギシギシといって今にも壊れそうなので大人しく座るが何とも貧相な部屋でまさかこのような処にミユキが住んでいるのだろうか?? 手慣れた様子で内掛けを壁に掛けてお茶を淹れに部屋を出て行ったが、直ぐにお茶を持って小さな机の上にお茶を置いてくれる。
「お茶をどうぞ、狭い部屋ですが寛いでくださいね」
「 !!…… 否、中々良い部屋だ!」
矢張り此処はミユキの部屋らしく両親が一緒に生活しているようでは無く一人でこの世界では結構苦労しているのかもしれない…後宮に入内させたら思いっきり贅沢をさせ着飾らさせねば
ミユキは次に黒い小さな箱の突起を押すと向かいにある額縁のような箱に突然人と話し声がし始め驚く!!
なんだこれは??
「ミユキ!! この箱はどうなっておる?? 小さな人が入って話をしておるーーー」
「これはテレビと言うもので電波を飛ばして映像を伝えるものなッですが詳しい事は私にも分かりません」
どうやらミユキの世界は余の世界とはかなり違っているらしい、テレビと言う箱に映っている人の服もかなり奇妙で絵には理解できない不思議な物が次々つ映りだされ目まぐるしい
「テレビか……神力も使わず絵を箱に映し出すとは摩訶不思議」
「このリモコンで操作すると色んな絵が見れますよ」
そう言って渡されたリモコンなる箱を受け取りそれについている突起を次々押すたびに絵が変わり中々面白いのでつい夢中になっているとミユキが神妙な顔で話しかけて来る。
「王様…お話をしましょう」
「良いぞ、お互いを知る為にも思う存分話し合おう」
そうであった!! この世界に来たのは余の愛が本物である事をミユキに証明する為チャンと婚姻の申し込みをして余の伴侶になって貰う了承を得に来たのだ。テレビがつい珍しくはしゃいでしまいミユキに呆れられただろうか
「私の世界に来た訳ですが、やはり王様の気持ちは変わりませんか」
「勿論だ!余にはミユキしかいない!! 呪いだとしても余の愛は変わらなかった。どうか伴侶になって欲しい」
思いのたけを言葉に込めてミユキを見詰めると凄い勢いで顔を真っ赤にさせる。
おお~~ なんと可愛いのだろう~~~
しかし恥じらう赤い顔を突然床に付けて謝りだす。
「ゴメンなさい王様、呪いなんて嘘です……元の世界に戻りたっくって嘘を言いました、私は平凡な普通の女なんです! だから王妃なんてガラじゃないし、なりたくありません。どうか王様一人で戻って下さい」
一気に捲し立てるように言い最初は意味を理解できなかったが覚えた言葉を頭の中で繰り返すように思い出す。
呪いの話は嘘
王妃に成りたくない
一人で帰れ
ミユキは余を許してくれた訳では無かったのか……
此処へは二人の愛を確かめ合う為に来たはず……
余はミユキに騙されたの…だ……丞相の言う通り騙していたのか…
悲しみと絶望で心が軋む
「ミユキは余が嫌いか……」
最期の勇気を振り絞り聞く、ミユキの本当の気持ちを聞くために
「ハッキリ言って嫌いです。初対面で無理やり犯されて好きになんてなれるはずがないでしょ」
分かっていたがミユキは余を嫌ったままだったのだ
戻れるならミユキが寝台で目覚めた時に戻りたい
余が勘違いしなければミユキにこんなに嫌われずに済み、もっと巧くやれたはず
後悔が押し寄せるがどうにもならない
ミユキの望み通り余だけ帰る……
………………………………………………………………嫌だ!!!
嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ
千五百四十三年生きて漸く見付けた愛おしい存在
諦めるなど出来ない。
余には力がるのだ、人間のミユキを自由にするなど容易い(たやす)事
意志を奪い余の思うどおりに動かせばいい
それとも力ずくでねじ伏せようか
どす黒い想いが次から次へと湧き上る
だがそれは本当のミユキでは無い
さっきのように自然に話し笑ってくれるミユキがイイ
壊れたミユキなど見たくないのに此のままでは酷い事をしてしまう
ミユキを手に入れられない悲しみで心が押しつぶされ悲鳴を上げるが何も出来ず涙だけが零れ落ちる。
また一人ぼっちなってしまう
爺やが死んでしまった以上の悲しみが襲い目の前が真っ暗になる
そうだミユキを傷付けるくらいなら余が消えればいいのかもしれない……
消える……
そう消えればいいのだ。
もし余がミユキの目の前で命を絶とうとしたらミユキは如何するだろう
止めてくれるだろうか
『ミユキ様は情に脆い方の様ですから』丞相の言葉が脳裏を横切る……
きっとミユキは止めてくれるだろ
だがそれだけでは駄目だ
心から余の愛を信じ応えてくれなければ意味が無い
ミユキを得られるか失うかは賭けに近いが勝算はある……本当に余を嫌っているなら抱き上げた時点で拒否され笑顔など見せ無いはず、余を騙す為の演技だとしてもああも自然にはならず何処かぎこちなさが伺えたはず。
ミユキとて余の美貌に見惚れてはいる
アンチョングゥイを気に入っていると言うなら美的感覚は異界人であるミユキも同じ
美しい男から求愛され愛情は無くとも不快に思う女はいない
しかも命を賭けるのだから
自分の命を使うなどある意味ズルイが…手段などどうでもよい
結果としてミユキを得られればいいのだ
そうと決まれば早速余の命を削ろうとしよう!
神族は中々死ねない体だが手段が無いわけでは無いのだ、神力と命の源である神核を自分の神力で力を相殺して行き力を浪費すれば神核が石化して行き体も石化して行く
もしミユキが余を許し愛してくれなければそのまま石となりその場で朽ちるだろう
そして自らの命を削るべく心を閉じるのだった。
次に目を覚ます時はミユキが我が胸にいる事を信じて
手にミユキの温かな涙を感じ胸が震える。
余の為にミユキが涙を流し余の命を乞うてくれているのを感じ意識が戻るとミユキが余の手をとって涙を流して泣いている。
「チョンマゲの所為で泣いてるんだよ…どうしてくれるのよ人を惚れさせておいて何処行く気よ…… うっうう うぇーーん えーんん うううっうぇーー 」
だが石化の始まっている手では思うように動かずミユキを抱きしめられないのがもどかしい
石化したまま動かすとあまり良くない(ポッキリ折れる場合あり)が少しずつ無理に動かすとピシピシ軋む音を無視しミユキの頬を両手で挟み顔を上に向かせると涙の所為で化粧が崩れて酷い有様だが余にはこの上なく可愛く見える。
「チョンマゲ……?」
王様ではなくチョンマゲ!!
愛称で呼んでくれるミユキは驚いたように目を見張り、ミユキにとどめのを刺すべく愛の告白をしようとするが口の筋肉辺りも石化し始めていたようで思うように動かない
「ミユキ… 好き… 愛し…てる。 何処へも行くな 余の側に居てくれ…… 」
これはこれで真摯な感じがして良いかもしれない
しかし早く石化を解かないと思うように動けないのは辛いが元に戻るのにもかなり神力を使いそ双方で二,三百年は寿命を縮めてしまうだろうが構わなかった。
そして愛おしいミユキは笑い泣きのような顔で衝撃的な嬉しい言葉を言ってくれる。
「うん チョンマゲのお嫁さんにして」
おっお嫁さん!!!!!!!!!
ピィッシーー
あまりの御衝撃に神核の石化した部分にひびが入り痛みで息を飲んでしまい固まったしまう。
こんな大事な場面でうっ動けないなんて何たる失態
だが甘い雰囲気は流れたままだがそれを破るかのように笑い声がけたたましく響く
「キャッハッハッハッハッハ~~ ヒィ~ なにそのニックネーム!!! マジ受ける!チョンマゲ! チョンマゲだって…… ブッーーー ヒャッハッハッハ~~」
横を見るともう一人のミユキが笑い転げて腹を曲げている????
「誰だ!?そなた?……!! おっお前は天帝!! 何故ミユキになり済ましている?!」
もう一人のミユキからあの忌々しい天帝の気を感じ直ぐに納得するがこんな時一番遭いたくない者に遭い慄いてしまうのに反しミユキは天帝に話しかけける。
「ちょっとあんたチョンマゲを知ってるの??」
「当り前よ~ 伊達に一カ月この世界で暮らしてないわよ。この世界の一般的常識は全て吸収していてよ。便利な世界よねパソコン一台あれば世界中の知識と情報を得られるなんて」
「いっ一カ月!!! 向こうでは十日しか過ぎて無いのに??」
「アラ…そうなの? 此方の世界の方が時の流れが速いのね」
「それじゃあ私は一カ月行方不明になってるの!!」
「大丈夫よ、私が会社に行ってるし家族の電話にも出ているから」
一挙に余は会話から外れてしまい甘い雰囲気が何処かえ行ってしまい女同士??の会話が続く。
態とだ!!!
絶対に態とやっておる!
天帝は余の恋路を邪魔するべく会話に割り込んだのだのに決まっている。
ミユキは余の事を忘れたように天帝とこれまでの経緯の遣り取りに夢中でさっきまで事を忘れたかのようだ
許さん!!
此のままでは天帝にミユキを盗られてしまうと思い、石化した事も忘れ立ち上がりミユキを抱き寄せるべく立ち上がろうとした途端に嫌な音と共に体が崩れ落ちる。
ガッキ バッキィ… ズルーー ズッデッデーーン!!
足の膝下まで石化していたのでふくらはぎの中程で折れてしまい倒れてしまったのだ。
「キャァーーーーー 王様大丈夫!!??」
直ぐさま驚き心配そうに余を抱き上げようとしてくれるが女のミユキでは無理な様で顔を青褪めさせ今にも泣きそう
こんなに心配してくれるのは嬉しいが何故王様? 先程までのようにチョンマゲが良かったのに……
そしてミユキは折れてしまった石化した足首が転がっているのに気が付きそのままショックで気絶してしまう
「ヒィェェェェーーーーー!!」
バッタン
「ミユキーーーー」
「おやおや、結構図太そうなのに繊細な面もあったようね~」
天帝がミユキの顔で嘲笑うように倒れたミユキを覗きこむ。
「ミユキに触れるでない!」
「プップ~ そんな姿で凄んでも滑稽なだけだよ~」
確かにその通りなので直ぐに体を治すべく神力を高めようとするが、天帝が何の気の迷いか余の折れた右足を取り上げて接合しサッサと繋げ大量の神力を注いでくれる。
一瞬辺りが眩い光で満たされたと思うと余の石化した部分の体は全てもど通りになるが何時にも無い親切な天帝の行動に慄いてしまう!!
「こっこれは……何の嫌がらせだ……!!」
「失礼な、純然たる好意だわ~」
同じミユキの顔と声だがあまりの恐ろしいっ言葉にゾッとして全身鳥肌が立つ
「嘘を言え! 何か裏があるのであろう」
天帝から守るために急いで気を失うミユキを抱き寄せ警戒する。
「疑い深いね~ 強いて言えば深雪に対するお詫びかしら……不可抗力とは言え深雪の人生を盗んでしまたしね」
珍しく殊勝な言葉を吐くが昔から知る天帝はこんな事を言うはずが無い。
「この世界で、一体ミユキの姿で何をしておる?」
そもそもミユキが余の元に落ちて来たのは天帝のお陰なのだがその理由は知らない
「私の大事な捜しものの為よ」
ミユキと同じ顔がニッコリ微笑むが全く可愛くない
「こんな異世界に何があると言う」
「在るはずなんだけど…まだ無いのかもしれない」
相変わらず訳が分からない言動だが問い詰めてもハッキリ答えないであろうから時間の無駄だろう。
「ふーん…取敢えずミユキに会わしてくれた事には感謝しよう」
ミユキは感謝しているか分からないが余には大事な伴侶を与えてくれた。
「深雪を伴侶にするの~」
「勿論だ」
「いいの~確実に寿命が半分になる」
「ミユキを得る為なら寿命ぐらい幾らでも減っても構わん」
するとミユキの声が割り込む。
「ちょっとそれは何の話し!! 寿命が減るってどういう事よ……!!」
何時の間にか気が付いたミユキが驚いたように叫ぶ。どうやらミユキが気が付いた事を察してこの話を振ったのだろう
「深雪は知らなかったの? 神族が伴侶を得ると言う事は自分の寿命を分け合う魂の契約でもあるの~ だから八十年しか生きられない人間の深雪を伴侶にする事は六千年以上生きるチョングゥイの半分の命を削り深雪に渡す事になるんだよ~ 良かったね寿命が延びて!!」
その話を聞いたミユキは余の腕の中で慌てだす。
「なにそれーー!! 信じらんない。そんなの無理!絶対無理!!」
「ミユキが心配せずとも余は寿命が半分になろうとも全く問題ない!」
「違ーーーーーう!!」
「えっ??」
「王様って今何歳?」
恐る恐る聞いてくるミユキ
「余はまだ千五百四十三歳で若いぞ」
「千…!! と言う事は…結婚したら……6,080÷2-1,543……!! 単純に計算しても後1,500年も寿命が!!!」
「どうしたのだミユキ?」
「やっぱりこの話は無かった事にしましょう」
突然意志を覆すミユキ!!!
もしかして余の命を著しく奪う事に罪悪感を感じてしまたのだろう、なんて優しいのだろうかと感動していると
「後千五百年も生きるなんて考えられない! 私の感覚では無理ですから他の女性をあたって下さい」
「エッエーー 先は了承してくれたでわないか!!」
「さっきはさっき、今は今です」
キッパリ拒否するミユキの姿は凛々しいが受け入れる事は出来ない
「そんな殺生な~~~ お願いだミユキ、何でもするから伴侶になってくれ~~~うっううう……」
再び泣いてミユキに泣きつくと仕方なさそうに溜息をつく
「ふ…… 私ってやっぱり捨て犬を見捨てられないのよね……」
「捨て犬???」
諦めたようにミユキが微笑む
「人間にとって千五百年なんて途方も無い年月よ。それなりの覚悟がいるの……しかも惚れた相手の寿命を奪うなんて信じらんない……本当に私でいいの?」
惚れた相手!!!!
「ミユキが良い!! なんなら余より多く寿命を分け与えても良い!!」
「王様と同じでいいよ……残されるのは好きじゃないし」
嬉しさのあまりミユキを抱え上げ抱きしめる。
「有難うミユキ。絶対に幸せにする」
「うん!、でも私に飽きたら殺してね」
「なっなにを言いだすのだ!!」
「だって千五百年も生きるんでしょ…その間気持ちが変わらないなんて人間の私には信じられない」
少し悲しそうにそう呟くミユキ、このままではまた嫌だと言いだしそうな気配
「どうすれば信じてくれる?」
「今は信じてるよ だけど永遠は信じられない」
余にとって千五百年などそんな途方もない年月には思えないがミユキには違うようだ
「確かに永遠に続く想いなど人間には難しかもね~」
静観していた天帝がしゃしゃり出て来る。きっとこの場を滅茶苦茶にする気なのだと警戒する。
「関係無い者は黙っておれ!」
「あら~ それは無いんじゃない? 二人が巡りあったのは私のお陰よ。そして私は天帝で絶対者。 信じる信じないなんて鬱陶しいから二人とも消して上げましょうか」
不穏な空気を醸し出し張りついいたような笑顔のミユキの顔をした天帝
とうとう本性を現して来たようだ
ジリジリと天帝の放つ殺気を感じ肌が泡立つ
急いでミユキを背後に隠し天帝を睨みつけて対峙する……天帝はその気まぐれで何人もの神族を狂わしその体から神核を取り出し神玉として収集しているのを知っており、創造神でありなが残虐非道な破壊神でもある
あまりに長い時を生き狂っているのではないかと疑っていたのだが……
だから関わりあいたくは無かったのだ
だが会ってしまったものは仕方が無い
自分は良いがミユキだけは守ろうと決意するのだった。
ちょっと展開がアレアレ~かも知れませんがこのまま展開して行きます。
全ては天帝の性格のせいです!