私と王様と……
王様に抱かれなが暗闇を進んで行くけどまるで宇宙空間のように上下左右の感覚がないせいか可笑しくなり乗り物酔いのように気分が悪くなって来た
「王様まだ着かないんですか……気分が悪い……」
「大丈夫か!! 直ぐ神力を注ごう」
「神力?」
王様がそう言った途端体がふわりと温かいものに満たされると気分がすっきりする。
「凄い! 流石神様」
「/// これ位なんでもない何時でも言ってくれ」
照れる様はまじ可愛いく感じるが如何せん面倒な立場な上に美形……せめて地味な顔なら横に居ても良いんだけっど、王様の横では自分が惨めになるだけだ。
しかし幾ら進んで行っても真っ暗闇で何処に私の世界に繋がっているのか不安になる。
「まさか迷子になったとか?」
「心配いらぬ、天帝の気が此方の世界とミユキの世界を繋いでいるので迷う事は無い。恐らく天帝の存在が大きすぎるので異世界に拒絶されるので魂の一部を切り離しミユキの世界に渡ったのだろう」
魂を切り離すなんて何て器用な人…じゃなく神様か…それじゃあ私が会った金髪美少年は幽霊??
その割には存在感があった。
「後どれ位で着きます」
「そんなに離れた世界では無いのでもう直ぐだ」
つまりご近所さん
「やっぱり他にも色々な異世界に繋がってるの?」
「余も良く分からぬが無数な世界があるとされておる。だから一旦異世界に落ちれば自分の世界を捜すのは容易ではない…余とて天帝の軌跡が無ければミユキの世界がどこかすら分からなかっただろう」
どうやら金髪美少年のお陰でギリギリ戻れたようだけど一体私の世界に何しに来たのか、もし会えたらとっちめてやらねば。
しかし向こうに着いたらどうやって王様を追い返すが一番の問題
本当に呪いが解けたように私を好きでなくなれば話は楽なんだけど
だからと言って此のまま王様と別れるのチョッと残念…だって、これから私がこれ程の美形に迫られるなんて絶対にないと断言出来る。
まぁー 初体験の相手が王様なのは幸運だったがある意味不幸だったのか
何しろ最初がこんなゴージャスな相手では次に付き合う男が例え有名俳優でも色あせてしまうんじゃないだろうか? 向こうの世界で目が肥え過ぎてしまったが、自分の容姿がそのままなのが悲しい所
私では並みな相手しか望めないのだから
なんだか相手をより好みをして結婚出来るのか不安になった来る…どうしよう…
そんな私の不安をよそに能天気な王様は嬉しそうに話し掛けて来た。
「やはり向こうの世界に行ったらミユキの御両親に挨拶した方がいいのだろうか」
「!… いいえ、王様が両親に会いに行ったら腰が抜けて大変だから止めて。それより先ず私の世界に行って愛を確かめてから考えましょう」
「そうだな~」
如何しよう王様は私と結婚する気満々
騙しているので良心が咎める
否…王様は私をレイプした酷い奴
気を病む事なんてチッともない!
「漸く着いたようだ」
王様がそう言うが目の前は真っ暗闇で何も無いので小首を傾げ聞く
「何処にあるの?」
「狭間を裂かねば分からないのだが、見てるがよい」
得意げにそう言うと左手を前に突き出すとそこにポッカリと穴が開いたかと思うと懐かしい天井が見えて来る。天井には見なれた人の顔のような染みが浮かんでいる(これのお陰で格安で借りれた)ので間違いなく私の部屋!
嬉しさのあまり王様の首に抱きつく
「きゃぁ~~ 有難う王様!! 」
「 /// ミユキ~~!」
そしてそのまま穴に入ると私の部屋に出た途端穴がふさがり辺りを見渡すと部屋の様子は変わっていないが窓から射す赤い光で夕方だと伺える。
「ここがミユキの世界?」
王様は部屋を物珍しそうに眺めているがあまり変化かないようで呪いは解けていないよう…本当に呪いだった良かったのに困った。
「王様そちらに座って下さい。今お茶を淹れますね」
部屋は6畳にベットとタンスにテーブルが置いてありかなり手狭でソファーなんか無いのでベッドに腰掛けて貰う。
私の感覚で異世界トリップしていたのは十日間なので水道ガス電気は止められていないはず。王様にはベッドの上に腰掛けるが狭い部屋の格安家具に囲まれているのは可なり場違いで私の部屋がより一層みすぼらしく見えるのは気のせいだろうか……
今着ている衣装はかさばり狭い部屋では動けないので内掛けを脱いでハンガーに掛け、一層の事普段着に着替えたいが1Kの部屋では諦めるしかなく、打ち掛けを脱いでも尚かさ張る衣装で狭いキッチンに入りお茶を淹れるべく薬缶に水を入れてコンロに掛けると何故かホッとしてしまう。
ガスコンロの火を見ながら帰って来たんだと実感する
一人暮らしも間もないので湯のみとマグカップも1つずつしか無いので仕方なくそれに緑茶を淹れる。王様には失礼かもしれないが無いものは無い
お茶を持って部屋に行くと王様はキョロキョロ部屋を見渡しながら大人しく座っており、王様だけが異様にキラキラしている。
もしかして王様はここを物置だと勘違いをしているかもしれない。
なにせルインさんの屋敷のトイレ程しか無いんだから絶対してるな……風呂場はもっと広かったから
「お茶をどうぞ、狭い部屋ですが寛いでくださいね」
「 !!…… 否、中々良い部屋だ!」
明らかに動揺している…チョッと面白いかも
しかし今は何時なんだろう??
携帯を机の上に置いといたはずなのに見当たらず、飲みさしのビール缶やお弁当の空も無いので恐らく家族が行方不明でアパートに来たのかもしれない。
アパートがまだ引き上げられていないだけマシだったろうか
もしかして捜索願いが出されてたりしてたら笑えない…早く公衆電話で連絡しないと
取敢えずテレビを点けてみると時刻は6時3分でニュースをしているけど日にちまでは分からない、確かトリップしたのは6月7日の火曜日8時過ぎだったから私の計算上では6月17日辺りのはずなのに暑い! まるで真夏のような暑さに冷房のスイッチを思わず入れると王様がテレビに張り付くように見ている。
「ミユキ!! この箱はどうなっておる?? 小さな人が入って話をしておるーーー」
思った通りの反応……お約束すぎて笑えもしない
「これはテレビと言うもので電波を飛ばして映像を伝えるものなッですが詳しい事は私にも分かりません」
「テレビか……神力も使わず絵を箱に映し出すとは摩訶不思議」
いえいえ私達には王様の方が摩訶不思議な存在なんだけど
「このリモコンで操作すると色んな絵が見れますよ」
子供に玩具を与えるようにリモコンを渡すと目を輝かせボタンを操作して夢中だ……まるで未開の地の子供
私はその間に如何しようか考えるが答えが見つからない
王様が本気になれば私なんかどうにでも出来る力があるのに、そうしないのは王様の優しさなのだろう
だけでやっぱり私はこの世界で暮らしたい
此処は矢張り誠心誠意謝って王様一人で帰って貰うしかないだろう。誤魔化しなんて効かない
私は正座をして王様に向き直る。
「王様…お話をしましょう」
私は神妙な顔をして綺麗な王様の顔を見詰める。クッ~~ 何て男のくせに綺麗なんだ!!
……否、今は女だったけ?
「良いぞ、お互いを知る為にも思う存分話し合おう」
王様は美しく微笑み意気揚々と応じて来る。
「私の世界に来た訳ですが、やはり王様の気持ちは変わりませんか」
「勿論だ!余にはミユキしかいない!! 呪いだとしても余の愛は変わらなかった。どうか伴侶になって欲しい」
真直ぐな目でそう言われるとたじろいでしまい息をするのも忘れ固まってしまうが次の瞬間顔が噴火したようにドッカーンと顔に血が昇り真っ赤になってしまう
愛の告白に免疫のない私に十分な破壊力
これが一会社員で平凡男子なら一発でOKで即結婚だ!!!… なのだが如何せん相手ま王様で超美形の上に神様なんて全てが規格外
こんな優良物件過ぎてハッキリって恐い!!
私は王様の熱い視線を死力を振り絞り外して、土下座をして言う。
「ゴメンなさい王様、呪いなんて嘘です……元の世界に戻りたっくって嘘を言いました、私は平凡な普通の女なんです! だから王妃なんてガラじゃないし、なりたくありません。どうか王様一人で戻って下さい」
私は額をカーペットに擦りつけて謝り王様がどんな顔をしているかは分からない
暫らく沈黙が続き王様が漸く口を開く
「ミユキは余が嫌いか……」
悲壮感漂う声
好きか嫌い以前に会ったばかりの初対面でレイプされたのだ
「ハッキリ言って嫌いです。初対面で無理やり犯されて好きになんてなれるはずがないでしょ」
土下座したまま答えると王様は再び黙り込んでしまい重苦しい沈黙が続く中でテレビのニュースの音だけが聞こえる。
こう言う修羅場の経験の無い私はジッとしてるしかないが、いい加減テレビが天気予報になると痺れを切らして顔を上げるとそこには薄暗い中テレビの光に照らし出され滝のように涙を流す王様が声も出さず泣いていた。
美しいだけに恐すぎ!!
「王様……」
声を掛けても気が付かないように無表情に涙を流し続けまるで壊れた人形のようだ
しかし此処で情を掛けてはいけない
最後まで面倒を見れないのに捨て犬を拾うようなもの
心を鬼にして私も座っているしかなく一種我慢大会だが王様も微動だにしないまま一時間が経過すると辺りは真っ暗でしょうが無いので立ち上がり電気を点けるが王様は一向に動かないが涙は止まっており、焦点の合わない目と無表情さがマネキンのよう
少し…否…かなり可笑しい!!??
「王様どうしたんですか!?」
王様の体に手を掛けるとひんやりと冷たくまるで氷のようなので驚いて王様を揺すってみる
「何か反応して王様! お願いだから返事をしてよ」
必死に呼びかけて体を揺するが微動だにもせずまるで石像
石像?!
王様の指先を見ると白魚のような手が石化したように灰色になっており触ってみると本当に石になっている。
「嘘!!」
訳が分からず混乱して一心不乱に石になって行く手を擦るが徐々に石化が進行して行く
「嫌! 駄目だよ、石にならないで!! 目を覚まして王様」
私の所為!?
王様を振ったから!?
そんなのズルイ!
神様のくせに一度の失恋で石化は無いんじゃないの!!
「王様駄目! こんな事で死んじゃ世の中の半分は自殺しなきゃならないじゃない!」
「お願い止めて! こんなの嫌だよ……王様の伴侶になるから止めて」
怒鳴ったり宥めたりするが王様には一向に届かない
そして肘まで石化してしまい、もしかしたら足もなっているのかも知れないと思うとゾーッとする。
「どっどうしよう……どうすればいいの!?」
パニック寸前でオロオロしているとアパートのドアの鍵が開けられる音がする。
ガッチャ カチャ カチャン
驚いてドアを見詰めるとドアが開き誰かが入って来る。
「っだっ誰!」
ドアから入って来た女を見て驚く
何故ならそこには自分が立っていた!!??
「ただいま~深雪…なんだかおもしろい状況だね」
私が私を見てニッコリと笑ている。
この異常な状況を平然と受け止めしかも面白いと言う私
違うこの女は私じゃ無い
この女は誰
…………!!
そうだ、こいつはあの金髪美少年だ!!
神様なんだから私に化けるなんて簡単だろう
「あんた天帝でしょう!! 正体を現しなさいよ!」
「あれれ~ 直ぐ分かっちゃうなんて結構鋭いんだね~」
私の顔でバカにしたように見られると尚更ムカついて来るが怒っている場合では無く王様をどうにかしなければ成らない!
「そんな事より王様が変なの! 体が石になっていちゃうんだけど どうにかして!!」
私に化けた天帝はヒールを脱いで上がって来るとスタスタと私達の側に来る。
良く見ると私はブランド品のスーツでバッチリ決めており以前の私より女子力が上がっている??
あんなスーツ私持ってたっけ???
天帝の私は王様を見るとニヤリと笑う
「可哀想に神族は神力が高い者程純粋なんだよ。だから考えられない程弱い心の部分を持っているから酷くその部分を傷付けられると簡単に壊れてしまう。壊れ方も人それぞれだけどチョングゥイは自虐的だね……自分を壊しちゃうなんて」
「どうゆう事!?」
「我々神族には神核と言う力と命の源の珠が体内にあるんだけど、それを自らの力で打ち消して相殺しながら壊しているんだよ」
「全部壊しちゃったらどうなるの……」
「そんなの分かってるでしょ」
「石になって死んじゃうの……」
「ご名答!!」
楽しそうに正解を言う私じゃない私
一瞬殺意が湧くけど、こいつしか王様を止めれない
「お願い、王様を助けて! 石化を止めさせてよ!!」
「え~~~ でもこの原因は深雪でしょ? 何で私がしなきゃなんないの」
私の声が不満そうに耳に響く
「元を言えばあんたが私を異世界に落したからじゃない! 責任とってよ」
「私じゃ無理~ チョングゥイが望むものを示さない限り止められない。いいじゃない好きでも無い男なんかほっておけば~~ 助けたとして深雪はチョングゥイの伴侶になる覚悟はあるのかな」
「何で知ってるの!?」
「一応、私は最高神だから全てお見通し・な・の」
ウインクしながふざけた口調……本当に神様なの、性格悪すぎ
自分の姿だから尚更最悪な気分
王様の伴侶以前に私は王様が好きなんだろうか
だけど王様は私なんかに振られたくらいで石化してしまう程私を愛してくれている
こんな胸の無い平凡な顔の私なんか何処がいいんだろう?
本当にバカだよ…王様
こんなに想われて絆されない女はいない
素直に認めるしかない
私は王様に惚れちゃってる!
多分最初に抱かれた後には既に堕ちていた…
だけど自分にちっと自信の無い私は逃げるしか無い
何れ私なんか捨てられるのは目に見えておりその後の惨めに人生を送るなんて嫌だった
結局平凡で安穏な人生を送りたいなんて楽な生き方を選んでいたにすぎない
分かったよ王様ー私も逃げる自分を捨ててやる!!
王様に捨てられたら目の前で首を突いて死んでやるから覚悟しなさいよ。
先ずは深呼吸をして呼吸を溜めてから大声で怒鳴る。
「チョンマゲの大馬鹿野郎!!!!」
ビッシ! バシ!
それから往復ビンたんを食らわすと此方の掌も結構痛い
王様をチョンマゲと呼んだのは最初に呼んだ時凄く喜んでいたからで他意は無い
「たった一度ぐらい振られたぐらいでいじけるなんてそれでも男なの! そんなんじゃ私が他の男と結婚しても知らないわよ!!」
すると王様がピクリと反応した。
「私が好きなら何度でも好きっていってよ。私の事を愛していないなら言わなくてもいい…でも死なないで生きていて…」
自分でも段々感情が高まり涙が出て来る。
涙を流しなが王様の石になった手を取り頬ずりをする。
「チョンマゲの所為で泣いてるんだよ…どうしてくれるのよ人を惚れさせておいて何処行く気よ…… うっうう うぇーーん えーんん うううっうぇーー 」
私の涙が王様の石になった手に染みて行くように消えて行きピシピシと音がし始めたかと思うと石になった王様の手が動き始め私の両頬を包んで上を向かせると王様の目に光が灯っていた
「チョンマゲ……?」
「ミユキ… 好き… 愛し…てる。 何処へも行くな 余の側に居てくれ……
こわばった口をゆっくり動かし真摯に告げてくれる王様
もちろん返事は決まっている。
「うん チョンマゲのお嫁さんにして」
ピィッシーー
涙一杯の目で微笑みながら、そう返事した途端何故か王様は再び固まってしまったのだった。